映画の海

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⑨組織のなかで

映画『レ・ミゼラブル(2020)』ネタバレなしの感想。貧困層が住むパリ郊外の街を舞台に、格差の闇を暴く

投稿日:3月 18, 2020 更新日:

■評価:★★★☆☆3.5

「先進国であるフランス・パリの格差の闇を暴く」

【映画】レ・ミゼラブル(2020)のレビュー、批評、評価

本作は『メタルギア・ソリッドシリーズ』『デス・ストランディング』のゲームデザイナー・小島よしお、じゃなくて小島秀夫監督がツイッターで絶賛していて前から気になっていた映画。
SNSでも評判が良かったので、どんな内容なのか期待して見に行った。

余談だが、「最後に起こる民衆の反乱は革命にあらず。そこに希望はかけらもない」と小島秀夫はコメントしている。
本作のラ・ジリ監督はインタビューで「ラストシーンには希望を込めた」と語っている。
二人の発言が真逆すぎてちょっと笑ってしまった。

でも、小島監督が絶望に感じたのは私も納得である。
あのラストシーンはなかなか強烈なインパクトがあって、絶望にしか見えない。
恐らく、監督は尾を引かせるためにあのカットをラストに採用したのだろう。

本作を見たフランスのマクロン大統領は「映画に衝撃を受け、対策を講じるように閣僚に指示した」と語っている。
1本の映画が大統領を動かしたのだ。
結果的に絶望にも取れる映画が希望への橋渡しを達成した。
お見事である。

パリ郊外に位置するモンフェルメイユ。ヴィクトル・ユゴーの小説でミュージカルでもお馴染み「レ・ミゼラブル」の舞台でも有名なこの街は、いまや移民や低所得者が多く住む危険な犯罪地域になっていた。犯罪防止班として配属された警官ステファンは、仲間とともにパトロールをするうちに、複数のグループが緊張関係にある事実を察知する。ある日、少年イッサがサーカス団からライオンの子供を盗み出す。イッサの軽率な行動が、大きな騒動へと発展していく。

ファッション好きからすると、パリはオシャレな連中で溢れる華やかな街の印象が強い。
ルイ・ヴィトン、エルメス、カルティエ、シャネル、ディオール、イヴ・サンローラン、ジバンシーなど、誰もが知るこれらのファッションブランドはすべてフランス発である。

人は多面性を持つ生き物だ。
接する相手によって自然と見せる面を変える。
それは街も同じである。
オシャレな繁華街を持つパリを少し奥に進むと移民で溢れる貧困街が姿を見せる。

実は日本もこういった地域がある。
北部には繁華街があり、裕福な層が住む神奈川県川崎市は南部には工業地帯が広がっていて、貧困でひどい生活を送っている
リアルな川崎はルポ川崎という本で紹介しているので興味ばあればぜひ。

映画に話を戻すが、舞台となるモンフェルメイユは昔から工業地帯。
第2次大戦以降に動員されたアフリカの旧植民地からの移民者が住み着いている。
低所得者の集まるこの地域は暴力事件がよく発生し、ヤクの密売も頻繁に行われている。

郊外に住むというだけで雇用差別や偏見を受け続けた移民たちは2005年に暴動を起こす。
この事件は、後に大統領となる当時の内相サルコジが「社会のクズを片付ける」という発言に端を発している。

ラジ・リ監督は実際にこの街出身である。
黒人映画監督のスパイク・リーの『マルコムX』などを観て「黒人にも映画が作れる」という事実を知り、映画制作を志した経緯がある。

物語の序盤で少年がライオンの子供を盗むが、あれは実際にあった話である。
監督の友人が盗み、その時の記念に撮った写真には監督も映っている。

映画の内容は、割と良く見る対組織ストーリー。
身分の低い人間と権威との対立構造で描くストーリーラインとなる。
大袈裟に権威と表現しているが、身近に存在する。
グループという枠組みの中で、自分より地位が上の者を指す。

例えば子供からしたら親であり、社員であれ社長や会社に相当する。
大きなスケールでいうと貧困層vs富裕層、国民vs社会といった具合。

本作はあまりに雛型通りにストーリーが進む。
展開にひねりがまったくないのはちょっと物足りない。

対組織映画ではクライマックスに見せるカタルシスが見どころの大きな1つであり、本作もラストでかっ飛ばしてくれる。
見ていて爽快感はあったが、このストーリーであればもっとスケールを大きくしたほうが良かった。
何ならラストの舞台がちょっと微妙である。
貧困層の象徴としてあの場所を採用したのかもしれないが、結果的にはインパクトに欠ける。
このあたり、同じ対組織映画のジョーカーが上手くやっている。
ジョーカーを見た人はわかるだろう。クライマックスのスケールの大きさによる高揚感を。

この辺りで監督の処女作感が垣間見える。
『レ・ミゼラブル』はカンヌ国際映画祭で、最高賞となるパルムドーム賞をあの『パラサイト 半地下の家族』と争った。
結果的にパラサイトが受賞するのだが、さすがにベテランであるポン・ジュノの練達さには遠く及ばない。

奇しくもパラサイトも貧困層と富裕層の構図の対組織映画。
パラサイトは中盤で素晴らしいひねりを見せてくれて、先の展開がまったく予想できなかった。
魅力的なキャラクターも多数登場してくれたパラサイトに対し、レ・ミゼラブルは印象的なキャラクターは皆無である。

ちょっと期待値が上がりすぎてしまったせいか、そこまで満足度は高くなかった。
でも良い映画ではある。
パリにより強い関心を持てた興味深い題材。
これを機にミュージカルの『レ・ミゼラブル』も鑑賞してみたいところ。

私が特に良いと思ったは、立ち上がる人間が子供だということ。
『レ・ミゼラブル』では大人のしわ寄せを受けた子供たちが権威である大人に立ち向かう。
社会にとって子供は未来・希望である。
子供が移した行動にその社会の現状が映される。

余談だが、来週も組織と戦う下剋上映画を見に行く予定である。
タイトルは『ナイチンゲール』。
イギリス植民地時代のオーストラリアが舞台で、夫と子供の命を将校に奪われた女囚の復讐の物語である。
これも小島監督のおすすめ作品。

やっぱり子供とか社会的に立場の弱い女性が立ち上がる物語は惹かれる。

下克上映画(対組織)はコチラ。

■パラサイト 半地下の家族

■ジョーカー

■小さな恋のうた

■バッド・ジーニアス 危険な天才たち

レ・ミゼラブ(2020)ルの作品情報

■監督:ラジ・リ
■出演者:ダミアン・ボナール アレクシス・マネンティ ジェブリル・ゾンガ
■Wikipedia:レ・ミゼラブル(英語)
■映画批評サイト「rotten tomatoes」によるスコア
TOMATOMETER(批評家):84%
AUDIENCE SCORE(観客):88%

レ・ミゼラブル(2020)を見れる配信サイト

U-NEXT:-
Hulu:-
Amazonプライムビデオ:-
TSUTAYA TV:-
Netflix:-
※2020年3月現在

-⑨組織のなかで

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名前:柴田
年齢:30代
小説家志望。
趣味は映画、読書、ゲーム(最近はスプラトゥーン2)、お笑い、筋トレなど。
長所は人を楽しませることに一生懸命、短所は顔が丸い。