映画の海

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⑨組織のなかで

映画『ジョジョ・ラビット』ネタバレなしの感想。ヒトラーを心の拠り所とする少年の最愛の母は反ナチス

投稿日:1月 22, 2020 更新日:

■評価:★★★☆☆3

「自由を阻むものは何なのか」

【映画】ジョジョ・ラビットのレビュー、批評、評価

1月10日、香川県が子供をネット・ゲーム依存から守ろうと「香川県ネット・ゲーム依存症対策条例(仮称)」の制定を検討を発表し、そのことについて物議を醸している。
多くの著名人がこの条例施行に批判的だが、私も同じである。

ガチャなどのソーシャルゲーム以外の任天堂やSONYの展開するTVゲームは、いくらでもやっていいと思う。
その理由として、ゲームがその人の逃げ場となっている可能性があるからだ。
学校でいじめられていたり、あるいはやりたいことが見つからなかったり、そんな時の逃げ場の1つとしてゲームが機能している。

『ジョジョ・ラビット』では、ひ弱なジョジョが自分の心を安定させるため、イマジナリーフレンド(妄想上の友達)に自分を励まさせて精神安定を図るシーンが散見される。
この行為も、ゲームに夢中になる現代の子供たちとそれほど違いはない。

確かに歪んだ思想を持つヒトラーに傾倒するのは良くないので、いつかは卒業するべきだ。
だが今、自分の心の均衡を保つためであれば、犯罪以外なら何をしてもいいと思う。
だからこそ、反ナチスであった母もジョジョのことを見守り続けたのではないだろうか。

第二次世界大戦中、10歳のジョジョは青少年集団ヒトラーユーゲントの合宿に参加するが、上官の命令通りウサギの命を奪えなかったことから、臆病者だとバカにされる。そんないじめられっこのジョジョはイマジナリーフレンド(妄想上の友達)のヒトラーに励ましてもらいながら必死に生きるひ弱な少年。ナチスへの忠誠心はピカイチで、ジョジョにとってヒトラーは唯一の心の拠り所となっていた。ある日、ジョジョの唯一の家族で最愛の母親がユダヤ人の少女を匿っていたことを知ってしまう。

SNSでかなり評判が良かったので観てみたが、思っていたよりもエンタメ性は低く、あんまり面白いとは思えなかった。

確かにジョジョが尊いのは分かる。
可愛らしいルックスのジョジョはいじめられっこ。
ヒトラーのイマジナリーフレンドを作ることでしか精神を安定させられない貧弱な少年。
そんなナチス信者で自ら自由をはく奪するジョジョを可哀想に想いながらも、すべてを受け止める母の愛も素晴らしい。
描いていることは素晴らしいが、これらの描き方がそんなに面白くない。

特に中盤。
まったくもって興味深い展開が訪れず、淡々と進むシナリオがかなりの睡魔を引き起こしてくれた。
さすがにこのシークエンスの脚本はお粗末すぎる。
ジャンル映画である以上、もう少しエンタメ的な見せ場を作ってほしい。

この箇所は主にジョジョと、母が密かに匿っていたユダヤ人少女・エルサとのやり取りが描かれる。
エルサがユダヤ人についてジョジョに教える流れになり、ユダヤのことふざけて説明する。
これが全然面白いと思えなかった。

こういったやり取りを経て、ジョジョはエルサに少しずつ惹かれるような変化を見せるのだが、ここもいまいち理解できない。
ジョジョはいったい、エルサのどこに惹かれたのだろうか。
凹んでるジョジョに滑稽なことをしてゲラゲラ笑わせたりとか、もっと分かりやすく彼女を魅力的に思えるように見せて欲しかった。
最後までただ偉そうな少女、といった印象。

結局のところ、ただの吊り橋効果で心の距離が縮まっているようにしか思えない。
というのもエルサはもちろん、ジョジョもユダヤ人をかくまっていることがバレたら、ゲシュタポ(秘密警察)に命を奪われてしまうから。

あともうひとつ理解できなかったのはラストシーンでジョジョが見せるとある行動。
一応、本作一番の見せ場となる。
だが、明らかにそういったことをする心境ではないだろう。
もし自分がジョジョの立場だったら、あのような行動は出来ない。直近の出来事があまりにハードすぎるから。

劇場を出るときに「可哀想」といった女性客の声が聞こえてきた。
このような感想が出るような内容なのに、ジョジョはあのような行動を本当に取ることができるのだろうか。

ドイツが舞台の映画なので、英語ではなくドイツ語で演じて欲しかった。
英語だとリアリティーに欠けてしまう。
日本を舞台にしてるのに、出てくる日本人が英語やヒンドゥー語を話したり、スシ・ニンジャ・サムライ・ゲイシャ・テンプラまみれな世界観の映画を見せられているようなもの。

とはいえ良かったところもある。
いじめられっ子のナチスが匿っているユダヤ人を通じて成長を見せるという流れ自体はユニークで面白い。
なので、どんな展開を迎えるのかワクワクして観ることができた。
しかもジョジョが大切にしている「ナチス」を、どんなときでも守ってくれる最愛の母は反ナチスといった構図はユニーク。
さぞかしジョジョは葛藤したことだろう。

あと、少年が成長を遂げて○○する。といった構図が個人的には好き。
○○はネタバレとなるので言及しないが、甘えん坊な子供時代を過ごした人なら共感できると思われる。

美術や衣装面が本当に素晴らしかった。
本作で一番良かったのがここ。
特にスカーレット・ヨハンソン扮するジョジョの母がやけにオシャレで、毎回異なる華やかな服装にワクワクさせられた。
服好きな人はかなり興味深く見られる。
そもそも、この映画のチラシの色味が好き。 ノスタルジックさが絶妙である。

魅力的っぽいキャラは何人か出てくるんだけど、彼らをあんまり好きになることもできなかった。
その一番の理由が会話にある。
本作はコメディの部類だが、笑えるところが少ない。
劇場でも笑い声は全然聞こえてこなかったので、私の感性が監督とズレているっていうことではないと思われる。

ただし、スカーレット・ヨハンソンの演技は素晴らしかった。
彼女も別に面白いことを言っているわけではないが、コメディエンヌとして抜群の雰囲気を漂わせている。
そして、彼女の溢れんばかりの母性も良い。
本作はテーマの1つとして「母に守られる非力な少年」が挙げられるが、相手役がスカーレット・ヨハンソンという采配が実に絶妙。
このテーマを描くに当たってかなりの適任者である。

SNSはかなり盛り上がっていたので相当な期待を煽られて観に行ったが、残念ながら期待ハズレな結果となった。

ジョジョ・ラビットの作品情報

■監督:タイカ・ワイティティ
■出演者:ローマン・グリフィン・デイヴィス トーマシン・マッケンジー タイカ・ワイティティ
■Wikipedia:ジョジョ・ラビット
■映画批評サイト「rotten tomatoes」によるスコア
TOMATOMETER(批評家):80%
AUDIENCE SCORE(観客):95%

ジョジョ・ラビットを見れる配信サイト

U-NEXT:-
Hulu:-
Amazonプライムビデオ:-
TSUTAYA TV:-
Netflix:-
※2020年1月現在

-⑨組織のなかで

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名前:柴田
年齢:30代
小説家志望。
趣味は映画、読書、ゲーム(最近はスプラトゥーン2)、お笑い、筋トレなど。
長所は人を楽しませることに一生懸命、短所は顔が丸い。