映画の海

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ドキュメンタリー

映画『i-新聞記者ドキュメント-』ネタバレなしの感想。さまざまな圧力にも屈しない東京新聞社会部記者・望月衣塑子を追う

投稿日:11月 17, 2019 更新日:

■評価:★★★☆☆3.5

「記者=権力の監視し、時には空気を壊す者」

【映画】i-新聞記者ドキュメント-のネタバレなしのレビュー、批評、評価

本作は東京新聞社会部に所属する望月衣塑子記者を追ったドキュメンタリー映画となる。

通常の官房長官記者会見では記者の質問は1人が2~3問する程度だが、2017年6月8日で望月は加計学園問題と伊藤詩織事件に関して40分かけて23回質問したことで、注目を浴びるようになった。
彼女自身、事実確認せずに暴走してしまうようなところも見られるが、こういうアクティブな人間は面白いし、興味深い。

本作の監督を務めるのが森達也。
オウムサイドに立ち、当時オウム真理教の広報副部長であった荒木浩を追ったドキュメンタリー『A』やゴーストライター問題で渦中の人物となった佐村河内守を追った『FAKE』が代表作。

官邸に忖度する一部の報道メディア。そんな中で異端児扱いされ、さまざまな圧力にも屈せず、官邸記者会見で鋭い質問を投げかける東京新聞社会部記者・望月衣塑子を追う。

望月衣塑子(いそこ)記者のキャラクターがとにかく魅力的。
冒頭から、記者会見で菅官房長官に塩対応されたり、質問妨害に遭おうとも臆することなく、質問をぶつけ続ける。
パワフルなキャラクターでありながら、夫が作ってくれた弁当を頬張ったり、カフェでケーキにかぶりついたり、時には方向音痴のせいで迷子になったりと、可愛らしい一面も見せる。
政治を扱った内容の映画なだけに、こういう魅力的なキャラクター視点で展開してくれるので楽しく観ることができた。

更に序盤で、ご丁寧に目標提示してくれるのは嬉しい。
森監督は官邸に入って記者会見で彼女が質問する様子を撮影したい、といった願望を漏らす。

しかし記者クラブに属さないと官邸に入ることはできない。
そのためフリーランスの記者が官邸に入れることはまずない。官邸側だけでなく、既得権益を守るために記者側も記者会見オープン化を拒んでいる。
どうやら、こういった記者クラブという仕組みによる記者の取材制限は日本特有とのこと。
果たして森監督の目標は叶うのか。

本作では多くのテーマを扱っており、特に森友学園問題、加計学園問題、伊藤詩織準強姦事件辺りは予習しておいた方が内容は入って来やすい。
これから観る人のために簡単にこれらをまとめておく。

■森友学園問題:国有地である約10億円の価値のある土地が、ゴミが埋まっていて土が汚染されているという理由で1億3400万円で売却されていた問題。

幼稚園を運営していた学校法人森友学園が、「瑞穂の國記念小学院」という小学校を作ることになる。
2016年、森友学園が大阪府豊中市の国有地を買うことに。国有地=税金。

そのとき、森友学園園長の籠池が「ゴミが埋っていて土が汚染してるし、安部首相とも仲がいいから安くしてくれ」といった具合に財務省に圧力をかけ、大幅値下げさせた疑惑がある。

さらに籠池氏は、小学校を作るときの工事費を偽り、補助金目当てで詐欺をしていた疑惑もあり、逮捕される。

決裁文書改ざん問題もあり、森友学園の国有地売却の決定を担当したのは近畿財務局。
のちに近畿財務局職員の一人が自ら命を絶っている。

籠池は逮捕されるが、17年7月「除去しなければならないゴミはなかった」と説明している。

■加計学園問題:「安倍首相が友人の利益のために、権力を行使したのでは?」と疑われている問題。
50年間、どこの大学も認められなかった獣医学部の新設が、安倍首相の友人である加計孝太郎氏が理事を勤める「加計学園」はなぜか認められた。その時、京都産業大学も獣医学部の新設を希望していたが、落選し、加計学園が選ばれる。
50年間認められなかった理由は、獣医師会が顧客を独占するため、新設に反対していたとのこと。

■詩織さん事件:2015年4月3日、詩織さんが元TBSワシントン支局長の山口敬之氏と都内で会食する。その日の深夜に薬などを盛られてホテルで準強姦の被害を受け、訴えを起こす。警察が動き、山口氏がアメリカからの帰国直後に成田空港で逮捕されるはずが、なぜか直前に逮捕状が取り下げられる。
山口氏は安倍首相と親密な関係にあったとされており、官邸は身近な自分たちにとって都合のいい人間を守る傾向にあると言われている。

米軍の飛行場が辺野古に移設される問題も興味深い。
ここでは民間業者の仕様書には「沖縄産の黒石岩ズリ」とあるのに、なぜか赤土が使われていることに対する問題提起を行う。

