映画の海

約1100本の映画を鑑賞した小説家志望の男が、ネタバレなしで映画のレビューや解説を書いてます。(直近で観たものに限る。たまにアニメ・ドラマ・小説も)面白いおすすめ映画を探している人向けのブログ。

⑤人生の節目

映画『きみと、波にのれたら』ネタバレなしの感想。最愛の恋人を失った女性の再生を描く

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■評価:★★☆☆☆2

「自立」

【映画】きみと、波にのれたらのレビュー、批評、評価

本作は『夜は短し歩けよ乙女』で第41回日本アカデミー賞最優秀アニメーション作品賞を受賞した湯浅政明監督の最新作となる。
『夜は短し歩けよ乙女』は森見登美彦原作小説のアニメ映画。

森見登美彦といったら、このブログでは『ペンギン・ハイウェイ』を記事にしている。

『ペンギン・ハイウェイ』も同じく、森見登美彦原作小説のアニメ映画。
回収されない伏線が多く存在したまま幕を閉じる難解な内容だった。
魅力的なキャラが多く登場して、ストーリーは非常に独特。
森見登美彦作品だと『四畳半神話大系』の原作本を読んでいるが、やはり特異な世界観を展開していた。

湯浅政明は童話のような揺れた線や、斜めに傾いたパースなどを駆使したオリジナリティあふれる映像を特徴としている。
『四畳半神話大系』もアニメ化されていて湯浅政明が監督している。
森見登美彦作品との親和性の高さから、彼の原作を多く手掛けているのだろう。(ペンギン・ハイウェイは別の監督)

『きみと、波にのれたら』はオリジナル脚本の作品となる。

向水ひな子は幼少期に過ごした海辺の町にある大学に進学し、一人暮らしを始める。サーフィンが好きなひな子は自宅近くの海岸で毎日のように波乗りを楽しんでいた。ある日、ひな子のマンションで火災が発生する。逃げ遅れたひな子は屋上から消防隊員の雛罌粟港(ひなげしみなと)によって救出される。接点ができた二人は後日サーフィンのデートを楽しみ、親密な関係になる。サーフィンは初心者だが、オムレツをキレイに包み、豆からコーヒーを作る港は、ひな子にとって「何でもできる人」として憧憬を抱く。一方で港は、自分が消防士になったのは、幼少期に海で助けられた経験に起因するとひな子に打ち明ける。しばらく経ち、雪が降る朝、一人でサーフィンに行った港は、水難者を助けようとして命を落としてしまう。港を失って落ち込み、サーフィンができなくなったひな子は、以前港と口ずさんだ歌を歌う。すると、近くの水中から港が現れたような経験をする。

何もかもが合わない映画だった。
序盤のひな子と港のラブラブ感が見ていてこっぱずかしい。
古臭いというか生々しいというか。
羨ましくなる感じでもなく、何度も目を逸らしたくなった。
この時点で先行きの不安を煽られる。
監督・脚本家の感性が私と合っていないという意味。

本作はひな子が自立を目指す物語。
だが、そもそもひな子が依存体質のように見えなくて港に甘えてばかり。
あまりに自立心が欠けていて、キャラクターとしての魅力に乏しい。

物語の序盤で港が命を落とす。
ひな子が甘えん坊だと、唐突に港を失うことで精神的なショックがより甚大となる。
結果的に観客に感情移入させる狙いのキャラ造形かもしれない。

だが、そもそものキャラに魅力を感じなければ感情移入はしづらい。
結果的にひな子の成長を応援する気持ちにはなれなかった。
せめて自立心を得るために努力をしているキャラであってほしい。
でもなかなか上手くいかなくて失敗して……といったキャラクターのが100倍魅力的である。

港を召喚する際の歌もメロディが古くさくて、ここでもしっくり来ず。
さらに港が出現できるのは水中のみ。
そのため、ひな子は水の入った巨大なイルカの浮き袋の中に港を召喚し、街を連れまわして疑似的に港とデートする。
もはやはただのサイコホラーである。

ここまでやるだろうか?
普通の精神性を持っている人間なら、せめて家でこっそり召喚するか、外なら人の気配がないタイミングを見計らう。
ここでもひな子の行動に共感できない。

極めつけはシナリオの凡庸さ。
この誰にでも思いつくような平凡なシナリオになぜ、企画のゴーサインが出るのか。
新しさがまるで感じられない。
クライマックスのあの展開も筋違いである。

良かった箇所を挙げるならば映像くらい。
前置きに書いた通り、オリジナリティ溢れるアニメーション映像は堪能できる。
夏のさわやかな雰囲気は素晴らしい。
海に行きたくなる気持ちが駆り立てられるのは良かった。

ストーリーさえ期待しなかったら、人によってはまあまあ楽しめるかもしれない。

大切な何かを失った主人公の再生物語はコチラ。

■ミッドサマー

■ソウル・サーファー

■若おかみは小学生!

きみと、波にのれたらの作品情報

■監督:湯浅政明
■出演者:向水ひな子(川栄李奈)、雛罌粟港(片寄涼太)
■Wikipedia:きみと、波にのれたら
■映画批評サイト「rotten tomatoes」によるスコア
TOMATOMETER(批評家):92%
AUDIENCE SCORE(観客):-

きみと、波にのれたらを見れる配信サイト

U-NEXT:○(有料)
Hulu:-
Amazonプライムビデオ:○(有料)
TSUTAYA TV:○(有料)
Netflix:-
※2020年4月現在

-⑤人生の節目

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名前:柴田
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