映画の海

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②金の羊毛

TVアニメ・漫画『メイドインアビス』ネタバレなしの感想。未知の巨大な縦穴”アビス”を探窟する

投稿日:4月 1, 2020 更新日:

■評価:★★★★☆4.5

「夢を追い求める人」

【TVアニメ・漫画】メイドインアビスのレビュー、批評、評価

1997年から週刊少年ジャンプで連載している『HUNTER×HUNTER』という漫画は人知を超えたレベルの面白さを誇る。

魅惑的な謎に溢れた未知への冒険のワクワク感・緊迫感を極限まで突き詰めた内容。
新刊が出るとあまりに世界に入り込みすぎて、他のことが手につかなくなる。
そのくらい世界観に突き抜けたオリジナリティが宿っているのだ。
あの登録者数160万人を超えるYOUTUBER『ほんだのばいく』すらもすっぴんで大絶賛する漫画である。

何年か前、週刊少年ジャンプはHUNTER×HUNTERという最強の漫画の教科書がありながら、なぜ売上が低迷しているんだろうと疑問に思っていた。
そんなとき、宝島社が年一で刊行するムック本『このマンガがすごい!』2018年版で一位となった『約束のネバーランド』を読んでとても興奮したもの。
HUNTER×HUNTERの影響を色濃く感じる漫画がようやく現れたからだ。

先日観た漫画原作のTVアニメ『メイドインアビス』もその一つ。
久しぶりに世界観に入り込みすぎて、メイドインアビスで頭がいっぱいになった。
ぜひとも『ほんだのばいく』にも読んでもらいたい。

だが、メイドインアビスは約束のネバーランドと同じ『このマンガがすごい!』2018年版で13位である。
とてつもない面白さを誇る本作がなぜ中途半端な順位なのか。
明確な理由についても後述していきたい。

人類最後の秘境と呼ばれる、直径約1000メートルの巨大な縦穴”アビス”。アビスには奇妙奇怪な生物たちが生息し、人類の科学では到底作りえない貴重な”遺物”が多数眠っていた。アビスの不可思議に満ちた姿は人々を魅了し、冒険へと駆り立てた。アビスの縁に築かれた街『オース』に暮らす孤児のリコは、いつか母ライザのような偉大な探窟家になる未来を夢見ていた。ある日、リコは探窟中に少年の姿をした謎のロボットと出会う。

面白すぎる。
だが、思った以上に壮絶なストーリーで悲しくなる。
TVアニメの最終話はあまりに感情移入しすぎて、水車が回るほどに涙が溢れた。

印象としては『HUNTER×HUNTER』と『魔法少女まどか☆マギカ』が合わさった感じ。
『魔法少女まどか☆マギカ』は願いを叶えた代償として「魔法少女」となり、人類の敵と戦うことになった少女たちの過酷な運命を描くストーリー。
『HUNTER×HUNTER』のワクワクする冒険感と、かわいらしい萌え絵で残虐な展開を描くまどマギ感。

普段、私はテレビアニメを一切見ない。
年を重ねるにつれてテーマを追及するシナリオに価値を感じるようになり、小説や映画を手に取りがち。

それでも『メイドインアビス』を観る気になった一番の理由はあらすじにある。
男ってのはバカなもので、何歳になっても『命を甦らせる魔法』とか『時を止めるアイテム』などにはワクワクさせられる。(私が子供なだけかも)
アビスには男の夢を叶えるアイテム(遺物)が大量に眠っているのだ。
『メイドインアビス』のアビスへの冒険、というあらすじにとてつもなく惹かれてしまった。

アニメ・漫画の序盤では、現在判明しているアビスの全貌が明かされる。
それがコチラ。

深界一層 : アビスの淵、深度0mから1350m
深界二層 : 誘いの森、深度1350mから2600m
深界三層 : 大断層、深度2600mから7000m
深界四層 : 巨人の盃、深度7000mから12000m
深界五層 : なきがらの海、深度12000mから13000m
深界六層 : 還らずの都、深度13000mから15500m
深界七層 : 最果ての渦、深度15500m以深。詳細不明。
深界極点 : 奈落の底、深度20000m以深。詳細不明