赤土はなぜダメなのか?
と思って調べたのだが、どうやらサンゴ礁がダメになってしまうというとのこと。
赤土は粒子の細かい赤茶色の土で、海に入るとなかなか沈殿せずに水を濁らせてしまう。そのためサンゴが体内に共生している藻類による光合成ができなくなって栄養不足で死滅してしまう。

さらに辺野古移設反対のデモ隊がいるのだが、民間の警備会社が彼らの個人情報を洗ってリスト作っており、それを支持したのが政府だということも非難している。
これを問題にする意味が良く分からなかったので、ここは深掘ってほしかった。
デモ隊のリストを作った目的もわからないし、今のご時世個人情報なんて筒抜けだろうから、何が問題なのかも不明。

こんな感じで、多くの政治的テーマを望月衣塑子の視点で描いていく。
記者の視点のみしか描かれないのはちょっと物足りなさを覚える。
両方の視点から、各々の主張が映されるのが理想である。片方のみの視点だと不平等で、いくらでも印象操作できてしまうため。

しかし、望月衣塑子がただ質問しているだけなのに、菅官房長官の煙に巻くようなあの対応を繰り返す限り、現政権は誠実ではないという印象を持ってしまう。
質問妨害もなかなか気持ち悪い。
頭の悪さ剥き出しの行為なので辞めた方がいいと思うし、こういった誠実でない人間を信用しろというのも難しいものがある。
でもやっぱりどういった意図でこういう行動に出るのかは知りたいので、現政権の視点は欲しいところ。

最後は締まりが良くないのもちょっと残念。
ドキュメンタリーとはいえ、何かしらの変化・成長は見せて欲しい。
佐村河内守を追った『FAKE』では、ちゃんと彼は劇中で変化を見せ、面白い結末を見せてくれている。このシーンはかなり話題となっていたし、私も楽しく観ることができた。
このレベルを期待していたので、今作は物足りなさがある。

とはいえ、実に興味深い内容のテーマをたくさん扱っているのであっという間の二時間だった。
望月衣塑子の多面性を見せてくれたし、謎のアニメーションも遊び心があって良い。やっぱり森達也監督は面白い。

そういえば、森友学園で渦中の人物となった籠池夫妻のキャラクターもインパクトが凄かった。
彼らへの取材も敢行しているのだが、妻の方がやたら快活でビックリした。
緊張感のある内容が続いただけに、彼女のユニークな挙動に緩和が発生して笑いが飛び交ってた。ぜひとも映画を観て確認してもらいたい。

籠池泰典は「日本会議は朝日新聞は禁止」といった発言をしたのも興味深い。
私は政治には明るくないが、新聞やTV局によって思想の方向性があるらしい。

朝日新聞(テレビ朝日)、毎日新聞(TBS)は現政権批判寄り。
読売新聞(日本テレビ)、産経新聞(フジテレビ)は現政権寄り。

調べたら現状はこんな感じとのこと。
さらに日本会議の存在も気になってしまう。
日本会議は1997年に設立された保守団体を指し、現政権の多くが政治家が加盟している裏で日本を操っているなんて言われる組織だそう。

何だか闇の組織感があってワクワクしてしまった。
名前も保守感が強くて不気味である。
この組織については非常に興味深いので個人的に深掘って行きたいところ。

しかし、森友学園の「運動会の宣誓」の映像も流れていたがなかなか気持ち悪い。
この映画、やばいやつしか出てないなって思ってしまう。

望月記者についてもいくつか気になることがあり、彼女は激務でありながら身だしなみに気を使っている。
服は毎回違うし、化粧もしてる。たまにラメもちりばめたり。
ヴィトンのようなブランドバッグも持ってる。
人と接する仕事なので、出来る限り見た目を良くして懐に入りやすくするためだろう。
人は不潔な人より、キレイな人に対しての方が警戒心を解きやすい。
こういった戦略的なところも彼女の本気度が伺える。

でもSPECの当麻のように、常にガラガラ転がしているキャリーバッグにはビニール傘が刺さったりして、何だかみすぼらしさがあって笑える。
あの中は何が入ってるんだろう。
恐らくは資料などだろうが、ここにも踏み込んで欲しかった。すごく中身知りたい。

映画として微妙なところはあるが、見所も多いし、題材は興味深い。
政治に疎い人には特におすすめしたい。私も相当に楽しめた。

しかし、右とか左とか、敵や味方で別れてしまうのは違和感を覚える。
あらゆる価値観を許容することは難しいのか。
ばらばらになっている内は、日本は衰退の一途を辿るだけとしか思えない。

i-新聞記者ドキュメント-の作品情報

■監督:森達也
■出演者:望月衣塑子 森達也

i-新聞記者ドキュメント-を見れる配信サイト

U-NEXT:-
Hulu:-
Amazonプライムビデオ:-
TSUTAYA TV:-
Netflix:-
※2019年11月現在

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名前:柴田
年齢:30代
小説家志望。
趣味は映画、読書、ゲーム(最近はスプラトゥーン2)、お笑い、筋トレなど。
長所は人を楽しませることに一生懸命、短所は顔が丸い。