映画の海

約1100本の映画を鑑賞した小説家志望の男が、ネタバレなしで映画のレビューや解説を書いてます。(直近で観たものに限る。たまにアニメ・ドラマ・小説も)面白いおすすめ映画を探している人向けのブログ。

②金の羊毛

映画『神と共に 第一章:罪と罰』ネタバレなしの感想。事故で命を落とした男があの世で7つの裁判を受け、生まれ変わりを目指す

投稿日:

■評価:★★★☆☆3.5

「あの世を舞台としたファンタジーアクション映画」

【映画】神と共に 第一章:罪と罰のネタバレなしのレビュー、批評、評価

本作はチュ・ホミンの同名ウェブコミックを原作とする映画となっている。
制作国の韓国PG12指定ながらも、なんと歴代3位の1400万人以上(シリーズ累計観客動員数は2700万人)を動員するという超絶大ヒットを記録している。
続編となる『神と共に 第二章:因と縁』と併せて同時制作されており、総製作費は日本円で42億円に上る。
実際に観てみると、CGのスケール感が凄まじく、ハリウッド映画と肩を並べられるほどにスペクタクルで豪奢な映像となっている。

この制作費は実はかなりの大金で、日本では映画の製作費は出せても最大10億と言われている。
映画評論家の町山智浩さんいわく、映画は制作費に対して約3倍の興行収入がないと黒字にならず、30億超えのヒット邦画は年に数本しかない。よって10億が上限となるそう。

日本の半分以下の人口しか持たない韓国が42億という金額をひねりだしたのはもはや狂気の沙汰としか思えないが、言うまでもなく世界映画として制作されている。
つまり韓国の邦画ではなく、世界をマーケットとして作られた映画である。
そのせいか、中身は韓国の社会派としてのテーマはなく、エンタメに特化されている。
結果的には続編と併せた興行収入は約200億となっていて大儲けである。

これだけお金のかかった映画ということもあって見応えのある映画だった。

消防士のキム・ジャホンはビルの火災現場で少女を救出する際、事故で命を落としてしまう。すると彼の元に、冥界の使者を名乗るヘウォンメクとドクチュンが現れる。冥界の法によると、すべての人間は死後49日間に裁判を7回受けなければならなず、殺人地獄・怠惰地獄・裏切り地獄・不義地獄・ウソ地獄・暴力地獄・天倫地獄という7つの地獄の裁判を通過できた者のみ、再び現世へ生まれ変わることができる。冥土の入口である初軍門には使者のリーダー・カンニムが待っていた。弁護士のカンニム、護衛のヘウォンメク、補助弁護士のドクチュン、そして亡者のジャホンの4人は7つの地獄に挑む。

世界観に心を掴まれてしまった。
死後の世界を舞台としており、7つの裁判を突破して生まれ変わりを目指すといったストーリー。
日本でも『大霊界』なんていう死後の話を描いた映画がある。

私は子供の頃に親と一緒にテレビで『大霊界』を観ていた記憶があり、本当にそこに映し出された映像が死後の世界だとしばらく信じていた。(アホ)

かなり強烈な印象を残った映画だったので、誰か死後の世界モチーフの映画をやればいいのに、というのはずっと思っていた。
死は誰しもが訪れるし、恐れているもの。
だから、このコンセプトは多くの人が関心を持つだろうと思っていた。

そんななかで韓国がやってくれたのは嬉しい。
案の定、韓国の総人口の半分が観るという、とてつもないヒットを叩き出している。

7種類の地獄はキリスト教における7つの大罪モチーフだろう。
「貪食」、「淫蕩」、「金銭欲(強欲)」、「悲嘆」、「怒り」、「怠惰」、「虚栄心(自惚れ)」、「傲慢」。
キリスト教ではこれらが人間を罪に導くものとされている。

さらに裁判を受けるリミットの49日間というは、日本でもなじみのある仏教的な意味合いを持つ。
仏教では人が亡くなると極楽浄土へ行けるかの裁判が行われ、最後の判決の日が49日となる。

このようにいくつかの宗教をモチーフとして作られており、特定の宗教名は出てこない。
この辺りがいかにも世界映画といった感じである。

この映画、最初の地獄裁判からスペクタクルな映像を見せてくれる。
ハリウッド映画に引けを取らない素晴らしい迫力で、今後訪れる地獄の造形に観客は期待してしまう。

裁判や次の地獄までの道中で、亡者・ジャホンの裏の顔(知られざる生前の言動)が明かされていく流れとなる。
サブストーリーもあるが、基本的にはこの展開が一貫しているのでちょっと飽きてしまう。
裁判ではなく、試練という形にしてさまざまなユニークな障害を与えた方が楽しかったと思う。

