映画の海

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②金の羊毛

映画『キュクロプス』ネタバレなしの感想。妻の命を奪った犯人への復讐を企てる

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■評価:★★★☆☆3

「本質を見抜くということ」

【映画】キュクロプスのネタバレなしのレビュー、批評、評価

タイトルにもなっているキュクロプスはギリシャ神話に出てくる卓越した鍛冶技術を持つ一つ目の巨人であり、下級神一族である。
劇中では1900年前後に制作されたとするフランスの画家オディロン・ルドンの『キュクロープス』というタイトルの絵が出てくる。

そこに描かれたキュクロープスの一人であるポリュペーモスは人を食う凶暴な巨人であり、ギリシア神話の英雄オデュッセウスが酒を飲ませて機嫌を良くさせた隙に片目をつぶしたというストーリーを持つ。(ホメーロスの叙事詩『オデュッセイアー』第9書より)

さらに、ルドンの描いた『キュクロープス』では「ポリュペーモスに愛された、不運なナーイアス(水辺の妖精)ガラテイア」といったストーリーが含まれており、本作はこれらをモチーフに制作されている。

妻とその愛人の命を奪った罪により、14年の服役を終えた男・篠原が町に戻ってきた。彼の目的は妻の命を奪い、自分を罠に陥れた真犯人を探しだして復讐すること。篠原は当時、事件を担当した刑事・松尾とその情報屋・西の協力を得て、真犯人がヤクザの若頭・財前であることを知る。篠原は財前の襲撃に備えて、西の手ほどきを受けて銃の訓練を始める。ある日、篠原はフラっと立ち寄ったバーで亡き妻にそっくりの女性・ハルと出会い。その日から思わず事態に発展していくことになる。

自主製作のインディーズ映画っていうこともあって、序盤からチープ感剥き出しである。
名の知れていない役者陣が安っぽい衣装やらを纏い、少ない登場人物のみで人里離れた舞台で展開される。
物語の導入も”自分を罠にはめた真犯人を探しだして復讐する”といった内容なので鮮度が薄く、かなり睡魔に襲われた。

んが、眠気は中盤に現れる財前という男の登場で吹っ飛ばされることとなる。
こいつがまたムカつくほどに分かりやすい悪玉で最高。
チビなのにやけに強気で、平然と人をボコボコにぶん殴ったりするサイコ野郎だ。

思わず「早くこいつをぶちのめしてくれ!」と願ってしまって、一気に物語に引き込まれた。
こういうキャラクターを見ると、やっぱり物語には魅力的な悪役が必須であることを再認識させられる。
この映画、チープさがぬぐえないものの役者陣の演技は素晴らしくてなかなかの見応えがある。

とはいえ、キャラクター自体の魅力には欠けるのは気になるところ。
財前以外の登場人物があまりに普通すぎる。
とくに主人公・篠原の魅力のなさは致命的。

篠原=復讐の鬼、ということで自暴自棄気味で後先考えない行動が散見される。
そもそもこの自暴自棄感がちょっと薄い。
ジャンル映画なのでもう少し分かりやすくハデに見せてくれてもいいし、さらに意外性のある別の顔も描いて欲しかった。
凄まじいくらい破天荒だけど実は恐怖を隠して無理していて、ときおり風俗に行って行為をせずにひたすら女性に甘えるとか。

シナリオは後半の二転三転する展開は面白いけど、やっぱり新鮮さは皆無のシンプルなミステリーで、二時間ドラマっぽさが拭えない。
さらにキュクロプスといった主人公を象徴するアイテムを、こうも露骨に神話などから拝借する辺りも中二病感が否めない。
観客としてはちょっと恥ずかしくなってしまうので、もう少しさりげなく匂わせる程度のが自然で良いと思う。

例えば『パラサイト 半地下の家族』では自分たち貧困家庭を象徴するものとして、”石”と”階段”が出てくる。
これらについては深く説明されず、劇中でさらっと活用される。
なので野暮ったさも感じられないし、何より神話のようなありきたり感もないので、観客としては違和感を覚えることなく自然に受け止めることができる。

インディーズ映画で比べると『カメラを止めるな!』やら、去年公開された『メランコリック』とは雲泥の差がある。
上記二本は確かにチープ感はあったが、アイディアやキャラクターの魅力に富んでいて最高に楽しかった。

さらに近い内に観ようと思っている同じくインディーズ映画で『パラサイト 半地下の家族』で世界三大国際映画祭の1つ、カンヌ国際映画祭の最高賞のパルムドールを受賞したあのポン・ジュノにも絶賛されている『岬の兄弟』は、障害者の妹に売春を斡旋させて金を得るというムチャクチャなシナリオ。

これらと比べると、本作は弱い。
インディーズ映画で金のかけられる映像は撮れないので、もっと振り切ったアイディアで斬新さを見せて欲しかった。
脚本やら演出の甘さやらが顕著に現れた映画。

キュクロプスの作品情報

■監督:大庭功睦
■出演者:池内万作 斉藤悠 佐藤貢三 あこ

キュクロプスを見れる配信サイト

U-NEXT:○(有料)
Hulu:-
Amazonプライムビデオ:○(有料)
TSUTAYA TV:○(有料)
Netflix:-
※2020年1月現在

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名前:柴田
年齢:30代
小説家志望。
趣味は映画、読書、ゲーム(最近はスプラトゥーン2)、お笑い、筋トレなど。
長所は人を楽しませることに一生懸命、短所は顔が丸い。