映画の海

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②金の羊毛

映画『さよならくちびる』ネタバレなしの感想。女性ギター・デュオ「ハルレオ」が解散ツアーをする

投稿日:11月 7, 2019 更新日:

■評価:★★★★☆4

「1+1が4にも5にもなる仲間の存在」

【映画】さよならくちびるのネタバレなしのレビュー、批評、評価

仲間と何かを成す、というのは思いのほか難しい。
仲間とはいえ所詮は他人。決して思い通りには動かない。

「弱いやつほど仲間のありがたみを語る」

こんなセリフがドラマ版『宮本から君へ』に出てきて大いに共感してしまった。

私もまさに仲間のありがたみを強く語っていた時期がある。
私以外にもこのセリフに耳が痛くなった人は少なくないはず。
つまり、自立心の大切さを伝えている。

仲間のありがたみを語るというのは、人への依存を正当化する意味が暗に込められている。
自立心があるかないかで、引き出せるポテンシャルに雲泥の差が生まれるもの。
きっと、原作者の新井英樹はどこかでこういった現実を突きつけられたときがあったのだろう。

『さよならくちびる』のハルレオは女性ギター・デュオ。
ライブでのハルレオは、1+1が4にも5にもなる絶妙な空気感を醸す素晴らしいコンビだ。
だが、この映画は解散ツアーを描いた物語。

共依存によるぶつかり合いか、音楽性の違いか、あるいは別の何かか。
解散の理由が語られることなく、物語は淡々と進む。

インディーズで人気を誇る女性ギター・デュオ「ハルレオ」は解散することとなった。レオとハルはローディー兼マネージャーのシマを伴って、全国七か所を巡る解散ツアーに出発する。メンバー内恋愛はご法度というルールだが、レオはシマに、シマはハルに、そしてハルはレオにそれぞれ密かな想いを寄せていた。

結論からいうとこの映画、すごく良かった。
大して深いことを語っているわけではないし、展開もシンプル。
理由として世界観やキャラクターの魅力が突出しており、映画の幕閉じが近づくにつれて終わってほしくない気持ちでいっぱいとなった。

「二人とも本当に解散の決心は変わらないんだな?」

ローディーであるシマのこんなセリフから幕が開ける。

シマの運転するジープで全国七都市を巡る解散ツアーが始まり、道中で二人の結成の経緯等が語られていく。
車内の助手席と後部座席にそれぞれ座るハルとレオは、お互い目すら合わせないような険悪な空気を醸している。

このスタートもなかなかの斬新さがある。
何の説明もないまま唐突に始まるのだから面白い。

余計なセリフが一切ないのもすごくいい。
自然で、まるで彼女らが日本のどこかに生きているような、そんな気さえさせてくれる。

解散するとはいえ、二人は長くやってきたのだろう。
険悪でありながらも、随所に阿吽の呼吸を見せちゃうあたりが微笑ましい。

やっぱりこの映画は、ストーリーよりもキャラクターの魅力を語りたくなってしまう。
男好きで自由奔放でありながらも、どこか陰を感じさせるレオ。
つんつんしていてハルとは一切口を聞かない。

ハルレオの楽曲制作を行うマジメ担当のハルもまた、レオには冷たい態度を取っているが、どこか解散に寂しい思いを抱いているオーラが漂っている。
彼女は性的マイノリティで、レオに思いを寄せる一面を持つ。

しかしレオが好きなのはローディーのシマ。
このシマという男の立ち位置が絶妙すぎる。
どんなときも決して前に出すぎることなく、あくまで彼女らのサポートに徹する。

それが顕著に現れるのがライブシーン。
ハルとレオはデュオとしてアコースティックギターを弾いて歌うのだが、シマは後ろの隅っこで密やかにタンバリンをジャラジャラ鳴らしてリズムを取る。
これがあまりに絶妙で、彼を一気に好きになってしまう。

