映画の海

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⑧バカの勝利

映画『マジェスティック』ネタバレなしの感想。仕事を干され、絶望した男が事故って記憶喪失になって流れ着いた町で英雄扱いされる

投稿日:

■評価:★★★☆☆3

「自由を守るための勇敢さ」

【映画】マジェスティックのレビュー、批評、評価

フランク・ダラボン監督といったら驚異の打率が挙げられる。
彼が手がけた映画は『ショーシャンクの空に』『グリーンマイル』『マジェスティック』『ミスト』の4作品。
テレビドラマの『ウォーキング・デッド』の企画から第1シーズン第1話の監督・脚本も担当している。

ヒューマンドラマからジャンル物まで幅広くこなし、どれも名作に仕上げる手腕は恐ろしい。
ただし、ダラボンは寡作で知られる作家で、2007年の『ミスト』以降は監督業からは遠ざかっている。

ダラボンはなぜかスティーブン・キング小説原作作品との相性がいい。
キングの小説を原作とする映画は商業的にも内容も、駄作となるケースが非常に多い。
理由は不明。

そんななかでダラボンが監督した『マジェスティック』以外の3作品はキング原作であり、どれも評価が高い。
ダラボンは今の時点で『死のロングウォーク』と『猿とシンバル』の2つのキング原作の映画化権利を持っているので、いつか何らかの形で作られることが予想される。

死のロングウォーク』は軍事政権が支配しているらしき架空のアメリカで毎年10代の少年達100人が「ロングウォーク」という競技に挑んでいる設定の話。
バトルロワイアルのモチーフとなった作品である。
亡くなった叔母の家に行き、壊れている猿のおもちゃを見つける。この猿がシンバルを叩くと誰かが命を落とすというホラー短編が『猿とシンバル』。

本題に戻すが、『マジェスティック』は4作品の中でも印象の薄い作品。
果たしてどんな内容なのか。

1951年、アメリカは第二次赤狩りの真っ只中、ハリウッドの新人脚本家ピーター・アプルトンはB級映画の脚本を手掛けながら、いつかはA級の脚本を書きたいと願っていた。ある日、学生時代に女の子の気を引くため共産主義/反戦集会に参加していたことが、下院非米活動委員会の知るところとなり、共産主義者との疑いがかけられる。結果的にピーターの新作映画の公開は延期され、クレジットからも名前が外されてしまう。キャリアを絶たれたピーターは自暴自棄となって飲酒運転をしたうえ、道路に飛び出してきた動物を避けようとして橋から落下してしまう。記憶喪失となったピーターが流れ着いた町”ローソン”は、戦争で多くの若者を失い、住人たちに暗い影を落としていた。しかしピーターは第二次世界大戦で行方不明となっていた町の英雄ルーク・トリンブルにそっくりだったため、住人に勘違いされて受け入れられる。

赤狩りとは政府が国内の共産党員およびそのシンパ(同調者、支持者)を職などから追放することを指す。
第二次世界大戦後の冷戦を背景に、主にアメリカとその友好国である西側諸国で行われた。

とにかく導入がお見事。
職も恋人を失って絶望に瀕した男が、事故って川に落ちて流れ着いた街では英雄扱いされて大歓迎される。
しかも記憶を失っているので、メンタルは一気に回復だ。
思わず私も海に飛び込んで見知らぬ街に流れ着きたいと思ってしまった。
食人族の集落に辿り着かないことを祈るばかりである。

人間は誰だって人に必要とされたいもの。
特に実生活で、それが実感できないくらいに苦労していたら尚更である。
ユニークで興味深い”起”だ。
一時期やたらとラノベで量産されていた異世界転生系に通ずる設定である。

なので、若干のファンタジー感が漂っているのがいい。
社会から追放されていたピーターがいきなり良い待遇を受けることになるので、「いつかこの魔法の冷めてしまうのではないか?」といった観客の不安がファンタジー感を与えてくれる。
もちろん言うまでもなく、本作では【記憶が蘇る=魔法が解ける】である。

想定外の好感を持てたのが音楽。
劇中ではピーターがストーリーの流れでジャズピアノを披露するシーンがあるのだが、めちゃくちゃ陽気な曲なのだ。
ノリが良くて思わず体が動いてしまった。
ついつい鑑賞後はTSUTAYAに足を運んでレンタルしてしまったくらい。

描かれてるテーマも素晴らしい。
駆け出しの脚本家で恋人にまで捨てられたピーターに対して、戦争で勇敢に戦ったルークは町の英雄であり、希望そのもの。
つまり、ピーターにないものをすべて持っている男になってしまったということ。
記憶がないということで無自覚ではあるが、そんな大役を代わりに担わなければならない。
ピーターがどんな成長を遂げるのかは大きな見所の1つ。

ただしこの映画、かなり地味な物語ではある。
確かにファンタジー的な導入にはワクワクさせられる。
が、以降は街では映画館を再建しつつ、ルークの恋人であったアデルとの関係がメインで描かれる。
あまり劇的な展開を見せてくれないので、感情が動かされる機会はほとんどなかった。
終盤の展開もかなり渋い。
152分といった長尺なので、もう少し意表を突かれるような展開などは欲しい。

個人的にはフランク・ダラボン監督作品の中では一番評価が低い。
私が特に好きな『ショーシャンクの空に』『ミスト』は、その映画を象徴とするシーンが存在する。
『ショーシャンクの空に』は最初に仲間と打ち明けるビールのシーンは良い。
あとはやっぱりラストシーン。
あのシーンでどれだけ泣かされたことか。
『ミスト』は絶望的なラストもそうだが、中盤に訪れる宗教女もいいフックとなっていてとても印象的。

だが、『マジェスティック』はそういったものが存在しない。
『ショーシャンクの空に』『ミスト』のように人の生死が絡む内容でもないので、物語としてもかなり弱い。
だが良かった箇所も多いので、フランク・ダラボン映画が好きな人であれば積極的に観ても良いと思う。

マジェスティックの作品情報

■監督:フランク・ダラボン
■出演者:ジム・キャリー ローリー・ホールデン マーティン・ランドー
■Wikipedia:マジェスティック
■映画批評サイト「rotten tomatoes」によるスコア
TOMATOMETER(批評家):42%
AUDIENCE SCORE(観客):60%

マジェスティックを見れる配信サイト

U-NEXT:○(見放題)
Hulu:-
Amazonプライムビデオ:○(字幕・有料)
TSUTAYA TV:○(有料)
Netflix:-
※2020年1月現在

-⑧バカの勝利

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名前:柴田
年齢:30代
小説家志望。
趣味は映画、読書、ゲーム(最近はスプラトゥーン2)、お笑い、筋トレなど。
長所は人を楽しませることに一生懸命、短所は顔が丸い。