映画の海

約1100本の映画を鑑賞した小説家志望の男が、ネタバレなしで映画のレビューや解説を書いてます。(直近で観たものに限る。たまにアニメ・ドラマ・小説も)面白いおすすめ映画を探している人向けのブログ。

⑤人生の節目

映画『DISTANCE』ネタバレなしの感想。無差別殺人事件を起こしたカルト教団の加害者遺族を描く

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■評価:★★☆☆☆2.5

「家族=距離>血」

【映画】DISTANCEのレビュー、批評、評価

第71回カンヌ国際映画祭で、最高賞であるパルム・ドールを獲得した『万引き家族』の是枝裕和監督初期作となる。

私が受ける是枝映画の印象は、役者の異様な生々しい演技が挙げられる。

どの役者も是枝映画に出ると妙にリアルで、生き生きと演技しているのだ。
是枝監督は現場の発見を大切にしているらしく、役者のリアクションによってその場で脚本を書き換える。
子役には台本を渡さずに、現場で口頭でセリフを説明して、子どもの自身の言葉でセリフを言わせるそう。

『海街diary』に出ていた当時16歳の広瀬すずに、監督から子役としてか、台本を渡して大人として演じるかを選ばせた。
広瀬すずは前者を選び、ほとんどアドリブのセリフを口にしている。

北野武や庵野秀明とは真逆な演出である。
北野武は基本的には自分の演出等に意見する役者はキライで、自分のイメージ通りに映画を作りたいタイプ。
『アウトレイジ 最終章』に出演した西田敏行はアドリブが多かったそうで、すべてカットしている。

エヴァシリーズでおなじみ庵野秀明はたまに実写も撮るが、役者は映画の部品の1つにしか思っていない。
そのため『シン・ゴジラ』では、登場人物たちが異様な長文を早口で会話するシーンが散見されるが、あれは役者に余計な演技をさせないためという話もある。

対して、是枝監督は役者主体で考えており、役者の感性を生かして映画を作っている印象を受ける。
これに関してはどの演出が正しいってことはなく、好みである。
私は映画好きなので、是枝映画、北野映画、庵野映画すべてファンである。

カルト教団「真理の箱舟」が無差別殺人を起こした。五人の実行犯は教団の手で命を奪われ、教祖も自ら命を落とす。この陰惨な事件から三年後の夏、四人の加害者遺族は命日に集まった。遺灰を撒いたとされる山間の湖に慰霊に行ったが、車を盗まれてしまった。その場に居合わせた元信者・坂田の案内で、かつて実行犯たちが潜伏していたロッジに案内される。一夜を明かすなかで、五人は過去と向き合う。果たして自分たちは被害者なのか、あるいは加害者なのか。

この映画は2001年公開作品となる。
観た感想としては、当時の是枝監督は面白い映画をつくろう、という意識はそこまで強くなかったように思える。
エンタメ指数は低く、リアリティーを追求する意志が伝わってくる映像だった。

とにかく説明が少ない。
あまりの少さに、序盤は頻繁に切り替わる視点キャラクターたちの言動が何を示しているのかが把握しづらい。
なので、もし鑑賞するなら上記のあらすじを頭に入れておいてから観るのがベターである。

あと、俳優たちの抑えた演技は良いんだが、何を言っているのかわからないシーンが非常に多い。
リアリティーを追及した結果なのだろうが、セリフが聞き取れないと当然ストーリーを追えない。
これでは本末転倒である。
この部分はかなりのストレスになって、集中力が削がれてしまった。

リアリティーを追求しているわりに、信者と一般人との対立がビックリするほどステレオタイプに描かれているのには違和感を覚える。
わかりやすく言うと、信者がありきたりに気持ち悪いキャラクターに描かれていて、一般人はそれを見て引くリアクションを見せる構図である。
オウム真理教の地下鉄サリン事件からインスパイアされたとのことだが、ちゃんとこの事件の加害者親族に取材を行ったのだろうか。
もう少し生々しい関係性のサンプルを持ち込んで描いてほしかったところ。

ただ、あくまで2020年の今現在に鑑賞した感想だ。
この映画が制作された2001年の時点だと、まだこの構図には鮮度があったのかもしれない。
私の感性のみを過去にタイムスリップさせることは難しいので、この箇所の正しいレビューはできそうにない。

どっちにしろ、加害者遺族の心境の吐露をひたすら見守るだけの地味に展開となっている。
BGMも皆無で物語の起伏にも乏しいので感情が揺さぶられることもほとんどなかった。

後半になってようやく1つだけ謎が生まれる。
この真実もなるほど、って感じだが「だから何」感も否めない。
つまりどのキャラも変化や成長を遂げないのだ。

万引き家族ではなかなかのエンタメ的な展開を見せてくれて度肝を抜かされたが、この映画まだまだ粗削りといった印象。
一応、是枝映画の特色となる俳優の生々しい演技群は、この時にはすでに健在である。
ドキュメンタリックでリアリティーに富んだ映画を観たいのであれば、価値を感じられると思う。

DISTANCEの作品情報

■監督:是枝裕和
■出演者:ARATA(井浦 新) 伊勢谷友介 寺島進 夏川結衣 浅野忠信 りょう 遠藤憲一
■Wikipedia:DISTANCE
■映画批評サイト「rotten tomatoes」によるスコア
TOMATOMETER(批評家):80%
AUDIENCE SCORE(観客):76%

DISTANCEを見れる配信サイト

U-NEXT:○(見放題)
Hulu:-
Amazonプライムビデオ:○(見放題)
TSUTAYA TV:-
Netflix:-
※2020年2月現在

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名前:柴田
年齢:30代
小説家志望。
趣味は映画、読書、ゲーム(最近はスプラトゥーン2)、お笑い、筋トレなど。
長所は人を楽しませることに一生懸命、短所は顔が丸い。