いくつもの試練を突破するタイプのシナリオですぐに浮かんだのが漫画『HUNTER×HUNTER』。
『HUNTER×HUNTER』では、主人公の少年ゴンが父の職業であるハンターになるため、ハンター試験を受けるところから始まる。
このハンター試験が非常に面白い。

そもそもハンターという職業は、数百万分の一の難関と言われるハンター試験を突破しなければならない。
ハンターライセンスを売れば7代にわたって遊んでくらせるというほどの代物。

どんな試験内容なのかって話になるのだが、そもそもハンター試験会場に行くまでが難しい。
毎年世界中から数百万人の参加者が集まるが、試験会場には数万分の一、数十万分の一しか到達できない。

一次試験は次の試験会場まで走らされる。
それだけだ。
拍子抜けだと思ってしまうのだが、試験官からはどれだけの距離・時間を走らされるのかは聞かされない。
そして試験官はすごい速さで走って行ってしまうので、彼についていかないといけない。
想像しただけでうんざりする。

二次試験は料理。
食材はすべて現地調達となり、そこがポイントとなる。
が、作者はちょっとしたユニークな仕掛けを施す。

三次試験は巨大な塔の屋上に連れていかれ、72時間以内にここから脱出するというもの。
この塔の中でもいろんな試練が存在し、中でも面白いのが死刑囚との闘いとなる。
しかも、この闘う相手がなかなかの曲者ぞろいで楽しませてくれる。

この先も続くのだが、そもそも試験はどれだけ行われるかも分からない。
試験官は毎回変わるので、試験官次第では一次試験で終わるときもあれば、合格者が出ない年もある。
試験官はあらゆる手段を駆使して、受験者のフィジカル・メンタルを追い込む。
果たしてゴンは試験に突破してハンターになれるのか? といった内容となる。

『HUNTER×HUNTER』のシナリオはちょっと意味の分からないほどに凄まじいレベルに到達しており、こういった試練物の傑作と比べると、この映画の裁判はかなり物足りなく感じる。
同じ漫画物なので、もう少しユニークな見せ方をしてほしかったところ。

地獄のとんでもない造形を見せてくれるわり、そこでやることは裁判のみなので本当に勿体ない。
せっかくだから、それぞれの地獄を生かした試練が見たかった。
殺人地獄だったら例えば殺し屋から3日間逃げ切るとか、裏切り地獄なら誰かに裏切られながらも与えられた試練を突破するとか、もっと面白くなるアイディアはいくらでもありそう。

死後49日間で裁判を突破しないといけない、というリミットも有効活用されていない。

あとスケールがでかすぎて、この世界のルールが把握しきれないところもある。
中盤以降でも新しい設定の説明がなされたりするので、いつになったらゆっくりと楽しませてくれるのか、といった感覚を覚える。

普通の映画だったら、30分くらいでだいたいのキャラや世界の説明をし、残りはそれらの設定を用いて楽しませていくような構成なので、ちょっとこの映画は長く感じてしまう。
実際に140分と長尺でもある。

気になる点はいくつかありつつも、世界観の素晴らしさは間違いないし、あなたが死後の世界モチーフに関心があれば普通に楽しめる。
メインとなるヒューマンドラマもしっかり描けているので満足度は結構高め。

二部作構成だが、本作でちゃんと完結させているところも好感が持てる。

神と共に 第一章:罪と罰の作品情報

■監督:キム・ヨンファ
■出演者:ハ・ジョンウ チャ・テヒョン チュ・ジフン キム・ヒャンギ
■Wikipedia:神と共に 第一章:罪と罰
■映画批評サイト「rotten tomatoes」によるスコア
TOMATOMETER(批評家):63%
AUDIENCE SCORE(観客):84%

神と共に 第一章:罪と罰を見れる配信サイト

U-NEXT:○(有料)
Hulu:-
Amazonプライムビデオ:○(吹替・有料)○(字幕・有料)
TSUTAYA TV:○(有料)
Netflix:-
※2019年12月現在

-②金の羊毛

執筆者:

名前:柴田
年齢:30代
小説家志望。
趣味は映画、読書、ゲーム(最近はスプラトゥーン2)、お笑い、筋トレなど。
長所は人を楽しませることに一生懸命、短所は顔が丸い。