映画の海

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②金の羊毛

TVアニメ『鬼滅の刃』ネタバレなしの感想。鬼に家族の命を奪われ、唯一生き残った鬼と化した妹を人に戻す旅に出る

投稿日:3月 30, 2020 更新日:

■評価:★★★☆☆3

「家族愛」

【映画】鬼滅の刃のレビュー、批評、評価

1997年から週刊少年ジャンプに連載されている『ONE PIECE』は、漫画の世界では絶対王者として君臨し、コミック本の売り上げは11年連続首位をキープしている。
2019年秋、王者が築いた牙城を崩す刺客が突如として姿を現す。

2016年から同じく週刊少年ジャンプにて連載が始まった『鬼滅の刃』だ。
2019年10月末の時点で、鬼滅の刃はなんとONE PIECEの単行本の売り上げを一時的に抜いてしまったのだ。
当時の漫画売上一覧はこんな感じ。

1位 鬼滅の刃 999万
2位 ONE PIECE 977万
3位 キングダム 751万
4位 約束のネバーランドバ 728万
5位 五等分の花嫁 535万
6位 僕のヒーローアカデミア 451万
7位 進撃の巨人 436万
8位 かぐや様は告らせたい 365万
9位 ハイキュー!! 360万
10位 転生したらスライムだった件 307万

最終的には12月にワンピースの最新刊95巻が発売され、ONE PIECEのコミックスの2019年年間累計売り上げは推定1270万部に。
鬼滅の刃は1080万部となり、2位に留まった。
絶対王者であるワンピースに一時的とはいえ、売り上げで勝ったのは激震である。

私は最近、すっかりTVアニメや漫画からは遠のいてしまったが、ここまで異様なヒットを記録されたらスルーするほうがどうかしてる。
コミックスの売り上げに貢献し、クオリティの高いと評判のアニメ版を鑑賞してみた。

時は大正。竈門炭治郎は亡き父親の跡を継ぎ、炭焼きをして家族の暮らしを支えていた。ある日、炭治郎が家を空けた隙に、家族は鬼に襲われ、命を奪われる。唯一生き残った妹・禰豆子も鬼へと変貌を遂げてしまう。禰豆子に襲われた炭治郎を救ったのは、冨岡義勇と名乗る剣士。義勇は禰豆子を退治しようとするが、わずかに残った兄弟の絆を確認し、剣を鞘に収めた。義勇の導きによって炭治郎は「育手」鱗滝左近次と出会う。禰豆子を人間に戻すため、左近次から鬼を討伐する剣術の修行を受ける。

アニメ版の12~3話くらいまで観た感想としては、良くも悪くも王道。
序盤、最愛の妹・禰豆子が鬼になる展開には思わず引き込まれた。
相思相愛の関係だった者が、自分に牙を剥く。
これほど辛い展開はない。

実質的に家族全員を奪われてしまった炭治郎だが、常に前向きなのだ。
妹を人間に戻す希望を掲げて、凶悪な鬼たちの祖である鬼舞辻無惨を目指して旅をする。
少年ジャンプ漫画らしい、勇気を持ち努力を怠らない光輝く主人公である。

同じく少年ジャンプ漫画『HUNTER×HUNTER』『幽遊白書』の作者・冨樫義博が鬼滅の刃4巻にこんな帯を寄せている。

(希望:絶望)≒(増悪:愛情)
私が好きになる作品の黄金比率です。これは…大好きです。

私にとって、HUNTER×HUNTERは世界一面白い漫画である。
世界一売れている漫画ではなく、世界一面白い漫画という意味。
ストーリー、キャラクター、世界観、すべてが桁外れに魅力的で、頭一つ飛びぬけた存在感を誇っている。

私は一時期、冨樫が書いた帯の言葉の意味を必死に考えていた。
私も物語を書く人間なので、面白い物語を書くヒントになると思ったからだ。
色々考えた結果、こういう意味だろうと結論付けた。

希望:絶望=報酬などの希望を宿す場所が絶望に満ちている。
増悪:愛情=相思相愛の存在(恋人・友人・家族等)が主人公に増悪を持つ。

この2つの要素のどちらか、あるいは両方を動機等で持つ物語は惹きつける力が強い、という意味だと認識している。
概ね合っているとは思うのだが、もし正解を知っている人がいたら教えてほしい。
鬼滅の刃では希望:絶望と増悪:愛情の2つの要素が含まれており、多くの読者を虜にした理由の1つである。

12~3話くらいまで観たとの冒頭で言ったが、正確には脱落した。
アニメ版は2020年3月の時点で全26話放送されている。
続編はこの先も制作される予定である。

脱落した1番の理由はバトルが物足りなさにある。
炭治郎は鬼と戦うたびに、いつ身につけたのか良くわからない必殺技を叫んで刀を振るう。
バトル表現があまりに旧時代的である。

