■評価:★★★★☆4
「バイオレンス×ボーイミーツガール」

【映画】初恋のレビュー、批評、評価
先日、たまたまYOUTUBEの映画評論家の町山智浩さんと爆笑問題のラジオ動画を耳にした。
町山さんいわく、ハリウッドはこじんまりしたドラマ映画ではなく、常にイカれた映画を求めてるそう。
例えば日本でいうと片腕マシンガールみたいな。

というのも、こじんまりしたドラマ映画を撮る監督はすでにハリウッドにたくさん存在する。
彼らが作らないようムチャクチャな映画をアメリカ人は常に欲している。
ムチャクチャな映画を撮っていた監督がいても、いずれは丸くなってこじんまりした映画を作るようになる。
そうなるとハリウッドは、海外からイカれた監督を呼んでくるのだ。
だが、昨今の日本映画はハリウッドが求めるような映画が少なくて、人気は下火。
そんななかで三池監督作品だけはコンスタントに上映されるそう。
たまたまそんな話を聞いた直後に『初恋』を観たので多いに納得した。
この映画、ただ者じゃない。
実は『初恋』は、日本より先にアメリカで先行公開されていて、すでに好評価を博している。
欲望うずまく新宿・歌舞伎町。天涯孤独のプロボクサー・レオは稀有な才能の持ちながら、格下相手との試合でまさかのKO負けを喫する。試合後に行った病院の検査で脳腫瘍が発覚し、余命わずかの病に冒されている事実を告げられる。自暴自棄となったレオは街を徘徊していると、近くを駆け抜けた少女からの「助けて」という言葉に反応し、追っ手の男にパンチを食らわしてKOする。モニカと名乗る少女は父の借金の返済のため、ヤク漬けにされてヤクザから逃れられない状況だった。レオが倒した男は悪徳刑事・大伴で、ヤクザの策士・加瀬と裏で手を組み、ヤクザの資金源となるヤクの横取りを画策していた。そのためにモニカを利用しようとしていた。一度はモニカを置き去りにしようとするも、頼れる人間を持たないモニカに自分の境遇と重ね、レオは彼女を守る決意をする。一方で、モニカとともに消えたヤクを管理していた構成員・ヤスが遺体で見つかったことで、ヤスの恋人のジュリは怒り狂う。ジュリからヤスとヤクが消えた事実を知り、なおかつ加瀬の悪巧みによって敵対するチャイニーズ・マフィアの仕業だと勘違いしたヤクザ・権藤は復讐に乗り出す。一連の黒幕の黒幕と疑われたチャイニーズ・マフィアもまた、売られたケンカを買ってモニカとブツの行方を追う。欲望がぶつかりあう濃厚な一夜が幕を開けた。
初恋という可愛いらしいタイトルなのに、何とエキサイティングなこと。
血沸き肉躍るシーンの連続に、まるで少年のように興奮しながら楽しめた最高の一本である。
面白い点があまりに多すぎるのでまとめるのが難しいくらい。
そんな中でも特記すべきはキャラクターの魅力。
どのキャラクターも魅力が溢れに溢れていて最高にエンタメしている。
世間ではベッキーと染谷将太のキャラの評価が高いので、この場であえて語るまでもないだろう。
そもそもベッキーは14歳のころから芸能活動しており、若くからドラマ等で演技をしているベテラン役者だ。
なので今回の怪演はそんなに驚きはしなかったが、それでもキレっぷりがすさまじくて笑える。
個人的に好きだったのは中国マフィアの片腕の男・ワンが重々しいショットガンをぶっ放すシーン。
片腕×ショットガンってだけでこうもカッコ良くなるとは。
あとは中国マフィアという闇属性もいいスパイスとなっている。
ターミネーター2で見せてくれたシュワちゃんにすら匹敵する魅力的なキャラクター。
私は男なので、ついついこういった男臭いキャラに魅了される。(私はゲイではない)
あと、窪田正孝扮するレオの肉体美にもホレボレ。(ゲイではない)
窪田正孝はほんといい役者になったなあって思う。
ちょっと前までは頼りない好青年って感じだったのに、今では雰囲気のある立派な男である。
借金漬けおよびヤク漬けで、もはや男に股を開く行為に何も思わない小西桜子扮するモニカの虚無感も意外と良かった。
かろうじて見せる自己主張がヤクを求めるときのみ。
幻覚におびえる表情といい、何ともいえない儚さがあって良い。
脇役だけではなく、主演二人の存在感もあるので、素晴らしい脚本・演出である。
映画のジャケットを見ればわかるが、ちょっとキャラクターが渋滞を起こすほどに多い。
テンポの良さも相俟って、若干シナリオが込み入りがちではある。
だが、コメディ演出が多いし、基本的なシナリオ展開はシンプルなので、意外とストーリーは追いやすい。
この記事のあらすじを読んである程度ストーリーをイメージしておくと、本編は楽しみやすくなる。
ぜひ映画を観る前に確認しておいてもらいたい。
個人的に感心したのは、常にありきたりにならない鮮度の高い展開を見せてくれるところ。
モニカはクスリ漬けにされており、たびたび幻覚に襲われて怯える。
一緒に逃げるレオはそんな彼女を見かねて、とある音楽を聞かせてあげるのだ。
このシーンがアホ素晴らしい。
劇場は新型コロナウイルスのせいか観客は少なかったが、普段なら間違いなく笑いに包まれていたであろう面白シーンだった。
こういった、ちょっとしたユーモラスな展開が多いので、ここでもエンタメを感じさせてくれた。
バイオレンス描写も多々あるが、基本的にはコメディなので、女性も楽しみやすいだろう。
二人のキャラクターもちゃんと成長を遂げてくれるし、文句なしの傑作だ。
と、言いたいのだが不満点が1つだけ。
レオ&モニカ、悪徳刑事と悪巧みヤクザ、ヤクザ、チャイニーズマフィアと四つの勢力がぶつかり合う四つ巴の対立構造となる。
のわりに、スケール感が小さくまとまっていて少し物足りない。
物語のクライマックスを迎えたとき、「あ、ここが最終決戦なんだ」と思ってしまって少しさみしかった。
日本全体とまでは言わないが、東京が壊滅するくらいの危機くらいに膨れ上がってくれたら尚良かった。
たまたま今やってるゲームが『428~封鎖された渋谷で~』が、まさにその不満点をすべてクリアしているサウンドノベルゲームである。