こんな地図を見せられたらワクワクが止まらない。
男の憧れを止めるのは不可能である。

アビスに眠る遺物のカタログ(遺物図鑑)が存在し、その一部がアニメ・漫画でも確認できる。
時を止める鐘、決して切れない糸、命を延ばす酒、水を生む盃。

遺物にはランクがあり、四級遺物から特級遺物まである。
特級遺物を1つでもゲットできたら、街一つが潤うほどを富を得られるのだ。
そりゃそうだ。
命を延ばす酒なんて、セレブたちがこぞって大金を持ち寄って獲得にかかるだろう。

ちなみに特級遺物でもない未だ未確認の遺物を奈落の至宝(オーバード)と呼ぶ。
本作では主人公のリコの相棒、レグが奈落の至宝という扱いになっている。
いまだレグの正体は不明である。

より貴重な遺物は、より深層に潜らないと手に入らない。
だが、深層に潜るというのは命を天秤にかけるリスクを意味する。

大きなリスクや代償が伴うからこそ、冒険のしがいがあるというもの。
代償と報酬のせめぎ合いに胸が躍るのだ。
「自分だったらどうする?」とついつい視聴者は考えながら楽しんで観ててしまう。

ではどんな危険がアビス内には待っているのか。
深層に潜るにつれて危険で未確認の生き物が多数存在する。

生き物以上に危険なのが『上昇負荷』である。
アビスは潜るのは何の問題もない。
帰路が危険なのだ。

深界一層辺りであればめまいや吐き気程度で済むのだが、深層に進むにつれて命に関わる負荷がかかる。
上昇負荷の詳細は以下の通り。

深界一層:軽い目まいと吐き気
深界二層:重い吐き気と頭痛、末端の痺れ
深界三層:平衡感覚に異常をきたし、幻覚や幻聴を見る
深界四層:全身に走る激痛と、穴という穴からの流血
深界五層:全感覚の喪失と、それに伴う意識混濁、自傷行為
深界六層:人間性の喪失もしくは死
深界七層:確実な死
奈落の底:詳細不明

上昇負荷を作品内では『アビスの呪い』と呼ぶ。
誰でも自由にアビスを探索すると、アビスの呪いによって大量の人間が命を落とす。

よって、探窟には制限が掛けられている。
探窟の熟練度によって見合った笛が与えられるのだ。

深界一層の探査可能な”見習い”の赤笛
深界二層まで可能な”一人前”の蒼笛
深界四層まで可能な”師範代”の月笛
深界五層まで可能な”達人”の黒笛
深度制限のない”伝説級英雄”の白笛

主人公のリコは少女でまだ経験値が浅いため、赤笛となる。
序盤で明かされる白笛はわずか5人。
リコの母ライザもその1人に含まれる。

現在では、生きて帰れる限界は深界五層である。(一部例外あり)
よって六層へ向かうことを絶界行(ラストダイブ)と呼ばれる。
リコの母は絶界行中で行方不明。
実質、命を落とした扱いとされている。

物語冒頭でリコは母を探すため、孤児院の先生を出し抜いてロボット少年のレグと共にアビスに入る。つまり奈落の底を目指すのだ。
二度と戻れない冒険。
こんなワクワクする展開の漫画は他にあるだろうか。

メイドインアビスが与えてくれるワクワク感は『HUNTER×HUNTER』に似通う。
『HUNTER×HUNTER』は冒頭で、主人公ゴンがハンター試験に参加する。
年に一度開催されるハンター試験に合格するとプロの証としてハンターライセンスが手に入る。

ハンターライセンスを手に入れた者は各種交通機関・公共機関のほとんどを無料で利用できる。
ほとんどの国はフリーパスで入国できる。
ライセンスカードを売るだけで7代は遊んでくらせるほどの金が手に入るなどの貴重な代物なのだ。

