■評価:★★★☆☆3.5
「海外で多大な評価を受けたジャパニーズサイコホラー」

【映画】オーディションのレビュー、批評、評価
この映画は日本よりも海外での反響が大きかった。
2000年の第29回ロッテルダム国際映画祭では、記録的な人数の途中退場者を出し、この映画を見た一人の女性客が三池に「悪魔!」と激怒したそう。
この映画を見たアメリカのロックミュージシャン、マリリン・マンソンは通訳越しに三池に「オーディションをリメイクする機会があったら俺を使ってくれ」と電話している。
余談だが、2014年に「氷の微笑」「ランボー」「ターミネーター」シリーズで制作指揮を務めたマリオ・カサールのプロデュースのもと、リメイクが発表された。
いまだ続報はなし。
2007年の米タイム誌選出の「ホラー映画トップ25」に邦画として唯一ランクインしている。(3位)
他にもアメリカのケーブルテレビ番組や、イギリスの映画情報誌などが発表したホラー映画ランキングにも入選している。
日本ではブルーレイ化はされていないどころかDVDは廃盤状態で、レンタルショップに置いていない店が多い。
正直、海外と日本との評価の違いまではわからなかったが、なぜ大きな反響があったのかは観て納得した。
7年前に妻を亡くした青山は、息子の勧めもあって再婚を考えるようになる。昔の同僚で、現在芸能関係の仕事をしている吉川にそのことについて話す。すると、吉川は「映画のオーディションを開催して結婚相手を探そう」と悪ふざけの提案をする。最初はそこまで乗り気ではなかった青山だが、書類審査のため、送られてきた大量の履歴書を眺めていると山崎麻美という一人の女性に目が留まる。
この映画で最も評価されている箇所は間違いなく落差だ。
文字通り、天国から地獄に突き落とされる。
そもそもオーディションで未来の奥さんを探すというシチュエーションには引き込まれる。
主人公の青山は審査する側ということなので、女性に対して圧倒的に上位となる。
選ぶ立場にあるという優位感に、ついつい観ているこちらまで自尊心が刺激されてしまう。(たぶん男限定。女性は気分悪いかもしれない)
この設定はお見事である。
そこで出会った山崎麻美は絵に描いたような美人。
黒髪ロングで肌は新雪のように真っ白。
モデル体型でスタイルも抜群である。
二人は食事をすることになるのだが、山崎麻美は青山に好意を分かりやすく示してくる。
ポイントなのが、山崎麻美は青山と仕事とは関係なく、個人的な付き合いを望んでいるということ。
こうなってくると、ますます青山が彼女にのめり込んでいくのは必然だ。
だがしかし、である。
この先はもう直接観て確かめてくれとしか言いようがない。
ここからが本番だ。
とにかくこの映画、対比が印象的である。
いたるところに張り巡らされた対比に観客の感情が激しく揺さぶられる。
一度観たら忘れられなくなるほどに強烈なインパクトを与えてくるので、覚悟を持って観るといい。
もはや面白いかどうかとか、そういった類のものではない。
何なら人によっては、この系統のルックスの女性がトラウマになるかもしれない。
原作者は『限りなく透明に近いブルー』『コインロッカー・ベイビーズ』『69 sixty nine』『昭和歌謡大全集』の村上龍。
最近、私が最もハマっている小説家で主にリアリズム小説を書くことが多い。
北朝鮮の特殊舞台が福岡を乗っ取る『半島を出よ』なんて最高にリアリティに富んでいて刺激的だ。

純文学作家といった印象のある村上龍が、まさかこんなエンターテイメント物語を書くとは思わなかった。
しかも、こんな強烈なホラーを描くなんてさすがである。
不満を言うなら多くの伏線が回収されずに終わるので、結構なモヤモヤ感を残してくれる。
もう少し回収してほしかったが、山崎麻美のミステリアス感が余韻として残るので、考え方によってはありかもしれない。
とにかくヒロインの山崎麻美が絶妙で、良くこんな女優を見つけてきたと思う。
棒読みのような演技が違和感を与えてきて、妙な恐怖を煽る。
とくに印象的だったのが、美しい彼女がおんぼろのアパートでうなだれているシーン。
何とも言葉にしがたい禍々しさが漂っていて、後の展開を期待させてくれる最高のフリとなる。
幽霊よりも人間の方が怖いということが良くわかる映画である。
オーディションの作品情報
■監督:三池崇史
■出演者:石橋凌 椎名英姫 國村隼
■Wikipedia:オーディション
■映画批評サイト「rotten tomatoes」によるスコア
TOMATOMETER(批評家):81%
AUDIENCE SCORE(観客):80%
オーディションを見れる配信サイト
U-NEXT:○(見放題)
Hulu:-
Amazonプライムビデオ:○(有料)
TSUTAYA TV:-
Netflix:-
※2020年1月現在