映画の海

約1100本の映画を鑑賞した小説家志望の男が、ネタバレなしで映画のレビューや解説を書いてます。(直近で観たものに限る。たまにアニメ・ドラマ・小説も)面白いおすすめ映画を探している人向けのブログ。

②金の羊毛

映画『木曜組曲』ネタバレなしの感想。5人の女性が4年前に謎の死を遂げた女性作家殺害の犯人探しをする恩田陸の初期作の映像化作品

投稿日:

■評価:★★★☆☆3.5

「作家としての矜持」

【映画】木曜組曲のネタバレなしのレビュー、批評、評価

木曜組曲はこのブログにて、『2019映画ランキングベスト20』の3位にランクインさせていただいた『蜜蜂と遠雷』の原作小説の著者・恩田陸の初期作となる。

蜜蜂と遠雷のような音楽小説とはまるで雰囲気が異なるミステリーなので、彼女に興味が沸いて調べてみたが実に興味深い人物であった。
恩田陸はSF、ミステリー、冒険小説、ホラーなど多岐にわたるジャンルの作品を執筆している。
その理由として「縮小再生産にならないように、なるべく違うものを書くことを意識している」とのこと。

縮小再生産は経済用語で、『再生産が従来よりも小さい規模で反復されること』といった意味を指す。
大御所小説家の京極夏彦がライトノベルを例に挙げて分かりやすく説明していた。
「ライトノベルの定義は非常に曖昧ですが、現在ラノベと呼ばれているジャンルとは違うものと考えたほうがいいです。ラノベは一時期隆盛を極めましたが、既にだいぶ青息吐息になっています。構造的に長くもつスタイルではないし、それは最初からわかっていたことなのに、そこに目をつぶって縮小再生産を繰り返したあげくの現状ですから、これは編集側の責任だと思います」と語っている。

最近のラノベの世界では売れるということで異世界転生系ばかりが量産されるようになった。(このブームのきっかけはソード・アート・オンライン)
しかし、こういったものは一過性のブームにすぎないし、いつか読者には飽きられる。

つまり恩田陸は最初はいろんな小説を書いていたが、次第に利潤のみを考えて人気のあるジャンル、人気のあるシリーズだけを書くようになる、といったことを忌避しているのだろう。
こういった安直な売り方は作家としてのブランドの低下につながって寿命は縮むだろうし、何なら業界そのものの衰退に拍車がかかることになる。

映画だってそうだ。
最近は続編やリメイクものが非常に多い。
でも、こういった作品はその作品のファンしか観に行かないことが多い。
良質なオリジナル作品を作って新規のファンを獲得していかないと、映画業界は縮小していくことになる。

そんな感じで、プロ意識の強い恩田陸の著作の初映画化となるのが木曜組曲となる。

4年前、謎の薬物死を遂げた女優作家・重松時子。それから毎年、時子を忍んで彼女の館に集う5人の女性がいた。今年も例年にならい、彼女が命を落とした木標日を挟んで3日間集まることとなった。だが、今年は謎の花束が届き、添えられていたメッセージカードにはこう書かれていた。『皆様の罪を忘れないために、今日この場所に死者のための花を捧げます。フジシロチヒロ』フジシロチヒロとは、時子の遺作『蝶の棲む家』の主人公の名前だった。例年と変わってしまった雰囲気のなか、彼女たちはこの場所で犯人探しの推理を始めることになる。

そもそもこのあらすじに惹かれる。
過去の事件について、一つの場所に集まって各々の推理を披露するというもの。
あんまり見掛けるような設定・展開ではないので、最後まで興味深く鑑賞することができた。

鑑賞後感としてはミステリーとしてかなりマイルドな味わいで、女性作家ならではといった印象を受けた。
そう思った理由はこの物語の特色ともいえる食事シーンに見られる。

序盤ではみんなが集まる食事のときに推理合戦が始まってしまう。
だが、推理はエネルギーを使うし、どうしても「この人が怪しい」となりがちで殺伐とした雰囲気になる。
誰ともなしに「せめてご飯は美味しく食べたい」といった発言から、【食事の時だけは推理を休んで楽しむ】という謎ルールが誕生する。
それからの楽しげな食事のシーンは何だか笑ってしまった。
もはやコントである。

この辺りはすごく女性性を感じる穏やかさがある。
最近では世界的に男女平等意識が強いが、この展開を見ると女性脳と男性脳の違いを実感させられる。
元来、人間は力の強い男が狩りをして女は家を守る役割を担ってきた生き物だ。
こういったものは本能的な傾向だし、何でもかんでも平等意識を強くすればいいってものでもないようにも思える。じゃないと逆に生きづらい人も出てくるだろう。

こんなに温かい殺人系のミステリーは観たことがないし、男の作家だったら物語と関わりのないところで平和演出を施そうといった発想になる人はほとんどいないだろう。
とはいえ過去に人が亡くなっているということもあり、いざ推理となると一定の緊迫感は担保され、睡魔に襲われるといったこともなかった。
この辺りのバランス感覚が素晴らしく、上手くシナリオを作っているなあと感心させられた。

基本展開はオーソドックスで多くの人がウソをついていたり、とある事実を隠している人がいたりと二転三転する。
そして、迎える結末は予想外。
これは誰が予測できるだろうか。

女性作家ということもあってか、登場人物のすべてが女性となる。
私は同世代ではないのだが、尚美役として出ている富田靖子ってなんでこんなにキレイなんだろう。
おそらく顔立ちが上品なんだろう。系統でいうなら今で言うと石原さとみだろうか。
妙な色気が漂っていて、良い存在感を放っていた。

やたらとルックスにインパクトがある時子の担当編集者・えい子もある意味で気になって仕方なかった。
調べてみたらなんと、紅の豚で主題歌及びジーナの声優を担当していたシャンソン歌手の加藤登紀子とのこと。
こんな見た目の人だとは思いもしなかったのでただただビックリ。
髪型がごつすぎやしませんかね。
あんまり明るくないけどジョジョの3部のポルナレフにしか見えなかった。

時子の屋敷のみで展開されるワンセットドラマなので地味なルックの映画ではあるが、ご飯も美味しそうでついつい唐揚げをつまみながら楽しく鑑賞できた。

木曜組曲の作品情報

■監督:篠原哲雄
■出演者:鈴木京香 原田美枝子 富田靖子 西田尚美 加藤登紀子 浅丘ルリ子
■Wikipedia:木曜組曲

木曜組曲を見れる配信サイト

U-NEXT:○(見放題)
Hulu:-
Amazonプライムビデオ:○(有料)
TSUTAYA TV:○(有料)
Netflix:-
※2020年1月現在

-②金の羊毛

執筆者:

名前:柴田
年齢:30代
小説家志望。
趣味は映画、読書、ゲーム(最近はスプラトゥーン2)、お笑い、筋トレなど。
長所は人を楽しませることに一生懸命、短所は顔が丸い。