映画の海

約1100本の映画を鑑賞した小説家志望の男が、ネタバレなしで映画のレビューや解説を書いてます。(直近で観たものに限る。たまにアニメ・ドラマ・小説も)面白いおすすめ映画を探している人向けのブログ。

⑤人生の節目

映画『海獣の子供』ネタバレなしの感想。人付き合いが苦手な少女はジュゴンに育てられた少年と出会う

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■評価:★★★☆☆3.5

「生命の謎」

【映画】海獣の子供のレビュー、批評、評価

『漫勉』という番組を知っているだろうか。
『MONSTER』『20世紀少年』の浦沢直樹がプレゼンターを務める番組。

ゲストの漫画家の執筆現場に密着し、作品制作過程を追う。
執筆映像を観ながら、スタジオにいる浦沢とゲストが対談形式で会話する内容となる。

私は過去に漫画を良く読んでいたので、この番組は好きでたまに録画して観ていた。
その中で印象的だったのが『海獣の子供』の作者である五十嵐大介だ。

浦沢直樹を始め、多くのゲスト漫画家は意外と社交的。
スタジオでは和気藹々と会話を楽しみながら番組が進行していく。

対照的だったのが五十嵐大介。
やけに神経質そうで寡黙なのだ。
多摩美術大学出身というのもあって、絵も独特。
調べたら、五十嵐大介は定規を使っておらず、建築物などもすべてフリーハンド。
使用する画材はなんと、ボールペンである。

アシスタントもつけず、黙々と頭の中の映像を絵に描き起こす姿はまるで人間国宝の職人のようだった。
いったい『海獣の子供』はどんな映像に仕上がっているのかワクワクしながら鑑賞に至った。

ハンドボール部に所属する中学生・琉花は自分の気持ちを上手く言葉にするのが苦手な少女。部活の仲間と揉め、夏休み早々に顧問の教師から部活禁止を言い渡される。やさぐれた琉花は幼少期に大好きだった父が働く水族館に遊びに行く。水族館では海と名乗る少年と出会う。父は「海はジュゴンに育てられた」と聞かされ、海の面倒を見るようにと命じられる。海と双子の空とも出会い、海と比べて軽い性格の空と対立しながらも、交流を深めていく。同時期、海には隕石が落ち、世界では「白斑」を持つ魚が光となって消える現象が多発していた。

圧巻の映像である。
巨大なクジラのブリーチング(大ジャンプ)や、夥しいほどの海の生物を躍動的かつ、神秘的に描く。
いったいどれ程の労力をつぎ込んだのだろうか。
考えただけでも気が遠くなる。

後半の海を宇宙に見立てた神秘性、及び主人公の精神世界が入り交じった映像は想像力が爆発した感覚世界が描かれる。
世界観が突き抜けすぎていて、凄いものを観たといった感じである。

久石譲の音楽も良かった。
舞台は夏だし、ファンタジー色の強いストーリーなので多くのジブリ映画を手が掛けてきた久石譲との相性は抜群。
たまにジブリ感もよぎったりするが、すぐに五十嵐大介が築いた独特の世界観に引き戻される。
久石譲の音楽のイメージに映像・世界観が負けていない。

ストーリーはかなり取っつきづらい。
難解で、映像もセリフも抽象表現が多用されていて人を選ぶ。
分かりやすさよりも、壮麗で重みのある世界観の構築を優先させている。
扱うテーマが少女の人生の節目から「生命の謎」まで飛躍しているためだろう。
安易に分かりやすい直接描写を多用すると重厚なテーマが薄っぺらく見えてしまうため、あえて抽象度を高めている。

私は鑑賞後、この映画が生命の起源についてを描きたいだけなのかと思っていた。
鑑賞後にいろいろ調べてみたら、もっと明確に伝えたいメッセージが存在していた。
原作を読むとより深く知れるらしい。

思った気持ちを「言葉」にできない少女・琉花。
「言葉」が本作において重要な意味を持つ。

劇中では海洋学者のジムやアングラードが人間が使う言葉と、海に生きる生き物のコミュニケーションについて言及する。
次第になぜ、寡黙な五十嵐大介がこの物語を紡ぐに至ったのかに繋がる。

もしあなたがこれからこの映画を見るのであれば「言葉」について注目してもらいたい。
「言葉」がこの物語を紐解く鍵となる。

言うなら五十嵐大介は、人間は食物連鎖という概念では頂点にいるが、もっと高次元で生きる生物の存在を示唆しているように思える。
人間は大した生き物ではないと。
だからこそ、もっと自然を敬い、真摯に向き合う必要がある。

とにかく、これは完全に映画館鑑賞案件である。
巨大スクリーンではまるで自分が琉花らと共に海と一体になれるような体験ができたのではないだろうか。

独自の世界観を誇る作品はコチラ。

■ファンタスティック・プラネット

■ノルウェイの森

海獣の子供の作品情報

■監督:渡辺歩
■出演者:安海琉花(芦田愛菜)、海(石橋陽彩)、空(浦上晟周)
■Wikipedia:海獣の子供
■映画批評サイト「rotten tomatoes」によるスコア
TOMATOMETER(批評家):69%
AUDIENCE SCORE(観客):-

海獣の子供を見れる配信サイト

U-NEXT:○(有料)
Hulu:-
Amazonプライムビデオ:○(有料)、原作漫画はコチラ
TSUTAYA TV:-
Netflix:-
※2020年4月現在

-⑤人生の節目

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名前:柴田
年齢:30代
小説家志望。
趣味は映画、読書、ゲーム(最近はスプラトゥーン2)、お笑い、筋トレなど。
長所は人を楽しませることに一生懸命、短所は顔が丸い。