映画の海

約1100本の映画を鑑賞した小説家志望の男が、ネタバレなしで映画のレビューや解説を書いてます。(直近で観たものに限る。たまにアニメ・ドラマ・小説も)面白いおすすめ映画を探している人向けのブログ。

②金の羊毛

映画『フォードVSフェラーリ』ネタバレなしの感想。クリスチャン・ベール史上最高の演技を括目せよ

投稿日:1月 15, 2020 更新日:

■評価:★★★★☆4

「レースへの情熱」

【映画】フォードVSフェラーリのネタバレなしのレビュー、批評、評価

『フォードVSフェラーリ』の主な舞台となるル・マン24時間耐久レースはF1のモナコグランプリ、アメリカのインディ500と並ぶ世界三大レースの1つ。
初開催1923年で、フランス中部にあるル・マン市で行われ、24時間で1周13km超のサーキットの周回数を競う。

フォード・モーター社はアメリカのデトロイトに本拠地を置く世界的な自動車メーカーで、T型フォードの生産台数は1500万代以上。歴代1位となるフォルクスワーゲンのビートルタイプに次ぐ記録となっている。
フェラーリは言わずと知れたイタリアのスポーツカーメーカーとなる。

F1と本作が題材するスポーツカーとの違いは、F1はサーキット専用に作られた1シートのフォーミュラーカーを使用する。
(フォーミュラーカー:車輪とドライバーが剥き出しになっているレーシングカー)
対してル・マンのような耐久レースに使用されるスポーツカーは、もともとは公道を走る車から派生した歴史があって2シートの車両が使われる。
F1はドライバー選手権の色合いが濃いのに対して、耐久レースはメーカー選手権といった特色がある。

気鋭のカーデザイナーとして活躍するキャロル・シェルビーのもとに、アメリカ最大の自動車メーカー、フォード・モーター社から思わぬオファーが届く。それはル・マン24時間耐久レースで頂点に君臨するイタリアのフェラーリ社に勝てる車を作ってほしいという途方もない依頼だった。背景にはフォード車の会長、ヘンリー・フォード2世の増悪にも似た対抗心があった。若い世代を魅了するセクシーな車を売り出すため、フェラーリの買収を勧めていたフォード社だったが、一枚も二枚も上手だったフェラーリにダシに使われる形で契約直前に破棄される。創業者であるエンツォ・フェラーリの傲慢な振る舞いに激怒したヘンリー・フォード2世は打倒フェラーリを掲げてシェルビーに白羽の矢を立てたのだった。かつてはドライバーとしてル・マンで優勝した経験もあるシェルビーだったが、心臓の病によってリタイアを与儀なくされていた。しかし彼は今もなおレースの世界への熱い思いを秘めていた。次のル・マンまでわずか90日しか残されていないなか、シェルビーは凄腕のイギリス人ドライバー、ケン・マイルズに接触する。

私は男だが乗り物に一切の関心がない。
戦闘機の映画で有名な『トップガン』はまったく楽しめなかったし、カーアクション映画の代名詞である『ワイルドスピードシリーズ』もまるで興味が湧かないので観ていない。
何ならスポーツは道具を使わない、己の肉体のみを使うものの方が好きである。(格闘技など)
私以外にもこう思っている人はいるのではないだろうか?

本来ならスルーする予定だったこの『フォードVSフェラーリ』は、世間の評価がやけ高く、アカデミー賞の作品賞にもノミネートされている。
さらに個人的に好きな伝記映画ということもあって劇場に足を運ぶことになった。

結果的には主演の一人であるクリスチャン・ベールにすっかりやられてしまった。
こんなの涙なしでは観られない。
クリスチャン・ベール扮するドライバーのケン・マイルズがあまりに純粋で熱い男で、レースシーンは前のめりになって観てしまった。
もはや『フォードVSフェラーリ』という原題は客寄せでしかない。
真のタイトルは『ケン・マイルズ』である。

というかクリスチャン・ベール史上最高の演技じゃないだろうか。
『アメリカン・サイコ』『リベリオン』『マシニスト』『バットマンシリーズ』『プレステージ』『バイス』などなど、多くの彼の出演作を観てきたが、ここまで彼に魅了されたのは初めてである。
『プレステージ』はなかなか痺れたが。

正直、映画序盤の方は車に関する専門用語が多く出てきたり、直接的ではない気の効いた台詞による応酬会話が多くて、あんまり入り込めなかった。
朝一で見にいったということもあって、かなりの睡魔に襲われた。
展開はシンプルなので外枠だけを理解しつつ、若干冷めた目で観ることとなった。

やっぱり、車ファン向けの印象は強い。
劇中ではエンジンの7000回転がどうってことが頻出する。
門外漢からしたら、その凄さや、そこに熱くなる意味がわからない。
ようは理解・共感できない部分が多いということ。

