■評価:★★★☆☆3
「離れられない男女」

【映画】(r)adius/ラディウスのレビュー、批評、評価
2020年3月2日現在、コロナウイルスの関係で、人が密集している場所に恐怖を覚える人は多いだろう。
本作はある意味タイムリーだ。
まるで凶悪なウイルスに感染したかのように、自分に近づいた者すべての命を奪ってしまう主人公の物語となっている。
交通事故後に目を覚ましたリアムは、記憶を失っていた。助けを求めて近くに町に入るが、目にするのは住民の遺体ばかり。謎のウイルスか何かが蔓延している疑念に不安を覚える。ようやく生存者を見つけて近寄っても、目の前で命を落としてしまう。次第に、リアムの半径15メートル以内に近寄った者は皆、命を落とすという事実を知る。だが、リアムに近づいても何も起きない謎の女性ジェーンと出会う。ジェーンもまた記憶を失っており……。
残酷な能力を持っている主人公の物語なのでスリラーと思いきや、描いているのはラブストーリーだ。
主人公・リアムと、なぜか彼に近づいてもピンピンしているヒロイン・ジェーンの二人は記憶を失っている。
この不気味な能力の謎と、二人の記憶を探る目的のストーリーとなる。
第一印象としては、残酷版裏『君の名は。』。
なぜ『君の名は。』を連想したかというと、『君の名は。』は会いたくてもなかなか会えない主人公とヒロインのSFラブストーリー。
『(r)adius/ラディウス』は真逆で、二人が離れるとやっかいな事態になるという内容である。
二人は訳あって一緒にいることを強制させられるが、何かとトラブルがあって引き離されそうになる。(この訳は重要なネタバレの1つなので伏せておく)
感想としては思っていた以上に楽しめた。
設定が特殊なので死霊の盆踊りばりのB級的なしょーもないシナリオかなあと思っていたけど、割とまともだったのは良かった。
ただし、1つだけ大きな欠点がある。
この特殊能力を駆使した展開が見られないということ。
リアムに近づいた人は命を落としてしまうため、序盤から人のいないところ行く流れになる。
この展開が特殊能力設定を封じてしまっている。
なので「この能力じゃなくてもいいじゃん」と観客は思ってしまう。
ではなぜ、この特殊設定を制作陣はうまくさばけなかったのか?
ネタバレしない程度に考察をしてみる。
即死というのがポイントだと私は思う。
リアムに近づいた相手は即死してしまうので、駆け引きとして使えない能力となるのだ。
「20mくらい近づいたら相手が苦しみ、致死距離となる15m以内に近づくと命を落とす」
こういった設定にするば相手との駆け引きが可能になる。
「ほらほら、苦しいだろう? イヤなら情報よこしなさい」といった具合に。
こういった形で心理戦を描いていれば、この映画はもっと盛り上がっただろう。
だが即死にも描ける物事が存在する。
即死にすることで、リアムは人に自分の能力を説明することを難しくしている。
能力を証明しようにも、相手は即死してしまうからだ。
劇中では序盤からリアムは殺人容疑で警察に追われることになる。
自分に起こっている悲劇を口で説明するのは難しい。信じてもらえない。
だからといって適当な人間の命を奪うわけにはいかない。(この能力は動物には発動しない)
よって苦悩を強いられることになる。
恐らく脚本家はどちらを採用するかのジレンマに見舞われたのではないだろうか。
結局選択したのは後者となる。
しかし私は悪手だと思う。
即死にするとなると、救いようがないので人のいない場所へ行かなければいけない。
結果的に能力とは無縁の物語となる。
あとリアムには、人が密集しているエリアに行かなければいけない目的の話にした方が良かったと思う。
こうすることによって、「一体どうやって目的を達成できるのか」と考えながら、観客はワクワクしながら鑑賞できた。
この映画、シナリオをもっとしっかり作り込んだら、もっと面白くなっていたのではないだろうか。
(r)adius/ラディウスの作品情報
■監督:キャロライン・ラブリッシュ、 スティーブ・レオナール
■出演者:ディエゴ・クラテンホフ シャーロット・サリヴァン
■Wikipedia:(r)adius/ラディウス(英語)
■映画批評サイト「rotten tomatoes」によるスコア
TOMATOMETER(批評家):92%
AUDIENCE SCORE(観客):-
(r)adius/ラディウスを見れる配信サイト
U-NEXT:○(見放題)
Hulu:-
Amazonプライムビデオ:○(字幕・見放題)
TSUTAYA TV:○(見放題)
Netflix:-
※2020年3月現在
能力は動物にも有効じゃん
節穴なん?