サウンドノベルゲームは、効果音・BGM・映像効果が盛りこまれつつ、画面全体にテキストが表示されるゲームだ。
『428~封鎖された渋谷で~』は渋谷で発生した1つの誘拐事件を5人のキャラクターの視点で追う群像劇となっている。
最初はふつうの良くドラマや小説で見かける誘拐事件だが、物語が進むにつれて予想だにしない展開を迎える。
かなり評判のいいゲームなので関心があればぜひ。
話を映画に戻すが、『初恋』は一部不満点がありつつも、エンタメとして素晴らしい出来栄えとなっている。
コロナをブッ飛ばすようなフルスロットルのハイテンションっぷりを堪能してもらいたい。
初恋の作品情報
■監督:三池崇史
■出演者:窪田正孝 小西桜子 大森南朋 染谷将太 ベッキー
■Wikipedia:初恋
■映画批評サイト「rotten tomatoes」によるスコア
TOMATOMETER(批評家):97%
AUDIENCE SCORE(観客):88%
初恋を見れる配信サイト
U-NEXT:-
Hulu:-
Amazonプライムビデオ:-
TSUTAYA TV:-
Netflix:-
※2020年3月現在
内容的にはスーパーヒーローではなく難題に直面した凡人だと思います。
なんとなく生きてきてある日突然死を宣告された、裏社会とは無縁の『無垢な主人公』。
麻薬をめぐるヤクザと中華マフィアの抗争に巻き込まれる『突然の出来事』。
抗争の中心にいるモニカを救うための『生死をかけた戦い』。
主人公のレオはボクサーとして強いには強いですが無敵の強さといういう訳でもなくラッキーパンチで簡単に敗北しますし、強さゆえの苦悩という描写もありませんでしたし。