シマは元ホストで、このように人を立てられる精神性からもモテ男の雰囲気が伝わってきて良い。
ただ目立とうとすることなんて、誰でもできる。
目立ちたい欲を抑え、一歩引く役回りのできる人間って異性に限らずモテる。

そんなにシマはハルに思いを寄せている。
解散ツアーは三角関係の爆弾を抱えた旅にもなっている。

音楽映画で欠かせない楽曲の良さも申し分ない。
あいみょんや秦基博が手掛けている曲はメロディが良いし、ハルとレオがまた声を張りすぎずにしっとりと歌うので、やけに曲が染みるのだ。

サムネイルもしっとり

彼女らは本心を言葉にしない分、特にハルの内面が歌詞やライブのMCでおぼろげに描かれる。
印象的だったのはあるMCで語ったホームレスの話。
何だかすごく共感してしまったし、おそらくハルは自分にない超然さを持つレオに憧れを抱いている。

仲の悪い二人だけど、髪型は似てるし、地味にタバコ一緒だし。たまに歩くリズムも重なる。
こういったささやかなシンクロに観客は心を掴まれてしまう。
全国ツアー最終地点の北海道・函館に近づくにつれて、解散しないで欲しい気持ちがどんどん膨らんでいく。

物語とは関係ないんだが、服装が結構良かった。
ハルとレオはカジュアルな装いで色気がない感じがいい。

シマの服装もまたカッコ良い。
ドレス感の強い服をオーバーサイズや腕まくり等でいい感じに崩している着こなし感がおしゃれ。
私は男だがこの映画、ひたすら成田凌ばかりを追ってしまった。(ゲイではない)
監督の塩田明彦の感性に惹かれるし、ってかこの監督すごくモテそう。

終わり方も最高に良かったし、人生の節目にリピートしたくなる一本。
仲間と何かを成すって難しい。
でもこういう映画を観ると無性に仲間と何かしたくなる。

さよならくちびるの作品情報

■監督:塩田明彦
■出演者:小松菜奈 門脇麦 成田凌
■Wikipedia:さよならくちびる

さよならくちびるを見れる配信サイト

U-NEXT:○(有料)
Hulu:-
Amazonプライムビデオ:○(有料)
TSUTAYA TV:○(有料)
Netflix:-
※2019年11月現在

さよならくちびると関連性の高いおすすめ映画

さよならくちびるの裏ジャンルである【金の羊毛】に分類される映画。

『グリーンブック』★★★★☆4
1962年のアメリカ。ジム・クロウ法まっただ中で、イタリア系アメリカ人のトニーもどこか黒人を嫌悪していた。彼はニューヨークでナイトクラブの用心棒として働いていたが、ある日、職場が改装工事のため2カ月間閉鎖することとなる。その空いた期間を埋めるための仕事を探しているとアフリカ系アメリカ人のクラシック系ピアニスト、ドン・シャーリーの運転手の仕事を知り合いから紹介される。8週間の全米ツアーの運転手として彼を雇いたがるドンに対して、家族を愛するトニーはクリスマス・イブまでに自宅に帰ることを条件に仕事を引き受ける。

黒人と白人の友情を描く。
この映画も『さよならくちびる』と同様、旅の道中で訪れる二人の変化を描く物語。
ロードムービーについつい求めてしまうハートフルな要素がてんこ盛りで、観終わったあとは幸せな気持ちになる一本。
悲劇も悪くないけど、やっぱり鑑賞後感の良い映画は愛着が湧いてしまうし、リピートしたくなるもの。

U-NEXT:○(有料)
Hulu:-
Amazonプライムビデオ:○(吹替・有料)○(字幕・有料)
TSUTAYA TV:○(有料)
Netflix:-
※2019年11月現在

-②金の羊毛

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名前:柴田
年齢:30代
小説家志望。
趣味は映画、読書、ゲーム(最近はスプラトゥーン2)、お笑い、筋トレなど。
長所は人を楽しませることに一生懸命、短所は顔が丸い。