映画の海

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⑩スーパーヒーロー

映画『バイス』ネタバレなしの感想。アメリカ史上最強の副大統領と評されたディック・チェイニーを描く伝記

投稿日:11月 10, 2019 更新日:

■評価:★★★☆☆3.5

「チェイニーがここまで権力を求める理由とは何か」

【映画】バイスのネタバレなしのレビュー、批評、評価

イラク戦争を引き起こし、結果的に全米最低の支持率を叩き出したジョージ・W・ブッシュ大統領。
ブッシュ=悪名高い最低大統領といった印象があるが、『バイス』ではその裏を描く内容となっている。

ジョージ・W・ブッシュ政権下で副大統領を務めたディック・チェイニーの伝記的な内容である本作。「アメリカ史上最強で最凶の副大統領」と呼ばれる彼は一体何を行ったのか。

1960年代、酒癖の悪く、大学も中退してしまったダメ男ディック・チェイニーは後に妻となる恋人・リンに尻を叩かれて政界への道を志す。議会のインターンで出会った、型破りやスピーチを見せるドナルド・ラムズフェルドを師と仰ぎ、彼の補佐として共和党で働くように。彼の元で政治と表と裏を学び、次第に魔力的な権力の虜となっていく。

本作の見所といったら、チェイニーの劇的な変化っぷりが挙げられる。
序盤で見せるチェイニーの生活はみすぼらしく、典型的なダメ男。
酒浸りで名門イエール大学を中退したり、飲酒運転で逮捕されたり、仕事は死と隣り合わせな電気技師。

底辺生活まっしぐらな彼が後に「アメリカ史上最強で最凶の副大統領」と呼ばれるということがにわかに信じがたい。

その鍵となるのが後の奥さんとなるリンの存在。
野心剥き出しの彼女だが、60年代という時代は女性が成り上がることが難しい。
そんな彼女自身の成功欲求を満たすため、チェイニーに葉っぱをかけて、彼を政界への道に押しやる。
中盤辺りで病気で倒れた彼の代わりに、大統領選の演説を行うあたりは特に彼女のバイタリティーの強さを感じさせる。

おそらくだが、彼女だけが彼の能力を見出していたのではないだろうか。

チェイニーは無能だが、一つだけ能力を持っていた。
それが口の上手さ。

人たらしである彼は、ラムズフェルドを取り込み、彼を足掛かりに出世していくこととなる。
最終的にはブッシュ政権の副大統領にまでのし上がるのだから大したものだ。

物語はここからが面白い。
ブッシュ、つまり大統領を取り込んだ彼は「一元的執政府理論」に目を付ける。

一元的執政府理論は、三権分立を無視して議会の承認などを得ずに大統領が行政判断できるということ。
もはや民主主義を超越した権限を手にしたようなもので、チェイニーはブッシュに代わって権力を好き放題振るうようになる。
イラク戦争を引き起こしたり、拷問を合法的に行ったりとヒューマニズムを疑うような言動を繰り返し、結果的に「史上最強の副大統領」と評される。

相対的にいかにブッシュがいかにアホであったかも伝わってくる。
こんなアメリカ史が存在したとはビックリだ。

この映画はコメディ調ではあるのだが、そこまでコミカルに描かれているわけではないので、思った以上にマジメな映画といった印象。
私はアメリカ史に明るくなかったため、ついていくのがやっとだったが、とにかくチェイニーというキャラクターが魅力的。
思わず彼の次に取る言動が気になって画面に釘付けとなった。

いくつか気になった点もあったのだが、1つはチェイニーのモチベーション。
こんな感じでこの彼は権力に魅了され、好き放題権力を振るうキャラクターだが、なぜなのか。

奥さんの野心に答えるためのようにも見えるが、それだけのためにここまで冷徹な決断を下すことができるのか。
核心的なところが描かれていないので、もっと深掘って欲しかったところ。

あとはやっぱり、コメディ演出を強めて欲しい。
思っていたよりも情報量が多くて堅苦しく感じてしまうので、もう少しポップな演出をしてくれた方が観客としては観やすい。

それでも内容は興味深いので、この映画を観るとアメリカ史に関心が沸いてしまう。
またこういった魅力的なキャラクターに焦点を当てて、アメリカ史を描く映画を作ってほしいし、こういう形でいろんな国の歴史映画を制作してもらいたい。

最後の方でオバマが大統領になった映像が流れるのだが、納得してしまった。
ブッシュ政権時はあまりに攻撃的すぎて国民の心も消耗していたのではないか。
たがら初の黒人大統領に新しい風を吹かせてもらうことを期待したのだろう。
残念ながらオバマとなったことで目立った変化が得られなかったのか、再びトランプというアクの強い大統領が選出されてしまったが。

しかし口の上手さでここまで権力を握れるほどにのし上がってしまうあたりは、コミュケーション力の影響力を痛感させられる。
あのヒトラーも演説が上手さから、民衆を上手く扇動して権力を得たというし、北九州監禁殺人事件の主犯・松永も話術が素晴らしく、利用できる人間を次々と掌握していった。
コミュ力恐るべし。

バイスの作品情報

■監督:アダム・マッケイ
■出演者:クリスチャン・ベール エイミー・アダムス
■Wikipedia:バイス
■映画批評サイト「rotten tomatoes」によるスコア
TOMATOMETER(批評家):66%
AUDIENCE SCORE(観客):59%

バイスを見れる配信サイト

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※2019年11月現在

バイスと関連性の高いおすすめ映画

バイスの裏ジャンルである【スーパーヒーロー】に分類される映画。

『帰ってきたヒトラー』★★★☆☆3.5
1945年、ソ連軍のベルリン侵攻により、窮地に追い詰められたヒトラーは天に召された。だが、ヒトラーはなぜかベルリンの空き地で目を覚ました。人々は自分を総統だと認識しておらず、キオスクの新聞を見ると現在が2011年であることに衝撃を受けて倒れてしまう。ヒトラーは2011年にタイムスリップしたのだ。キオスクの主人はすっかりヒトラーを「モノマネしているコメディアン」だと思ってしまい……。

現代によみがえったヒトラーを描くコメディ映画。
世間は彼をコメディアンだと思って笑うのだが、一人の老人は一切笑わない代わりに一言言い放つ。
「当時もみんな、最初は笑ってた。だまされないよ」

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名前:柴田
年齢:30代
小説家志望。
趣味は映画、読書、ゲーム(最近はスプラトゥーン2)、お笑い、筋トレなど。
長所は人を楽しませることに一生懸命、短所は顔が丸い。