映画の海

約1100本の映画を鑑賞した小説家志望の男が、ネタバレなしで映画のレビューや解説を書いてます。(直近で観たものに限る。たまにアニメ・ドラマ・小説も)面白いおすすめ映画を探している人向けのブログ。

⑤人生の節目

映画『ほえる犬は噛まない』ネタバレなしの感想。妻に虐げられる日々を送る夫がストレス解消のため、吠える犬を誘拐する

投稿日:

■評価:★★★☆☆3.5

「真の悪は誰なのか」

【映画】ほえる犬は噛まないのレビュー、批評、評価

2020年2月9日に行われた第92回アカデミー賞で、作品賞を含む最多4部門を受賞した『パラサイト 半地下の家族』の韓国人映画監督ポン・ジュノの長編デビュー監督作品となる。

外国語映画として史上初めてアカデミー作品賞を受賞した鬼才ポン・ジュノはいわゆるオタク。
もともとは漫画家志望だったそう。
世界の漫画やアニメーションに精通しており、日本作品では『ピンポン』『鉄コン筋クリート』の松本大洋、『行け!稲中卓球部 』『ヒミズ』『シガテラ』『ヒメアノ~ル』の古谷実などの影響を受けている。

『ほえる犬は噛まない』の原題は『フランダースの犬』である。
『フランダースの犬』は日本でもおなじみで、アニメの印象が強い人が多いだろう。
乱暴な飼い主によってこき使われている老犬のパトラッシュを助けたネロにたくさんの悲劇が起きるストーリー。
ラストはあの大聖堂の感動シーンが頭に浮かぶ。

余談だが、日本で知られている『フランダースの犬』のアニメは1話30分の全52話から成る超長編だが、原作は60ページ程度の短編小説となる。

大学で非常勤講師をしている青年ユンジュは、妻ウンシルに養ってもらう甲斐性のない男。大学教授のポストを目指しているが、学長に巨額の賄賂を渡す必要があった。さらにウンシルにあごで使われ、虐げられる日々にストレスを溜めこんでいた。ある日、ペット禁止の団地で飼い犬のけたたましい鳴き声に我慢の限界を超え、ユンジュは犬を地下室の捨てられたタンスに閉じ込めてしまう。一方で団地の管理事務所で経理している女性ヒョンナムのもとに、愛犬が失踪してしまった女の子が訪ねてくる。女の子のためにヒョンナムは失踪犬の張り紙をすることに。

20年前の古い映画だが、結構楽しめた。
ポン・ジュノ作品の特徴がところどころに見られるのも良い。

例えば空間の使い方。
マンションのとある場所が異様な空間となっていて、なかなかの不気味さを醸している。
こういった謎空間を用いて世界観を拡張させるような展開は、ポン・ジュノの他作品にも見られる傾向の1つ。
個人的にはかなり好みである。

コメディタッチなのにやってることは結構エグい。
エンタメ性が強くなるので、個人的にキライではない。
だが、ワンワンがかわいそうな目に遭うので苦手な人も多いだろう。
ワンワン愛好家は鑑賞は控えたほうが良いかもしれない。

仄かに韓国の社会問題について提起しているのも気になるところ。
主人公ユンジュの仕事関係もそうだが、特に印象的だったのは妻ウンシル。
ここはネタバレになるので伏せておくが、ウンシルに起きるとあるエピソードは、韓国がまだ発展途上であることが伝わってくるシーンとなっている

あと、終盤に差し掛かるあたりで、とあるキャラクターの裏の顔が明かされて、ガラッと展開が変わるのは良かった。
ここから加速的に面白くなるし、ポン・ジュノらしさを最も感じたシーンでもある。

デビュー作ということもあって、荒削りな箇所も散見される。
そもそもこの映画、設定がそんなに面白そうでない。
犬がうるさいから命を奪おうとするって流れだが、かわいそうなだけでまったくもって魅力的な設定ではない。
ポン・ジュノじゃなかったら確実にスルーしている映画だ。

冒頭もただ、キャラクターの行動を思考停止に描いてるだけで、まったく興味深く観られなかった。
上手いシナリオは、先の展開を何となく予想させてくれるもの。(その上で逆張りしたりなど)
だが、この映画はただキャラクターの行動をそのまま映しているだけである。
そのせいで、物語に入り込むのに少し時間がかかった。
物語が動き出すまでは、かなり退屈である。

他には、ターニングポイントとなる展開の見せ方に劇的さがなく、普通に映しているだけで稚拙さを感じる。
『パラサイト 半地下の家族』なんて、この辺りの見せ方がとてつもなく上手かった。
いかにもこの先異様なことが起きるであろう雰囲気を演出してくれるので、観客のワクワク感がめちゃくちゃ煽られる。
結果的に想定外の展開を迎えてくれるので、大満足である。
対して、『ほえる犬は噛まない』の演出力はまだまだ凡庸である。

終わり方もどうなんだろうか。
納得できない人は多そう。私はちょっと違和感を覚えてしまった。

全体的にはそこそこ楽しめるので、ポン・ジュノに関心があれば観ると良いだろう。
『フランダースの犬』は救いのない物語。
まるで、自殺率が異常に高い韓国社会に見立てているようにも見える。

『ほえる犬は噛まない』の主人公ユンジュをネロと違って、結果的には報われるような展開を迎える。
だが、ユンジュの多大なストレスのために犬の命を奪おうとする凶行は、韓国社会に対する皮肉のよう。
報われる流れにも違和感が残る。
まるで韓国社会に踊らされているようだ。
ヒョンナムはそんなユンジュに、救世主のように手を差し出す。

ほえる犬は噛まないの作品情報

■監督:ポン・ジュノ
■出演者:ペ・ドゥナ イ・ソンジェ
■Wikipedia:ほえる犬は噛まない
■映画批評サイト「rotten tomatoes」によるスコア
TOMATOMETER(批評家):-
AUDIENCE SCORE(観客):78%

ほえる犬は噛まないを見れる配信サイト

U-NEXT:○(見放題)
Hulu:-
Amazonプライムビデオ:○(字幕・有料)
TSUTAYA TV:○(有料)
Netflix:-
※2020年2月現在

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執筆者:

名前:柴田
年齢:30代
小説家志望。
趣味は映画、読書、ゲーム(最近はスプラトゥーン2)、お笑い、筋トレなど。
長所は人を楽しませることに一生懸命、短所は顔が丸い。