映画の海

約1100本の映画を鑑賞した小説家志望の男が、ネタバレなしで映画のレビューや解説を書いてます。(直近で観たものに限る。たまにアニメ・ドラマ・小説も)面白いおすすめ映画を探している人向けのブログ。

⑨組織のなかで

映画『パラサイト 半地下の家族』ネタバレなしの感想。2019年、第72回カンヌ国際映画祭パルムドール受賞作品

投稿日:1月 1, 2020 更新日:

■評価:★★★★☆4

「格差」

【映画】パラサイト 半地下の家族のネタバレなしのレビュー、批評、評価

最近流行りの富裕層と貧困層との分断をテーマとする韓国映画。
ハリウッドでは、『アス』や『ジョーカー』、日本では『万引き家族』が同テーマを扱っている。

本作は世界三大国際映画祭の1つ、カンヌ国際映画祭で韓国初となる最高賞のパルムドールを受賞している。
その快挙の功労者となるポン・ジュノ監督は『殺人の追憶』や『グエムル-漢江の怪物-』ですでに国内外で評価されている人物であり、パルムドールなどの重要な賞を獲得するのは時間の問題であった。

過去、たびたび事業に失敗し、計画性もない無職で楽天的な父キム・ギテク。そんな甲斐性のない夫に強く当たる母チュンスク。大学受験に連続で失敗した息子のギウ。美大を目指すが予備校に通うお金のない娘ギジョン。しがない内職でかろうじて日々を食つなぐ彼らは“ 半地下住宅”で暮らしていた。半地下住宅は貧困の象徴であり、ひどく住みづらい。ある日、ギウはエリート大学生の友人に家庭教師の代打の仕事を紹介されて行った先は高台の大豪邸だった。その豪邸に住むパク一家に気に入られたギウは、適当なことを言って妹のギジョンも家庭教師として紹介する。さらにギジョンはある仕掛けをしていき……。

先行上映で観たのか、本番が始まる前に監督や役者たちから「ネタバレはしないでね」といったメッセージ動画から始まる。
こんな映像ははじめて観たので何だか期待を煽られてしまった。

結論から言ってしまうと、そのハードルも余裕で乗り越えてくる面白さ。
舞台が整った中盤以降は想定外の展開が連続してスクリーンにくぎづけになった。
132分という短いとは言えない上映時間だが、ストーリーもキャラクターも魅力的なのであっという間にエンドロールを迎えていた。

監督から「ネタバレはしないでね」ってお願いされちゃったので、とくに中盤以降の言及は避けたい。
私が第一に興味深いと思ったのが、家族が住む半地下住居の便所の位置。
天井に近い異様に高いところに設置されていて違和感がすごい。

どうやら排水の水圧の問題で、高い位置に設置しないと逆流してくるとのこと。
まさに貧困の象徴である。

さらに半地下住居なので窓が天井の方があり、人間の足元を眺めながら生活することになる。
なかなか屈辱的だ。

彼らの言動も引っ掛かる。
彼らは息を吸うかのごとく、ウソをつく。
子供だけではなく親も。
なかなかのサイコ感を覚えるんだが、精神は至って正常だ。
冷静に考えると仕方ないこと。

万引き家族でもそうだが、ウソをつかないと彼らは生活できない。
もし自分が貧困で飯も食えないといった状況で、金持ちしか出入りできない高級スーパーで毎日ステーキやらローストビーフやらが試食できることがわかったら、誰だって身分を偽ってでも侵入することを考えるだろう。

そして、彼らのような貧困家族は実は韓国では珍しくない。
先日アップした2019年、映画ランキングベスト20の記事でもさらっと書いたが、『韓国 行き過ぎた資本主義 「無限競争社会」の苦悩』にすべて書かれている。

財閥が幅を利かせている韓国では財閥系の一流企業に就職できないと、普通の生活を送るのは厳しい。
極端に一流企業が成長してしまった韓国では中小企業が壊滅状態で、中小企業に就職しても給料が安いうえに労働環境が劣悪。
たった31社しかない一流企業に就職するためにはいい大学に入らないといけない。

そのため受験競争が苛烈していており、学校で勉強して、夕方から塾で勉強して、家に帰っても予習復習したりととにかく勉強づけ。
さらに就職8大スペックという言葉があり、大企業に就職するには8つの能力を高めないといけない。
その内訳は以下の通り。

①出身大学
②大学の成績
③海外語学研修
④TOEICの成績
⑤大手企業が大学生を対象に開催する公募展
⑥資格
⑦インターン
⑧ボランティア活動

どうだろうか。
これらを埋めないと韓国人は普通の暮らしすらできない。
彼らの立場になって考えただけでうんざりしてしまう。

こんな状態なので韓国では就職活動中の就職準備生や公務員を目指す公試生の70%が自殺症候群にあるという。
出生率も一家族につき、0.98人と1人を切っており、これは世界一の低い数値だという。

当然、両親も子供の将来のため、金をかせぐのに必死だ。
精神が追い詰められているのは子供だけではない。

関心を持ったら『韓国 行き過ぎた資本主義 「無限競争社会」の苦悩』を読むといい。
韓国の社会情勢への理解が深まるし、何なら上記はさわり程度である。

元KARAのク・ハラが命を絶ったニュースが去年、世間をにぎわせていたが、原因はSNSの誹謗中傷によるという。
SNSは確かに問題だが、本質的な原因は社会背景にあるとしか思えない。
彼女をバッシングした多くの人間も韓国社会の被害者で、多大なストレスを抱えている。
そんな中で芸能人のような華やかな仕事をしている彼女に嫉妬し、攻撃対象にしてしまった。
ニュースではもっと本質的な部分に焦点を当ててほしいところ。

だいぶ話はそれてしまったが映画に話を戻す。
こんな貧困なのに、息子たちが異様に親を敬っているのは気になる。
特に息子のギウは受験のプロで家庭教師も担えるほどの学力を持っているので、おそらく両親が受験費用などを工面してくれたことに対する感謝の現れだろう。
このあたりはもう少し分かりやすく描いてくれてもよかったかなと思う。

私は本を読んだあとに観賞したので、生々しい映画体験となった。
社会派の要素もあるが、エンタメとして非情に良くできた素晴らしいシナリオ。
パルムドールを受賞したのも納得の出来栄えである。

パラサイト 半地下の家族の作品情報

■監督:ポン・ジュノ
■出演者:ソン・ガンホ  イ・ソンギュン チョ・ヨジョン チェ・ウシク パク・ソダム チャン・ヘジン
■Wikipedia:パラサイト 半地下の家族(ネタバレあり)
■映画批評サイト「rotten tomatoes」によるスコア
TOMATOMETER(批評家):99%
AUDIENCE SCORE(観客):93%

パラサイト 半地下の家族を見れる配信サイト

U-NEXT:-
Hulu:-
Amazonプライムビデオ:-
TSUTAYA TV:-
Netflix:-
※2020年1月現在

-⑨組織のなかで

執筆者:

名前:柴田
年齢:30代
小説家志望。
趣味は映画、読書、ゲーム(最近はスプラトゥーン2)、お笑い、筋トレなど。
長所は人を楽しませることに一生懸命、短所は顔が丸い。