映画の海

約1100本の映画を鑑賞した小説家志望の男が、ネタバレなしで映画のレビューや解説を書いてます。(直近で観たものに限る。たまにアニメ・ドラマ・小説も)面白いおすすめ映画を探している人向けのブログ。

⑤人生の節目

映画『岬の兄弟』ネタバレなしの感想。足の悪くて働けない兄が障害者の妹へウリの斡旋を始める

投稿日:3月 8, 2020 更新日:

■評価:★★★★☆4

「彼らをさばく法律は正義なのか」

【映画】岬の兄弟のレビュー、批評、評価

2020年2月9日に開催された第92回アカデミー賞で、初のアジア圏で作品賞を含む4部門を受賞した『パラサイト 半地下の家族』。

日本でも大変話題となっており、今現在(3月8日)でも興行収入を伸ばし続けている。
日本においての韓国映画の興行収入歴代1位は30億円の『私の頭の中の消しゴム』。

パラサイトは2005年公開のこの映画を遥かにしのぎ、50億円も視野に入っている。(ただコロナの影響で低速気味。現状45億円いくかどうか)
モンスター映画、パラサイトの監督であるポン・ジュノが『岬の兄弟』をこう評している。

力強く美しい、ここまで大胆な作品が生まれるとは……
衝撃を受けたよ。
多くの論争を巻き起こす見事な傑作だ。
おめでとう。
慎三、君はなんてイカれた映画監督だ!

実は『岬の兄弟』の監督・片山慎三はポン・ジュノの「TOKYO!」「母なる証明」の元で助監督を経験している。
1年間、季節ごとの撮影を繰り返しながら、完成まで2年以上かけたこの作品は果たしてどんな内容なのか。

ある港町。たびたび失踪し、そのたびに探し回る自閉症の妹・真理子を持つ良夫は彼女と二人暮らし。ある日、再び失踪し、帰ってきた真理子は金銭を受け取って町の男と体の関係を持っていた。良夫はその事実を知り、真理子を叱りつける。だが、足をケガしてまともに仕事のできない良夫は罪の意識を持ちつつも、真理子へウリの斡旋をし始める。このような底辺の生活を続ける中で、今まで理解しようともせず、叱責や暴力で押さえつけていた真理子の喜びや悲しみに触れていく。

イカれたストーリー。
障害者の妹にウリをやらせるなんて設定、もし発想したとしても実際に作ろうとは思わない。
いくらなんでも倫理的にアウトである。

しかし、いざ作られるとなると観たくなるのが映画好きの性である。
実際に観てみると、思った通り以上に考えさせられるストーリーで驚かされた。

兄の良夫と妹の真理子は二人暮らし。
良夫の足が悪くて働けないこともあって、ひどい貧乏生活を送っている。
光熱費が払えなくて電気が止まるわ、腹を空かせてはティッシュを食べて「甘い」なんていう始末。
ティッシュに味を見出すレベルの最底辺の生活である。

そんな厳しい日々を送る中でコントロールの効かない真理子に振り回されるので、良夫は暴力を振るって彼女を抑え付ける。
良夫の心情をくみ取ったら、暴力すらも理解できてしまうレベルの絶望である。

だが、良夫が真理子にウリを斡旋し、生活費を得られるようになってからは、漆黒の生活から解放されて明るい毎日を送れるようになる。
この変化は実に印象的である。
やってる行為は社会悪でしかないのに、観客は彼らが金で飯や暖を取れるようになり、笑顔で毎日を過ごせるようになると嬉しく思えるのだ。

何なら真理子を買う男たちすらも明るくなっていくのは印象的だった。
妻に先立たれ、孤独な生活を強いられる老人。いじめられっ子の学生、小人症の男。
種類は違えど、同じく底辺で生きる彼らは障害者の真理子を買うほどに社会から見放されている。
純粋な真理子と体の関係を持つことで、彼らは確かに癒されていく。
ちなみに真理子の金額は1時間1万とかなり安め。
この金額も安さからも痛々しさが伝わってくる。

さらに印象的だったのが真理子は仕事に割と積極的な点。
つまり、性交を楽しんでいる。

実際に障害者のトラブルの上位には性問題があげられる。
障害があろうが人間なのだから、性欲はある当然だ。
性介助のボランティアをするNPO法人「ホワイトハンズ」なんていう組織も存在するほどである。
ぶっ飛んでいるように見える設定のストーリーだが、意外と社会派な要素が盛り込まれているので、自然と受け入れて観られる。

良夫と真理子のしていることは犯罪だ。
果たして彼らをさばく法律は正義なのか。

予想もつかない展開の連続でインディーズ映画の破天荒さを体感させられた一本。素晴らしかった。
障害や動物ものは感動ポルノになりがちなので、私は敬遠気味ではあった。
だが、本作の性を題材に問題提起をする見せ方には度肝を抜かされた。
大手には作りえないインディーズ映画ならではの熱量を感じれて大いに楽しめた。

兄弟、姉妹、姉弟、姉弟作品はコチラ。

■ブラインド(韓国版)

■百万円と苦虫女

岬の兄弟の作品情報

■監督:片山慎三
■出演者:道原良夫 道原真理子 溝口肇
■Wikipedia:岬の兄弟

岬の兄弟を見れる配信サイト

U-NEXT:○(有料)
Hulu:-
Amazonプライムビデオ:○(有料)
TSUTAYA TV:○(有料)
Netflix:-
※2020年3月現在

-⑤人生の節目

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名前:柴田
年齢:30代
小説家志望。
趣味は映画、読書、ゲーム(最近はスプラトゥーン2)、お笑い、筋トレなど。
長所は人を楽しませることに一生懸命、短所は顔が丸い。