映画の海

約1100本の映画を鑑賞した小説家志望の男が、ネタバレなしで映画のレビューや解説を書いてます。(直近で観たものに限る。たまにアニメ・ドラマ・小説も)面白いおすすめ映画を探している人向けのブログ。

④難題に直面した平凡な奴

映画『運命のボタン』ネタバレなしの感想。押せば他人の命と引き換えに100万ドルが手に入るボタン装置が届けられる

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■評価:★★☆☆☆2.5

「倫理観・ヒューマニズム」

【映画】運命のボタンのレビュー、批評、評価

『運命のボタン』はアメリカの小説家リチャード・マシスンの短編『死を招くボタン・ゲーム』を原作とする映像化作品となる。
リチャード・マシスンはひとつのアイディアを緻密な描写で展開していくスタイルを持っていて、スピルバーグの『激突!』も彼のシナリオである。

私がリチャード・マシスン原作の映画で好きなのが『アイ・アム・レジェンド』。
ウイルス感染によって人類が滅亡し、荒廃したニューヨークを唯一生き残った男一人が生き抜く話で、まさに一つのアイディアで展開している。
ストーリーはそこまでワクワクするような展開はなかったのだが、設定がユニークだし、何より荒廃したニューヨークの映像が素晴らしい。
解放感もあって、主人公に扮したウィルスミスは自由気ままに街中でゴルフをしたり、動物園から逃げ出したインパラを狩ったりして生活している。

『運命のボタン』もユニークな設定のシナリオである。

1976年、バージニア州リッチモンド。足に障害を持つノーマは、NASAに勤務して宇宙飛行士を夢見る夫・アーサーと一人息子のウォルターの3人暮らし。ある日、差出人不明の箱が届けられる。中身は赤いボタンのついた謎の装置だった。その日の夕方、ノーマの前に顔の左半分にヤケドのような傷を負ったスチュワードと名乗る老人が現れてこう告げる。「この装置のボタンを押せば100万ドルを手に入れることができる。しかし、世界のどこかに住んでいる、貴方の知らない誰かが死ぬことになる」と。金銭的に不安を抱えていたノーマとアーサー夫妻は悩んだあげく……。

さっぱり面白くない。
なぜこんなハチャメチャな展開の企画(脚本)が通ったのだろうか。
終盤は感情が高まって行くような流れにはなっているが、まったく乗れなかった。

その一番の理由がジャンルの変調にある。
経済的に苦しい夫婦が、目の前にあるボタンを押せば100万ドル手に入るが、見知らぬ誰かが命を落とす。
「押して楽な生活を手に入れるべきか」「しかし自分たちの欲のために人の命は奪うなんて人としてどうなんだ」
夫婦は倫理観・ヒューマニズムが問われるのだ。

そんな感じで多くの観客は、この夫婦の葛藤を描くドラマを期待する。
が、物語は中盤辺りから突如としてSF展開にシフトする。
こうなってくると、夫婦の内面よりSF的な展開・設定の方に意識がいってしまう。

最初はてっきり核ミサイルや、あるいは誰かの体に埋まってる爆弾等の起爆装置かと思っていたんだが。
もはや序盤と中盤以降ではまるで別物の物語となってしまった。

超自然的な世界観なら、最初の方から見せて欲しかった。
例えば序盤でUFOの墜落のニュースを流すとか、何でもいい。
「何を見せられているのか」といった疑問が終始頭をよぎって集中力が途切れてしまったし、最後まで見ても結局何が言いたいのかさっぱりだ。

それでも面白いところはあった。
ボタンを押すかどうか迷うときに、夫が「中身はどうなってるんだ?」とボタン装置を分解する下りは想定外だったのでお見事。
劇中で一番ワクワクした瞬間がここ。

夫婦は押すかどうかを決断したあと、奇妙な行動を起こす人間たちがたびたび現れるのもスリリングで先の展開を期待させてくれた。
結果的に、その期待には応えてはくれなかったが。

調べたら、どうやら原作はSF設定が存在せず、異なる趣のオチを採用しているとのこと。
あらすじを読む限り、原作のオチも正直かなり微妙。
だが、物語のカラーは一貫しているのでこちらの方が好み。

猿の手は知っているだろうか。

1902年に発表されたイギリスの小説家W・W・ジェイコブズの短編小説。
とある老夫婦がインドの行者が作った猿の手のミイラを知り合いから譲り受ける。猿の手には魔力が宿っていて、持ち主の望みを3つ叶えるという。夫婦は200ポンド欲しいと願うと、翌日、息子が事故って亡くなり、200ポンド手に入るという内容。

後世の作品に影響を与えた一遍で、『運命のボタン』の原作も猿の手のような怪奇色が強い。
映画もこの方向性で作ってくれたら最高に楽しかったのに。
残念で仕方がない。

運命のボタンの作品情報

■監督:リチャード・ケリー
■出演者:キャメロン・ディアス ジェームズ・マースデン フランク・ランジェラ
■Wikipedia:運命のボタン(ネタバレあり)
■映画批評サイト「rotten tomatoes」によるスコア
TOMATOMETER(批評家):44%
AUDIENCE SCORE(観客):24%

運命のボタンを見れる配信サイト

U-NEXT:○(見放題)
Hulu:-
Amazonプライムビデオ:○(字幕・見放題)
TSUTAYA TV:○(有料)
Netflix:-
※2020年1月現在

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名前:柴田
年齢:30代
小説家志望。
趣味は映画、読書、ゲーム(最近はスプラトゥーン2)、お笑い、筋トレなど。
長所は人を楽しませることに一生懸命、短所は顔が丸い。