■評価:★★★☆☆3.5
「初恋は美しい」

【映画】初恋のきた道のネタバレなしのレビュー、批評、評価
『HERO』『グレートウォール』のチャン・インモウ
ではなくチャン・イーモウ監督初期の名作。
同時にハリウッドでも活躍する中国人女優チャン・ツィイーのデビュー作となる。
私がこの映画を知ったのは、ウッチャンナンチャンのウッチャンがずいぶん昔にTVで勧めていたため。
私以外にもウッチャンをきっかけにこの映画を観た人は多いらしい。
観てみたら、映画監督を目指して映画の専門学校にまで通っていたくらいの映画好きであるウッチャンが勧めるだけあって、素晴らしい内容だった。
都会暮らしのユーシェンは父の訃報を聞き、母のいる農村へ帰郷した。父はこの村の小学校で40年以上、一人で教師として支えていたが、町へ出かけた際に、心臓病で天に召されてしまった。父の遺体をトラクターで運ぼうとする村長に対して、母は断固拒否し、伝統通り、葬列を組んで父を担いで村まで戻ると言い張っていた。そしてユーシェンは若かりし父と母の出会いを追想する。
映画はモノクロ映像から始まる。
てっきりレンタルしたDVDを間違えたのかと思ったが、メインとなる過去の回想に入るとカラーに変わる。
きっと母にとって最も美しい記憶が父と出会った時だからだろう。
あえて現代をモノクロで描くことで、過去の美しさを際立たせる素晴らしい演出。
そしてカラーで映し出されるのは、日本では見られないような小麦色に染まった秋の雄大な景色。あまりの美しさに思わず息を呑む。
これはブルーレイで観たかった。
と思って調べたらレンタルも販売もDVDのみしかないらしい。残念。
音楽も良かった。
広大な農村の美しさを引き出しているし、笛の音色が中国らしい雰囲気を醸す。
セリフも少なく、とにかく画で見せようとした意志が伝わってくる。
それでも画ヂカラがあるので結構観れてしまう。
景色はもちろん、若かりしチャン・ツィイーがとにかく可愛い。
彼女が先生のことを思うたびにニコニコするのだが、その表情一つで彼女の感情が伝わってくる。
何て美しい笑顔なんだろうか。
ただ可愛いだけではない、彼女の純朴さが伝わってくるのだ。
随所に彼女が先生を追いかけて走るシーンも、ちょっと普通とは思えない長さで映される。
走り方が微妙にダサいのが田舎娘感があって笑える。これはわざとなのだろうか。
そして、恋する彼女の純粋な行動の数々には胸を締め付けられる。
先生の目を意識して赤い服から華やかなピンクの服に着替えたり、先生の授業する声を外で聞いてうっとりしたり。
何なんだろう。
大人になる過程で失ってしまったものを彼女が持っているような気がして、何だか切なくなる。
最後は謎に目頭が熱くなってしまった。
別にこの映画、大したことを描いているわけではないのに涙腺を刺激してくる。
他のレビューも観てみたがやっぱりラストに感動する人はいるみたいだ。
恐らくだが、誰もが過去に美しい思い出を持っていて、その部分で共感できてしまうのだろう。
これは決して今を否定しているのではない。
ただ、思い出の美しさを描いてるにすぎない。
叙情的で繊細な素晴らしい映画だ。
今の時代にこういう映画って生まれないんだろうなと思う。
雄大な景色を背景に、可憐で純朴な少女が一目惚れした男をひたすら追いかける。
これだけの話で90分持たせるのだからすごい。
初恋のきた道の作品情報
■監督:チャン・イーモウ
■出演者:チャン・ツィイー チョン・ハオ
■Wikipedia:初恋のきた道
■映画批評サイト「rotten tomatoes」によるスコア
TOMATOMETER(批評家):89%
AUDIENCE SCORE(観客):90%
初恋のきた道を見れる配信サイト
U-NEXT:○(見放題)
Hulu:-
Amazonプライムビデオ:○(字幕・有料)
TSUTAYA TV:○(有料)
Netflix:-
※2019年12月現在