しかし物語が進むにつれて、あるアクシデントが発生する。
ここでドライバーは命がけの危険なスポーツなのかが伝わってくる。
このシーンがこの映画へ入り込む一番のポイントとなり、一気に睡魔が吹っ飛んだ。

命がけのスポーツなんてバカバカしい。
何でわざわざ命をかけるんだ。命を大事にしろよ。
そういったことを考えながらも、気持ちはわからないでもない矛盾があることに気づく。

命をかけてまで手にしたいものは私にもある。
何なら、誰にでも1つはあるのではないだろうか?
他人からしたら無価値と思えるようなものかもしれないが、自分は命をかけてでも手にしたいもの。

いざ、レースが始まったら、あらゆる角度からのプライドとプライドのぶつかり合いが始まる。
レースを制したいものや、覇権争いをするもの。
あらゆる思惑がレースという1つの舞台上で火花を散らす。

この映画の本番となるル・マンは24時間耐久レースとなる。
「こんな長いレースを見せられても冗長にならないのか?」といった心配はあったがまったく問題ない。
レースの迫力が素晴らしくて、見応え抜群。
長い時間走る必要があるので、想定外のトラブルに何度も巻き込まれる。
観客は睡魔に襲われる隙なんて一瞬も与えられない。

そんな命がけの苛酷なレースに挑むケン・マイルズの目に宿るサイコ感が凄い。
ケンは死への恐怖をかーちゃんの腹のなかに忘れてきたのかってくらいにアクセルを全力で踏み込む。
ケンに扮したクリスチャン・ベールの精神状態は大丈夫なのか、と観ているこっちまで心配になってしまうほど。

こんな男なのに、妻もいて、何気に子煩悩なのだから魅力的だ。
息子にとってもとーちゃんはヒーローである。
ここまで息子に尊敬されるとーちゃんって、それだけで魅力的だと思うし、男としても憧れてしまう。
ケンのキャラ立ちがお見事すぎて、マット・デイモンの存在感が薄いのはちょっと可哀想。

男と男の友情を色濃く描いた映画ではあるが、意外と女性にも開かれている側面もある。
ケン・マイルズの妻モリーがまた凶暴で力強いのだ。
節々でモリーの強い自己主張が描かれるのだが、ケンにとってはそれが支えにもなる。
とくに最後の何気ないしぐさを見せるシーンは、モリーの強さを示していて良かった。
正直、この映画マット・デイモン扮するシェルビーよりもモリーの方が存在感が強い。

余談だが、当初はマット・デイモンが演じたキャロル・シェルビーをトム・クルーズが、ケン・マイルズ役をブラッド・ピットが演じる予定だったそう。
これはこれで物凄く観てみたい。
熱量が高くて、観ると元気になる物語が好きな人には特に刺さる内容だ。

フォードVSフェラーリの作品情報

■監督:ジェームズ・マンゴールド
■出演者:マット・デイモン クリスチャン・ベール カトリーナ・バルフ
■Wikipedia:フォードVSフェラーリ
■映画批評サイト「rotten tomatoes」によるスコア
TOMATOMETER(批評家):92%
AUDIENCE SCORE(観客):98%

フォードVSフェラーリを見れる配信サイト

U-NEXT:-
Hulu:-
Amazonプライムビデオ:-
TSUTAYA TV:-
Netflix:-
※2020年1月現在

-②金の羊毛

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

関連記事

映画『特攻野郎Aチーム THE MOVIE』ネタバレなしの感想。リーアム・ニーソンのアクションに魅せられる

「キャラクターの魅力を出し切れなかった中途半端なアクション映画」

映画『アナと雪の女王2』ネタバレなしの感想。ディズニーブランドが地に落ちる序章の幕開け

「女性による自分を知るための冒険譚」

映画『search/サーチ』ネタバレなしの感想。フェイクドキュメンタリーの進化系

「現代版フェイクドキュメンタリー」

映画『私たちのハァハァ』ネタバレなしの感想。クリープハイプのライブを観るため、福岡の女子高生4人が自転車で東京を目指す

「青春」

映画『37セカンズ』ネタバレなしの感想。脳性麻痺を抱える23歳の女性を描く

■評価:★★★★☆4 「障がい・親と子」 【映画】37セカンズのレビュー、批評、評価 音楽映画を作る際、役者の選択は二通りに別れるという。演技は素人だが音楽のプロを採用するケースと、プロの役者に楽器等 …

名前:柴田
年齢:30代
小説家志望。
趣味は映画、読書、ゲーム(最近はスプラトゥーン2)、お笑い、筋トレなど。
長所は人を楽しませることに一生懸命、短所は顔が丸い。