■評価:★★☆☆☆2.5
「父性」

【映画】アマンダと僕のレビュー、批評、評価
オッサン×少女コンビの物語は古くから存在する。
日本人が一番鑑賞経験のあるオッサン×少女コンビといったら間違いなく『紅の豚』だろう。

少女に該当するフィオの登場は若干遅めではあるが、この二人の組み合わせは非常に滑稽で温かみがあってステキだ。
書きながら観たくなってきた。
他にも『レオン』『銀河鉄道999』など、妙に世間から好まれる組み合わせの印象がある。
『アマンダと僕』は年の差コンビ作品群の中でもかなりリアル寄りなストーリーになっている。
フランスのパリで、青年ダヴィッドは便利屋として働いていた。近所に越してきたレナと知り合って恋に落ちたりと、穏やかな幸せの日々を満喫していた。ある日、突然に訪れたテロに巻き込まれた姉が命を落とす。悲しみに暮れたダヴィットは、残された姪アマンダの世話を引き受ける。親代わりのように接するが、若いダヴィットには荷が重い責務だった。アマンダもまた、唐突に母を失った現実を受け止めきれずにいた。
冒頭からのどかな人間模様・空気感がすごくいい。
ハリウッド映画にありがちなガチャガチャしたテンションや展開はなく、凪のようにゆっくり流れる時間の中でキャラクターが描かれる。
いかにもフランス映画を観ているといった具合だ。
こうした穏やかな世界感の中で発生する最初の事件には驚かされる。
何の前触れもなく、突然、姉が銃乱射事件に巻き込まれて命を落とす。
世界観の噛み合わせ的にどうなんだ、と突っ込みたくなるが、導入部分ではあるのでスルーして見続けた。
本作のテーマは、叔父であるダヴィッドが姪とのアマンダを通じて成長する物語。
『そして、父になる』の角度を変えたアプローチといってもいい。

叔父といってもダヴィッドは20代前半~半ばといった見た目で、精神的にはまだ未成熟。
なのでダヴィッドはアマンダを養子にする決意を持てずにいる。
ダヴィッドはアマンダとの生活の中で、彼女のさまざまな感情に触れていく。
ピアノを楽しんだり、ウサギと戯れたり、あるいは急に甘えて駄々をこねたり、姉を思い出して唐突に怒ったり。
姉が命を落として間もないのでアマンダの情緒も不安定なのだ。
本作は『アマンダと僕』というタイトルの通り、僕=ダヴィッドが主人公となる。
なのでアマンダというより、ダヴィッドがどのような経緯で成長していくのかを見守る物語だ。
だが、本作はとにかく静謐である。
最後まで観て「なぜダヴィッドが成長するのか」がわからない。
彼の心の機微を汲み取るのはちょっと難しい。
良い言い方をすれば上品な味わいである。
描かれるテーマはありふれているので新鮮さも少ない。
オッサンと少女の組み合わせで描かれるテーマのほとんどが父性や親子愛辺り。
物語としては凡庸である。(レオンのような恋愛要素もある特殊ケースもあり。レオンは監督がロリコンであるため)
アマンダがやけにぽっちゃりしていて、姪っ子としてはリアルなのが良い。
私にもぽっちゃりの銘がいるので、親近感を持って観れた。
サイドストーリーとして恋愛対象となるレナがいる。
この二人の関係性の描き方がちょっと雑なのも気になる。
二人の距離が縮むほどのエピソードが描かれてにいないのに、やたら距離が近くなるのは理解しがたい。
あと一つ気になったのが、レナがやたらとダヴィッドの面倒を見ようとする思考で接していた。
「私にはあなたの面倒を見られる自信がないわ」といった発言が何回か見られた。
これはフランスの国民性なのだろうか。
本編とは関係ないが、フランス人女性の内面に関心が沸いた。
不満点も多いが良い物語ではある。
フランス映画らしい穏やかな空気感に浸りたいのであれば、本作を手に取るのはあり。
オッサン×少女のコンビ作品はコチラ。
■バジュランギおじさんと、小さな迷子
■gifted/ギフテッド
アマンダと僕の作品情報
■監督:ミカエル・アース
■出演者:ヴァンサン・ラコスト イゾール・ミュルトリエ ステイシー・マーティン
■Wikipedia:アマンダと僕(英語)
■映画批評サイト「rotten tomatoes」によるスコア
TOMATOMETER(批評家):100%
AUDIENCE SCORE(観客):74%
アマンダと僕を見れる配信サイト
U-NEXT:○(有料)
Hulu:-
Amazonプライムビデオ:○(字幕・有料)
TSUTAYA TV:○(有料)
Netflix:-
※2020年3月現在