■評価:★★★☆☆3
「見た目に自信を持てない女性による成長譚」

【映画】アイ・フィール・プリティ! 人生最高のハプニングのネタバレなしのレビュー、批評、評価
本作は自分の容姿に自信を持てない女性が主人公。
テーマとなる「自信」「芯の無さ(アイデンティティの喪失)」を題材とする映画は多い。
例えばアカデミー賞受賞作品である『アメリカン・ビューティー』。
仕事のことで頭がいっぱいな妻や自分をバカにする娘を持つ男が家族に尽くし続けてきたが、ある日娘の同級生に一目惚れして何かが壊れ、欲望のままに生きるようになる姿を描く。
このブログで記事にもしている『ラブ・アゲイン』もそう。
ある日妻とレストランで食事をしていると、唐突に彼女から離婚を申し出られる。その後バーに通って嘆いていると、そこで知り合ったナンパ師に説教され、ナンパ指導もされて男としての自信をつけていく物語。
この2作品は中年の危機を描いている。
中年の危機については本作の本質からはブレてしまうので解説は控えるが、これらすべての作品を観れば自信やアイデンティティがいかに人生に大きな影響を与えているかを確認できる。
レネー・バレットはぽっちゃりした見た目に自信が持てない、卑屈な性格の女性。チャイナタウンの暗い地下室での仕事も不満を抱いており、華やかな化粧品会社ルクレア社に憧れを抱いていた。ある日、彼女はバイクエクササイズを受けている最中にトラブルで自転車から落ちて頭を強打してしまう。意識が回復した彼女は鏡を見ると、細くて魅力的な自分に変身していることに気づく。実際は見た目は変わっておらず、審美眼だけが大きく変わってしまった。無敵の自信を得た彼女は、以前から憧れていたルクレア社の受付担当に応募することに。
美人に変身したと思い込むレネーは、圧倒的な自信を獲得することで、さまざまな勘違いをしていく。
主にモテ女と勘違いした振る舞いを取り、周囲の人間はそんな彼女に振り回されて困惑する。
んが、太っちょの彼女が周りの目を気にすることなく、自信たっぷりに堂々と生きる姿を観つづけているとこちらまで洗脳されていき、ついには元気を貰えてしまう。
人間は振る舞い一つでここまで印象が変わるんだなあと感心してしまった。
確かに見た目のぽっちゃりさは変わっていない。
だが、見た目がどうであれ、自信があるかないかで、彼女が魅力的に見えてきてしまうのだから不思議である。
もちろん平均体重くらいには減量した方がいいとは思うが、内面の美しさというものを見事に描き出しているので、この映画はそれだけでも観る価値があると思う。
吹き替えもかなり良い。
レネーの声は渡辺直美が担当している。
映画の宣伝目的で当てられる芸能人の吹き替えは何かと問題視されている。
本業じゃないので、クオリティに難があるとのこと。
しかし本作はそのなかでも成功していると思う。
渡辺直美は周知の通りお笑い芸人だが、レネーと彼女の見た目がシンクロしているので親和性はばっちりである。
とくにクリーニング屋のエピソードは笑った。
実際に彼女がコントでやりそうなシチュエーションなので結構笑える。
詳細は控えるのでぜひぜひ実際に観てもらいたい。このシーンは何度もリピートして観たくなってしまう。
ただし、不満点も結構多い。
そもそもこのような【見た目が変わって自信を手にする】設定はそんなに斬新さはないので、「またかよ」って思ってしまう人は多そう。
類似作品を挙げるなら、中年男性がなぜか高校時代の自分に若返ったことで、人生をやり直そうとする『セブンティーン・アゲイン』。
レネーが男に対して下品な接し方をするのはちょっと気になる。
女性の恥じらいを描き抜けてしまうのはいかにも男脚本、といった感じ。
是非とも女性脚本でこういった設定で観てみたい。まるで別物になりそう。
あと鏡越しだけでいいので、細くて美人になった彼女の姿を見せて欲しかった。
トラブルのあと、彼女は鏡越しに自分の美しくなった姿を見て喜ぶのだが、特にCG加工されているわけでもないので、そのままの彼女が鏡に映っているので、説得力に欠ける。
勘違いとはいえ、変化後の姿を見せてくれた方が映画的でイメージしやすいし、彼女に対する感情移入も強くなる。
むしろ、金のかけられるハリウッド映画でなぜこの演出をしなかったのか不思議なくらい。
一番ひどかったのはラストシーン。
最後、彼女がスピーチをするんだけどあまりに説得力がない。
そもそもレニーの成長過程がぐちゃっとした感じで納得できるように描かれていないので、スピーチも響かない。まあ特別なことを言っているわけでもないのだが。
途中まで最高に面白かったのに、なぜこんなに詰めが甘くなってしまったのかがむしろ謎。
もっと脚本を練って欲しいところ。
いろいろ言ったが、見所の多い映画でもあるので、観て損することはない。
むしろ自分に自信を持てない人は積極的に観るべく佳作コメディ。
アイ・フィール・プリティ! 人生最高のハプニングの作品情報
■監督:アビー・コーン マーク・シルヴァースタイン
■出演者:エイミー・シューマー ミシェル・ウィリアムズ トム・ホッパー ローリー・スコーヴェル
■Wikipedia:アイ・フィール・プリティ! 人生最高のハプニング
■映画批評サイト「rotten tomatoes」によるスコア
TOMATOMETER(批評家):36%
AUDIENCE SCORE(観客):34%
アイ・フィール・プリティ! 人生最高のハプニングを見れる配信サイト
U-NEXT:○(見放題)
Hulu:-
Amazonプライムビデオ:○(吹替・見放題)、○(字幕・見放題)
TSUTAYA TV:○(有料)
Netflix:-
※2019年11月現在
アイ・フィール・プリティ! 人生最高のハプニングと関連性の高いおすすめ映画
アイ・フィール・プリティ! 人生最高のハプニングの裏ジャンルである【魔法のランプ】に分類される映画。

『セブンティーン・アゲイン』★★★★☆4
17歳のマイクはバスケットボール部のエース。スカウトが見にやってくる大会の直前で、恋人に「妊娠した」と告げられる。試合を投げ捨て、彼女と一緒になることを選択する。30代になったマイクは妻スカーレットに嫌われ、高校生の子供たちからも避けられる残念な日々を過ごしてた。ある日、過去の栄光に浸りたい思いで出身高校に向かうと白髪の老人と出会う。その日の夜、彼が川に落ちる姿を目撃すると、マイクもそのまま落ちてしまい、目が覚めると17歳の頃の自分に若返っていた。
誰もが一度は夢みるであろう、今の記憶を持ったまま過去にタイムスリップする設定。
厳密にはタイムスリップではなく、記憶はそのままで体だけが若返る主人公の物語となっている。
笑い演出も多いので、頭空っぽにして楽しめる良質なエンターテイメント映画。
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