ただし、ハンター試験は数百万分の一の難関。
試験数は毎年不明。
試験官はプロハンターが担当しており、試験官によって変わるため。
平均は5~6程度。

試験期間も開催年によってまちまち。
1週間で終わる回もあれば1カ月かかる回もある。
そもそも試験会場すらも受験者には通知されず、会場に到達できる人間ですら一握り。
試験は死傷者が頻出し、過酷を極める。

主人公ゴンが参加する、第287期試験の第一次試験は無限マラソン。
二次試験会場までたどり着くことができれば合格となる。
ただし、どのくらい走るかは不明。
先頭を走る試験官に置いていかれないように食らいついて行く必要がある。

現在連載中の暗黒大陸編も非常に素晴らしいワクワクを与えてくれている。
だが、今は道中の船の中で壮絶なバトルが繰り広げられていて、連載は1年以上休止している。
はたして作者の冨樫が生きているうちに書いてくれるのだろうか。

話を戻すがアビスは報酬と代償のバランスを絶妙に設定している。
『HUNTER×HUNTER』にも顕著に見られる特徴の一つ。

さらに主人公リコが命懸けで奈落の底を目指す動機は母の捜索。
『HUNTER×HUNTER』の主人公ゴンも、現在行方不明の凄腕プロハンターの父を追って、命懸けでハンター試験を受けるのだ。

調べてみたら、インタビューでつくしあきひとは『HUNTER×HUNTER』からの影響について語っている。
遺物が持つメリットデメリットや『HUNTER×HUNTER』の概念である念能力、漢字にカタカナでルビが振っているのがクールに見えて、遺物にもルビを振っているとのこと。
記事はコチラ。

メイドインアビスは魅力的なキャラクターで溢れている。
特にナナチ。
TVアニメでは後半辺りで現れる人型の獣化したキャラクターである。
声も特徴的でかわいいし、モフモフの体も良い。
何よりも好きになってしまう一番の理由は、見た目や声からは想像できないほどに壮絶な過去を持つ。

この箇所は完全にネタバレなので伏せておく。
いままで観てきた物語の中でも、ナナチが経験した過去の回想エピソードは忘れがたい1つとなった。

主人公のリコもどんな大変な場面に遭遇しようとも、ポジティブ思考が揺るがないのもいい。
思わず観ているこちらまで明るい気持ちになれる。
物語が進み、深層に進むにつれて壮絶シーンの頻出に気分が悪くなってくる。
それでも前向きなキャラクターが多いので、視聴者や読者は何とか持ちこたえられる。

やっぱりメイドインアビスの一番の魅力は世界観だ。
設定がとにかく細かい。
動植物や言語、遺物まで徹底して作り込んでいる。
細かい設定の積み重ねが魅力的な世界観を構築している。

原作者のつくしあきひとは、葉っぱの一枚一枚がどうなっているかまで注意して書いているという。
緻密に細かく考えて書いていかないと話が薄くなるため。

TVアニメはかなり中途半端に終わる。
アビスで言うところの深海4層まで。
大量に謎が残っている状態。

2020年1月17日より公開の『劇場版 メイドインアビス 深き魂の黎明』がTVアニメの続編となる。
今現在4月1日ではほとんど公開は終了していて、ソフト化もまだいつになるか不明である。
そのため私は我慢できずに漫画を読むことにした。

ネタバレしないように言える範囲でいうと、アニメ以上に壮絶だった。
まさかアニメを越えるほどに凶悪なエピソードが展開されるとは思っていなかったので想定外だった。
とにかくボンドルドがやばい。
ボンドルドはナナチと深い関わりのある白笛の一人。

『劇場版 メイドインアビス 深き魂の黎明』は主に主人公らとボンドルドとの対立エピソードがメインとなる。
R-15指定がかかっているみたいだが、当然である。
ヒューマニズムを踏みにじる凶悪っぷりは吐き気を催すほど。
ボンドルドが開発したカートリッジが最たるである。
カートリッジの詳細は伏せるので漫画、および映画で確認してもらいたい。

『このマンガがすごい!』2018年版で13位の理由はここにある。
あまりに内容が壮絶すぎて人を選ぶ。
女性にはまず勧められない。(ロリ描写がたまにあるのも含む)

