映画の海

約1100本の映画を鑑賞した小説家志望の男が、ネタバレなしで映画のレビューや解説を書いてます。(直近で観たものに限る。たまにアニメ・ドラマ・小説も)面白いおすすめ映画を探している人向けのブログ。

⑤人生の節目

映画『サイダーハウス・ルール』ネタバレなしの感想。孤児院育ちの青年が外の世界にあこがれを抱く

投稿日:

■評価:★★★★☆4

「自分がいるべき場所を獲得するための代償と、キレイごとでは済まない現実を描く」

【映画】サイダーハウス・ルールのネタバレなしのレビュー、批評、評価

舞台は人里離れた孤児院となる。
何がいいって、主人公の青年ホーマーが生まれ育った孤児院がとても素晴らしい場所であるということ。

孤児院が舞台の物語は、たいがい居心地が悪さが次の行動の一手の動機となる。
例えば、少年ジャンプ漫画の『約束のネバーランド』では孤児院の子供たちが実は怪物の食肉として育てられており、それを知った主人公らは脱出を試みるというもの。

カズオイシグロの小説『わたしを離さないで』も、主人公らが生まれ育った施設の秘密を先生から聞かされ、主人公らの感情に変化が訪れる。

なので本作には旧作映画なのに新鮮さを覚えてしまって、割と導入から物語に入り込んでしまった。

1943年、メイン州ニューイングランドにある自然に囲まれた孤児院で青年ホーマーは生まれ育った。彼は父親のような存在のラーチ医師のもとで医術を学び、孤児院で望まない妊娠をしてしまった女性たちの出産や堕胎手術を手伝っていた。養子を望む夫婦に貰われている子どもたちがいる中、ホーマーはラーチ医師の期待や愛情を受けていたが、外の世界への好奇心を捨てきれずにいた。ある日、中絶のためにウォリー・ワージントン陸軍中尉とその恋人キャンディが孤児院を訪れる。ふと思い立ったホーマーは少尉に「車に乗せて連れてってほしい」と願いでる。少尉は快諾し、二人の車に乗ったホーマーは新しい旅に出ることに。

院長兼医師のラーチ先生は慈愛に満ちていて、ホーマーや他の孤児たちのことばかり考えている。
寝る前には本を読んでくれるし、たまに映画会も開いてくれる。
さらに先生は孤児院の跡継ぎとしてホーマーに期待しており、医術を教え込んでいる。

こんな暖かい場所なかなかない。
人里離れた自然豊かな場所にあるこの孤児院に、思わず私も暮らしたいと思ってしまった。
ぜひとも弧おじさんとして受け入れしてもらいたいところ。

先生の優しさから体全体からにじみ出ているのが良い。
先生に扮したマイケル・ケインが本作でアカデミー賞助演男優賞を受賞したのは納得である。

ホーマーは1つだけ不満があり、それがラース先生が施す堕胎手術だ。
1943年のアメリカでは堕胎手術が違法だが、先生は患者の未来のために堕胎手術を行う。
先生は堕胎手術をすることが女性を救うことに繋がると説くが、マジメなホーマーには理解できない。
ホーマーは曲がったことが許せない純粋無垢さな人間性の持ち主なのだ。

さらにホーマーは外の世界への好奇心も強く持っており、ある日、意を決して居心地のいいこの場所をあとにする。
その旅立った先であるリンゴ園「サイダーハウス」に辿り着き、住み込みで仕事をすることになる。
ここで出会った住民たちもまたいい人ばかりなのだ。

こんなに良い人ばかりなのに物語が成立するのがすごい。
悪人も出てこないわけではないが、本質的に悪いやつなんていない。

この映画の一番のポイントはサイダーハウスのルール。
サイダーハウスにはいくつかのルールが敷かれている。
しかし、壁に張り出された紙に書かれたルールの文字を、サイダーハウスに寝泊まりしている黒人労働者は読めない。
これは一体何を示しているのか。

サイダーハウス付近に住むキャンディに扮したシャーリーズ・セロンが異様な美さを放っているところも見所の一つ。
こんな田舎町にこんな洗練された娘はいないだろう。
と突っ込みたくなるが、そんなのは野暮だ。
彼女の存在がこの映画にとてつもない華やかさをもたらしている。

もちろん彼女だけではなく、孤児院や緑に囲まれたリンゴ園の景色も素晴らしい。
何もかもが美しくて、この映画は観ているだけで目の保養になる。
ぜひともブルーレイで鑑賞してもらいたいところ。

不満ってほどでもないのだが、サイダーハウスでホーマーにもっと大きな試練が訪れても良かった。
そんなときにキャンディが目の前に現れて……といった流れだと、この映画もっと劇的になっていただろう。
こう描くことにより、ホーマーはルールの意味と強制的に向き合うことになる。結果的に成長に繋がる。

私がこの映画を知ったきっかけは蛭子さんだ。
2001年から放送されていた虎ノ門というバラエティ番組で『蛭子能収のビデオでも見ましょうか』というコーナーが放送されていた。
年間100本は観る映画好きの蛭子さんが、視聴者に勧められた映画をレンタルして観て感想を言う、といった内容のコーナーで、そのときに「僕はサイダーハウス・ルールが好き」と発言していたのを覚えていた。

しかし、この番組では『パッチギ』などを手掛けた監督・井筒和幸も出演しており、「こちトラ自腹じゃ! 」というコーナーで新作映画を彼はバッサバサ斬っていた。
映画に造詣が深い彼の発言は強烈で、蛭子さんは完全に食われていた。

なので、蛭子さんのおすすめだから大したことないだろうって思って敬遠していたが、心から土下座したい。
とても素晴らしい物語だった。
まさかこんなに心の機微を見事に描いているとは思わなかった。

とにかくラストがたまらない。
ラストのあの面長の女の子の挙動を見ていると胸がポカポカする。
こんなの見せられたら涙なしで見る方が難しい。

世の中、キレイに物事が運ぶことの方が稀だ。理想通りに行くほど現実は甘くない。
もし悩んだり傷ついたりしたら、例えあまり褒められた方法ではなくても癒せたらそれでいいと私は思う。
誰かを傷つけなければ、ちょっとくらい道を外れたっていい。

この映画、自分の成長のために孤独を選択した経験のある人ほど刺さる内容となっている。

サイダーハウス・ルールの作品情報

■監督:ラッセ・ハルストレム
■出演者:トビー・マグワイア シャーリーズ・セロン マイケル・ケイン
■Wikipedia:サイダーハウス・ルール(ネタバレあり)
■映画批評サイト「rotten tomatoes」によるスコア
TOMATOMETER(批評家):71%
AUDIENCE SCORE(観客):77%

サイダーハウス・ルールを見れる配信サイト

U-NEXT:○(見放題)
Hulu:-
Amazonプライムビデオ:○(字幕・有料)
TSUTAYA TV:○(有料)
Netflix:-
※2019年12月現在

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名前:柴田
年齢:30代
小説家志望。
趣味は映画、読書、ゲーム(最近はスプラトゥーン2)、お笑い、筋トレなど。
長所は人を楽しませることに一生懸命、短所は顔が丸い。