映画の海

約1100本の映画を鑑賞した小説家志望の男が、ネタバレなしで映画のレビューや解説を書いてます。(直近で観たものに限る。たまにアニメ・ドラマ・小説も)面白いおすすめ映画を探している人向けのブログ。

⑨組織のなかで

映画『ゼイリブ』ネタバレなしの感想。密かに地球を乗っ取ったエイリアンに、人類がコントロールされている世界を描く

投稿日:

■評価:★★★☆☆3.5

「物質主義的思考への警鐘」

【映画】ゼイリブのレビュー、批評、評価

『ゼイリブ』はスプラッターホラー映画の祖となる『ハロウィン』の産みの親、ジョン・カーペンター監督作品となる。

『ハロウィン』は今見るとテンポは遅く、スプラッターの刺激も弱め。
でもアルフレッド・ヒッチコック監督作の『サイコ』から着想を得て作られただけあって、スリラー演出が抜群に上手い。
包丁を持ったマイケルは神出鬼没で、唐突に現れる。
「いつマイケルが襲い掛かってくるのか」とドキドキしながら鑑賞を楽しめた。

『ゼイリブ』が制作されたのは1988年。
80年代にかつてないほどに増大した通俗的な資本主義に対する嫌悪のメッセージが込められている
ようは雑誌やCMなどの広告媒体のすべては、国民に何かを買いたいという欲求を引き起こす意図で作られている。
資本家の狙いは国民の金の搾取のみ。
そのため、『ゼイリブ』ではメディアに出てくる人間を邪悪な骸骨のようなエイリアンに見立てて描いているのだ。

主人公のナダ(ネイダ)は、しがない肉体労働者。世の中は貧富の差が激しく、失業者で溢れている。ある日、家のないナダは仕事先で知り合ったフランクに誘われて、労働者仲間が集まるボロ家(キャンプ地)で一緒に泊めてもらうことになる。そこで何気なく観たテレビの映像が突然乱れる。正規の放送局の番組とは思えない映像に映り変わり、そこに映っている男はこう言った。「我々は今、人工的な仮眠状態にされています。彼らは抑圧的な社会を作り上げています。彼らの目的は我々の意識を失くさせ、欲に目をくらませて物質主義者に仕立て上げることです。我々は欲に狂わされ、奴隷にされているのです」と。

これは面白い。
B級感満載で、映像がこの上なくチープ。(悪口ではない)
このチープさが妙な味になっていて、独特のシュールな世界観の構築を担っている。

何よりも物語の設定のアイデアが秀逸。
この世界はすでにエイリアンが侵略済み。
あらゆる広告やメディアを使って人類の欲を刺激し、操っているifの物語である。

確かに誰もがついつい時間を忘れてTVに夢中になったり、服やら何やらを衝動買いした経験はある。
だからこそ、ゼイリブのぶっ飛んだ世界観をすんなりと受け入れられるのだ。
ジョン・カーペンターのイマジネーションの豊かさが炸裂である。

似たような着想では『マトリックス』が挙げられる。
『マトリックス』は、実は世界は仮想現実で、本当の世界は機械に支配されている、というストーリー。
初めて見たときは素晴らしいアイディアに圧倒されたもの。

他にも漫画の『GANTS』もそうだ。
主人公が突如、事故で命を落とし、目を覚ますとアパートの一室にいた。そこには同じく命を落とした連中が集まっていて、部屋にあった謎の球体によって命令されて、地球を侵略しに来る星人と戦う。

ifの世界観はたまらない。
『当たり前だと思っていた世界には、実はこんな秘密があった』といった感じで価値観そのものを引っくり返す。
そのためスケールがでかい。
より深く物語に没入して、非日常体験ができるのだ。

『ゼイリブ』に話を戻すが、人間に変装するエイリアンを見破るアイテムが100均で売ってそうな安っぽいサングラスというのも良い。
サングラス自体は身近なもの。
何より「サングラスかよ」っていうツッコミどころがまたB級感があって味になる。
逆に、変にこだわった前衛的なデザインの代物だと、取っつき辛い物語となってしまう。
このシュールっぷりが妙にクセになるのだ。

本作のテーマは物質主義的思考への警鐘。
確かに広告・メディアはヤバい。
世の中のあらゆる物事は多面性だ。
影響力のある広告・メディアで働く上級国民たちは都合の悪い面を巧みに誤魔化し、良い部分だけを下民共に見せる。

昔は情報を得る手段が限られていたため、国民は情報を得る手段が限られていた。
TV、新聞、雑誌など。
つまり、国民は騙されるしか選択肢がなかった。
『ゼイリブ』は悪しき慣習に蝕まれるメディアをユニークに皮肉る。

インターネットが普及し、情報の民主化が進む昨今、メディアのあくどい情報操作が次々と明るみになっている。
今はブログやTwitterなど、SNSで個人が自由に情報を発信が出来るので良い時代である。
そのため『ゼイリブ』のようなメディアを風刺する物語は減る一方である。

逆に現状は情報過多だ。
あまりに情報が多すぎるため、我々は良質な情報を選択する能力が問われている。
今後は情報過多・情報精査のアイデアに基づいた物語を目にするようになるだろう。

ifの世界観を描いた映画はコチラ。

■マトリックス

■GANTZ(漫画)

ゼイリブの作品情報

■監督:ジョン・カーペンター
■出演者:ロディ・パイパー キース・デイヴィッド メグ・フォスター
■Wikipedia:ゼイリブ(ネタバレ)
■映画批評サイト「rotten tomatoes」によるスコア
TOMATOMETER(批評家):86%
AUDIENCE SCORE(観客):79%

ゼイリブを見れる配信サイト

U-NEXT:-
Hulu:-
Amazonプライムビデオ:○(字幕・有料)
TSUTAYA TV:○(有料)
Netflix:-
※2020年4月現在

-⑨組織のなかで

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名前:柴田
年齢:30代
小説家志望。
趣味は映画、読書、ゲーム(最近はスプラトゥーン2)、お笑い、筋トレなど。
長所は人を楽しませることに一生懸命、短所は顔が丸い。