映画の海

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⑥バディとの友情

映画『ストレンジャー・ザン・パラダイス』ネタバレなしの感想。10日間、従妹の面倒を見ることになる

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■評価:★★☆☆☆2

「いとことの触れ合い」

【映画】ストレンジャー・ザン・パラダイスのレビュー、批評、評価

【他人の面倒を押し付けられる】といった設定は個人的には結構好みである。
たいがい二人の関係は険悪な状態から始まる。『ストレンジャー・ザン・パラダイス』もそう。
この設定の何が面白いって、半ば強制的に共に行動することによって、性悪だと思っていた主人公の隠れた一面が引き出される。

「あ、こんな優しいところがあるんだ」と観客は思うわけだ。
キャラクターはそういった裏の顔が描かれるからこそ、魅力的に見えるのである。
多面的を持つキャラほど深みを感じるもの。
清楚で可愛らしいルックスの女性は言動もおしとやか。それしか描かれないとつまらない。
そんな子が実はスパイで、ハニートラップを仕掛けまくる狡猾な女性だったら面白い。想定外の理由も併せて描かれたらなおさらである。

何といっても私が好きなのは『レオン』。
殺し屋レオンは、麻薬取締局の連中に両親や姉弟の命が奪われてしまった少女マチルダを仕方なく匿い、そのまま面倒を見ることに。

『ミリオンダラー・ベイビー』はボクシングジムのトレーナーのフランキーの元に、マギーという女性がやってくる。
女性に教える気はないとマギーを突き放すが、相棒のジムの後押しで仕方なく面倒を見ることになる。

変化球ではあるが『ターミネーター2』もそう。
警察に扮した男に命を狙われる少年ジョン・コナーのもとに、オッサンの機械人間(ターミネーター)がやってきて助けてくれる。その後はしつこくつきまとわれる。

今気づいたがこの3作品、すべて見た人なら分かるが不思議な共通点がある。
ネタバレになるので言及は控えるが、何だかちょっと切ない。

あとこの設定はキャラクターの変化がわかりやすく描かれるのも良い。
変化=心境の変化=二人が仲良くなる、ということ。
そんな感じで『ストレンジャー・ザン・パラダイス』にもキャラクターが魅力的に描かれることを期待して観ることになった。

ハンガリー出身で、今はニューヨークでギャンブルで生計を立てているウィリー。彼の元にクリーブランドに住む叔母から電話があり、叔母が入院する10日間、ブダペスト(ハンガリーの首都)から来た従妹のエヴァを面倒を見ることになる。無愛想なウィリーは当初はエヴァを邪険に扱うが、日が経つにつれて少しずつ打ち解けあうようになる。楽しい日々が続いたが、エヴァは用事ができたためにクリープランドに向かうことになる。

本作は三部構成でニューヨークが舞台の『The New World,』、一年後のクリーブランドを舞台とする『One Year Later,』、フロリダを舞台とする『Paradise,』より成る。
上記のあらすじは一部まで。

一部の冒頭でウィリーと彼の従妹のエヴァは出会うのだが、ほとんどがウィリーのアパート室内での会話劇となる。
定点カメラで、二人の絡みが淡々と描かれる。
一見退屈そうに見えるのだが、これが意外と面白い。

遊び人であるウィリーにとってエヴァは邪魔な存在でしかなく、終始冷たく当たる。
しかし、エヴァはウィリーしか頼る相手がいないのか、文句も言わずに仕方なく受け入れる。
こんな感じで二人の会話には、微妙に緊張感が漂っている。
「いつかエヴァがキレたりしないだろうか」といった不安が常に孕んでいて、ついつい二人の会話に見入ってしまった。

そんななか、エヴァは飯を用意してくれたり、掃除をしてくれたりする。
それに対してもウィリーは愚痴ったりするのだが、ひどい男である。

この映画の特徴に1つがデッドパン(無表情)喜劇。
みんな笑わない。
無表情で淡々と会話するだけ。

この手法は私は嫌いじゃなかった。
キャラクターたちの表情に変化がないので、気づくと感情に意識が向いている。
「こいつ今何考えているんだ」と観客を考えながら観ることになるのだ。

余談だがお笑いコンビのダウンタウンは当時、このデッドパンスタイルが斬新であったために人気を博した。
ダウンタウンを模倣する芸人も多く現れ、あの陽気なアンタッチャブルのザキヤマも一時期はクールで無表情なスタイルを取っていたとのこと。

話を戻すが、全編モノクロで撮られていて、残念に思うところもあった。
2部以降で舞台がクリーブランドに移る。
雪景色などの田舎町の風景がたくさん映されるので、カラーで楽しみたかったところ。
モノクロだと言うまでもなく色の情報が少ないので、自然描写にまったく心が動かされない。
あまりモノクロの意味を見いだすことができなかった。

さらに二人の関係性も早いうちに縮まってしまうので、2部以降は会話劇に緊張感がなく、中弛みしてしまった。
全体的にも大したトラブルも全然起きずに起伏に乏しく、終わり方もいまいちピンのこない。
キャラクターの変化もごくわずか。
楽しめる部分も多少はあったが、結論としてはアート系は受け入れがたい。

ストレンジャー・ザン・パラダイスの作品情報

■監督:ジム・ジャームッシュ
■出演者:ジョン・ルーリー エスター・バリント
■Wikipedia:ストレンジャー・ザン・パラダイス(ネタバレあり)
■映画批評サイト「rotten tomatoes」によるスコア
TOMATOMETER(批評家):96%
AUDIENCE SCORE(観客):88%

ストレンジャー・ザン・パラダイスを見れる配信サイト

U-NEXT:○(見放題)
Hulu:-
Amazonプライムビデオ:○(字幕・有料)
TSUTAYA TV:-
Netflix:-
※2020年1月現在

-⑥バディとの友情

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名前:柴田
年齢:30代
小説家志望。
趣味は映画、読書、ゲーム(最近はスプラトゥーン2)、お笑い、筋トレなど。
長所は人を楽しませることに一生懸命、短所は顔が丸い。