ここまで気分が悪くなったのはホステルや八仙飯店之人肉饅頭を観た以来。
理由は動機にある。
ボンドルドの悪の所業に対して、動機の重さが釣り合っていないので胸糞感が強いのだ。
もし世界を救うなどといった正義感の強い大義名分があるのなら話は別になるのだが。

でも、どこか神々しさをも感じる。
最悪だし、胸糞。なのになぜなのか。

理由については岡田斗司夫が詳しく解説している。
ぜひとも漫画の4巻以降、および映画を観た人には岡田斗司夫の解説動画を観てもらいたい。

間違いなく後世に名を語り継がれる名悪役の一人。
つくしあきひとがボンドルドを生み出した功績は大きい。

漫画とアニメの違いについても触れたい。
漫画のほうがわかりやすい箇所は多い。
例えば遺物。

上記にも触れたが、すべての遺物が漢字表記のカタカナルビで表現されている。
アニメではルビで発音されるのだが、漢字表記を確認しないと遺物の効果がわからない。
例えば、時を止める鐘(アンハードベル)、決して切れない糸(スタースレッド)、命を延ばす酒(ディプシーイオン)。

原作漫画を読んで、より強く遺物の魅力が伝わってきた。

漫画だとバトル描写があまり上手ではない。
つくしあきひとはイラスト出身の人なので、アクションシーンは苦手なのではないだろうか。

背景も鉛筆で書きなぐったような感じで、そこまで凝っていないので見づらい。
だが、世界観が緻密に作られているので関係なく面白い。

漫画家YOUTUBERがつくしあきひとにインタビューしていたので貼っておく。
かなり興味深いし、変態エピソードには笑わさせられる。

■1本目

■2本目

■3本目

インタビューを見たらわかるのだが、つくしあきひとは相当な変人だ。
AMAZONのつくしあきひとの作者説明はこんな感じ。

相模原市立鶴の台小学校在学中、スケベ本を団地のガスメーターに隠し保存。
団地建て替えによりそれらを失い、しばらく路頭に迷う。
シリアスな絵しか描けなかったため、好みのスケベ絵を生み出すことができず悩む。
立花学園高等学校在学中にかわいいイラストの描き方を教わり、方向性を確立。
2012年より『メイドインアビス』連載。

【現時点で回収されていない伏線一覧】
・お祈りガイコツは、なぜ合掌をしている?
・レグはなぜリコを助けた?何者?ライザが七層付近で見かけた謎の人影はレグ?
・ライザはリコを孕んだ大事な体でありながら、深層四階まで潜ることになった。国からの特命により。目的は?
・ライザが持つ白笛の遺物はどんな効果?
・ライザが残した封書のメッセージ「奈落の底で待つ」とは誰が書いた?誰が待つ?
・十年前にラストダイブをしたライザは生きているのか?
・オーゼンが深層に時を止める鐘と共に置いてきたあの子とは誰?
・深海七層で白笛が見た不思議な輪とは?
・奈落の底に至る道に住む門番とは?

HUNTER×HUNTERの影響下が色濃い、冒険のワクワク感が堪能できる作品はコチラ。

■約束のネバーランド

メイドインアビスの作品情報

■監督:小島正幸
■出演者:リコ(富田美憂)、レグ(伊瀬茉莉也)、ナナチ(井澤詩織)、ライザ(坂本真綾)、オーゼン(大原さやか)、ボンドルド(森川智之)
■Wikipedia:メイドインアビス

メイドインアビスを見れる配信サイト

U-NEXT:○(見放題)
Hulu:○(見放題)
Amazonプライムビデオ:○(見放題)、原作漫画はコチラ
TSUTAYA TV:-
Netflix:○(見放題)
※2020年4月現在

-②金の羊毛

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名前:柴田
年齢:30代
小説家志望。
趣味は映画、読書、ゲーム(最近はスプラトゥーン2)、お笑い、筋トレなど。
長所は人を楽しませることに一生懸命、短所は顔が丸い。