映画の海

約1100本の映画を鑑賞した小説家志望の男が、ネタバレなしで映画のレビューや解説を書いてます。(直近で観たものに限る。たまにアニメ・ドラマ・小説も)面白いおすすめ映画を探している人向けのブログ。

⑤人生の節目

映画『きみはいい子』ネタバレなしの感想。毎日頑張っているのに報われずに苦しむすべての人たちへ送る

投稿日:1月 12, 2020 更新日:

■評価:★★★★☆4.5

「自己肯定感」

【映画】きみはいい子のネタバレなしのレビュー、批評、評価

私が最近、ハっとさせられたことに【自己肯定感】というものがある。
自分の存在や価値を肯定し、ありのままを受け入れる感情を意味する言葉で、自信とも近い意味を持つ。
(自信はもっと能力寄りの意味なので、自己肯定感はさらに本質的)

この自己肯定感は幸せに生きていくためには物凄く大事で、もしこれが低いと何をやっても上手くいかないどころか、何かをする意欲すら起きなくなってしまう。
自己肯定感を高める方法は、自分を褒めるということ。

具体的なもので良く耳にするのが、毎日5つ、小さなことでもいいので自分が頑張ったことを褒める。
結果ではなくプロセス(行動)を褒めると尚効果的。
例えば、「本を読んだ」「友達を笑わせようと思って面白いことを言おうとした」「掃除した」などなど。
寝る前にスマホのメモ帳アプリなどに書くといい。

去年、本屋に平積みされていて一度は見掛けたことがある人も多いだろう『アウトプット大全』の著者、精神科医の樺沢紫苑もポジティブ日記と称して伝えている。

ではなぜ、この方法がいいのか。
自己肯定感が低い状態だと、自分のダメなところばかりを見るクセがついている。
つまり褒めるクセをつけることで、自分の良い部分を見るようになるということ。

私事で恐縮だが、私は母から「あなたがいけないんでしょ」などと耳にタコができるほどに否定されたり、責任転換されることが多い子育てを受けた。結果的にひどく自己肯定感が低い性格になってしまった。
子どもの頃から自信のなかった私は自分の低い能力に嘆き「何で自分は周りの人と比べて何もできないんだろう」と思い詰めて悩むことが多かった。

とにかく人見知りが酷くて周りの目が恐い。
失敗が恐くてチャレンジすることもできないし、何か考えることも苦手。
象徴的な出来事の1つとして、小学校1年生の頃に毎朝授業の前に10分間絵を描く時間が設けられていた。
みんないろんな絵を描くなかで、私は1年間毎日、海の絵しか描けなかった。
毎日毎日同じ海の絵を描く。気分によってヨットや太陽の形をちょっと変えるくらい。
他の絵を描こうとする意欲が沸かないのだ。

前から自己肯定感の重要さには気づいていたのだが、この映画を見て、改めて大切さを再認識して今は自分をほめるようにしている。幸い私は精神疾患でもなければ円形脱毛症ができたこともないので、実はメンタル強いんじゃないのか?って思ったりもしているが。
自己肯定感の低い人は結構多いんじゃないだろうか。特に日本人は。

なんでこの話をしたのかというと、この映画の3人の主人公の共通点はこの自己肯定感の低さにある。(一人例外あり)
タイトルは「きみはいい子」。
毎日頑張っているのに報われない、思い通りに行かない登場人物らを肯定する素晴らしいタイトルである。

桜ヶ丘小学校4年2組を受けもつ新米教師の岡野はマジメだが優柔不断で、問題に真正面から向き合えない。結果的に児童たちは彼の言うことを聞かない。夫が海外に単身赴任している雅美は、ママ友たちと表面的な付き合いの陰で娘に手を挙げてしまう。認知症の兆しにおびえる独居老人・あきこ。ひとつの町でそれぞれに暮らす彼らが、人と人とのつながりに光を見出していく。

連作短編といった感じで、うだつの上がらない小学校教師、DV妻、孤独な老婆の三人の視点で描く。
群像劇ではないので、三人のキャラクターが大きく交わることはない。

もちろんテーマは共通していて、自己肯定感の低さから自信を失い、生きることにもがき、苦しむ。
孤独な老婆のあきこはちょっと特殊な立ち位置で、主に描かれるのは教師の岡野とDV妻の雅美の二人。