せめてどういう経緯で、どんな目的でその技を会得したのかを描いてもらいたい。
技を会得するための修行シーンを見せてくれると、修行シーンが前振りとなって、いざ迎えた鬼との戦いでは「いつ必殺技を発動してくれるんだ」と読者が考えながら手汗を握って観られるのだ。
だが、何の前振りもなく唐突に必殺技を出して鬼を退治したとして、結果的に爽快感には繋がらない。

12~3話付近では、鼓を鳴らして屋敷の天地を反転させる能力を持つ鬼とのバトルだ。
このバトルは退屈な上にとにかく冗長だったため、続きを見るのを止めてしまった。
鬼滅の刃はが無駄に長いバトルが多いも気になる。

そもそもHUNTER×HUNTER(1998年~連載中)が漫画としてのバトル表現のレベルを格段に上げてしまっている。
HUNTER×HUNTERは、主人公らが1つの必殺技を生み出す目的をも描く。
つまり、「なぜこの必殺技を生み出すのか」が描かれているのだ。
必殺技を開発し、洗練化させる修行シーンも描かれたりする。
その修行方法も大概がユニークで面白い。

さらに、HUNTER×HUNTERでは1つ1つの必殺技に長所や短所(リスク)が存在する。
長所を生かし、短所を補うために複数人で行動したりする。
あるいは最初から複数人で発動させる必殺技も存在する。

HUNTER×HUNTERは短期戦も多く、重要そうな戦いを瞬殺で終わらせるケースも多い。
仮に長期戦の場合も相応の理由がある。
HUNTER×HUNTERのような濃密な闘いを一度でも味わってしまうと、鬼滅の刃のような単純に相手の弱点を探るだけのバトルでは物足りなくなる。

ただ、あまりに心理戦や技、戦略の緻密な攻防戦は人を選ぶのだろう。
HUNTER×HUNTERは万人受けするタイプの漫画ではないので、苦手な人もいる。
そう考えると、同じく少年ジャンプのダークファンタジー漫画『デスノート』が異様なヒットを記録して流行ったのは謎な部分もある。
デスノートは心理戦が緻密な上に、主人公は悪人である。

恐らくだが、デスノートが流行った一つの理由に、絵が異常に美しい点が挙げられる。
絵を担当する小畑健は圧倒的な作画力の高さには定評がある。
さらにノートに人の名前を書いたら命を奪える、というシンプルな設定が人を惹き付けたのだろう。

鬼滅に話を戻すが、鬼についての謎をもっと増やしていいと思う。
例えば『進撃の巨人』は、巨人、および巨人関連の謎がとても多く、序盤から無数の伏線が張られる。
進撃の巨人は謎の1つ1つが魅力的なので、新刊が出ればむさぼるように読みふける。
だが鬼滅は鬼に関しての伏線は少な目。

割と早い段階で、大ボス・無惨が姿を見せる展開は良かった。
無惨のデザインも良くて、観ていて引き込まれる回だった。

鬼滅の刃くらいのシンプルな漫画のほうが万人受けする。
昔は読みやすかったワンピースは絵も複雑になってきて読みづらくなっている昨今、売上が鬼滅に逆転されたのも納得である。
少年漫画として良い意味で妥当なシナリオなのだろう。
鬼滅の刃は非公表だが女性作家らしいのでマイルドな作風だし、女性の感性にも響きやすいのかもしれない。

バトルやシナリオが面白い少年漫画・アニメ作品はコチラ。

■HUNTER×HUNTER

■進撃の巨人

■メイドインアビス(絵は少年向きだが、中身はR-50指定くらいの胸糞っぷり。近いうちにレビューします)

鬼滅の刃の作品情報

■監督:外崎春雄
■出演者:花江夏樹 鬼頭明里 下野紘
■Wikipedia:鬼滅の刃

鬼滅の刃を見れる配信サイト

U-NEXT:○(2020年4月07日まで見放題)
Hulu:○(見放題)
Amazonプライムビデオ:○(2020年4月07日まで見放題)、原作漫画はコチラ
TSUTAYA TV:○(見放題)
Netflix:○(見放題)
※2020年3月現在

-②金の羊毛

執筆者:


  1. んなあ~ より:

    金の羊毛ではなく難題に直面した凡人だと思います。
    金の羊毛は目的とする何かを目指す課程で自分にとって大切な、目的だったものとは別の何かを手に入れるという物語のことです。
    炭治郎の目的は無惨を倒すことですが、炭治郎にとって大切なものは最初から一貫して禰豆子であり、物語の課程でそれ以上に大切な別の何かを手に入れてはいません。
    鬼滅の刃は
    炭焼きとして生きる中で鬼の存在も知らず戦ったことすらない『無垢な主人公』
    無惨に家族を殺され妹が鬼にされる『突然の出来事』
    禰豆子を人間に戻すために、ひいては人間に仇なす鬼を駆逐するための『生死をかけた戦い』
    これらを満たす、難題に直面した凡人の物語だと思います。

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名前:柴田
年齢:30代
小説家志望。
趣味は映画、読書、ゲーム(最近はスプラトゥーン2)、お笑い、筋トレなど。
長所は人を楽しませることに一生懸命、短所は顔が丸い。