岡野はイジメ問題などがうまく解決できず、結果的に生徒に挑発されたりして舐められる。
随所に穏やかな人間性が顔を出し、物事を上手く対処できないのだ。

観ていて思わず「自分が先生だったら」と考えてしまう。
でもやっぱりいくら考えても、イジメの解決法は難しい。正攻法があったらいじめなんて問題は簡単に撲滅できる。
ハッキリしない言動の目立つ岡野だが、決して悪い人間ではないので、可哀想に思えて同情してしまう。

DV妻の雅美もそう。
彼女の苦労は具体的なエピソードとして描かれない。
彼女の手の甲にはタバコの火を押し当てられた痕があり、おそらく親から虐待を受けて育ったのだろう。
それが自分に遺伝してしまって、娘がちょっとしたミスを犯すだけでぶってしまう。

観ていて辛いのが、彼女はそれがいけないことだって分かっているところだ。
それなのに手が勝手に反応してしまう。ぶったあとは罪悪感でトイレにとじ込もる。
親の稚拙な子育ての影響が大きくので、DVは絶対にやってはいけないが雅美だけの責任ではない。
なので雅美にも同情してしまった。

さらに娘は、母のことを怖いと思ってるけど決して嫌いではない。
「ママ~ママ~」と母にすがるような声を出すシーンもまた観ていて痛々しい。

余談だが、本作の原作は2010年の大阪2幼児置き去り死事件をきっかけに執筆されており、2013年に同事件を基にした映画『子宮に沈める』が制作されている。こちらもいずれ鑑賞したいところ。

こんな感じで、トラブルやら何やら次々と慌ただしい展開を見せてくれるので、ついつい物語にのめり込んでしまう。
とくに感情が動かされたのは、岡野が限界に陥ったときの実家でのとある出来事。
これにはやられてしまった。

岡野がこの出来事のあと、生徒の子供たちにある宿題を出す。
翌日にその感想を聞くシーンはほっこりした。
クラスの生徒一人ずつが宿題の感想を口にするシーンがあり、たぶん実際にみんなに宿題をやってきてもらい、そのままの感想をカメラの前で言わせたんだと思う。
印象的な演出でとても良かった。

ちょっと不満だったのが、岡野が生徒に「なんでこんな宿題を出したのか」尋ねられ、それに対しての答えがすごく曖昧で違和感を覚えた。
岡野のキャラクターっぽいが、同時に何で岡野が生徒たちに舐められるのかが理解できてしまうシーンでもある。

その後の独り身のおばあちゃんのパートも素晴らしい。
認知症予備軍のために迷惑をかけてしまったスーパーの店員の女性にある一言を放つのだが、これには彼女のリアクションを待つ前に目頭が熱くなってしまった。
なんて愛に溢れた映画なんだろうか。
この映画で、最も私の心を打ったのがこのシーンだ。

さきほどこのおばあちゃんの立ち位置は特殊だと書いたが、理由はネタバレになってしまうので観て確かめて欲しい。
見ればすぐに分かる。
明らかに二人とは違うポジションにいるし、それは一人の少年との出会いによるもの。

ネタバレに触れないようにしてるので曖昧な表現が多くなってしまって恐縮だが、この映画は毎日頑張っているのに報われずに苦しんでいる人の心を浄化してくれる。
自己肯定感が低くなり、自分を責めてしまっているあなたを肯定し、愛を注いでくれる。
映画を見てこんなに癒されたのは初めてかもしれない。

ロケーションが美しかったのも印象的。
高台から観覧車越しに海が見える景色があまりに絵になりすぎている。
調べたらどうやら北海道の小樽市だそう。
死に前に一度は行ってみたいと思ってしまうほどにステキな場所だった。

癒しをくれる映画(自分の過ちが許される映画)はコチラ。

■イキガミ

■カラフル

きみはいい子の作品情報

■監督:呉美保
■出演者:高良健吾 尾野真千子 池脇千鶴
■Wikipedia:きみはいい子

きみはいい子を見れる配信サイト

U-NEXT:○(見放題)
Hulu:○(見放題)
Amazonプライムビデオ:○(見放題)
TSUTAYA TV:○(見放題)
Netflix:-
※2020年1月現在

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名前:柴田
年齢:30代
小説家志望。
趣味は映画、読書、ゲーム(最近はスプラトゥーン2)、お笑い、筋トレなど。
長所は人を楽しませることに一生懸命、短所は顔が丸い。