■評価:★★★★☆4
「追い越しダメ、ゼッタイ」

【映画】激突!のレビュー、批評、評価
のちに鮫映画の金字塔『ジョーズ(1975)』地球外生命体との交流を描く『E.T.(1982)』、恐竜映画の金字塔『ジュラシック・パーク(1993)』など、数々の名作を世に送った名匠スティーヴン・スピルバーグ監督。
幼少時代はディスレクシア(失読症・難読症)のため、いじめを受けていた。
文字情報の理解力に乏しく、今でも脚本を読むのに人の2倍はかかるという。
ディスレクシアを患っていたせいか、幼少時代から映画にのめり込み、スタンリー・キューブリック、デヴィッド・リーン、黒澤明、アルフレッド・ヒッチコック、『ゴジラ』、ディズニー映画などに影響を受ける。
当時25歳だったスピルバーグは、テレビ映画として撮った本作『激突!』が評判を呼び、名前が世界に知れ渡る。
セールスマンであるデイヴィッド・マンは商談のため、車でカリフォルニアへ向かっていた。道中の荒野のハイウェイで、1台の大型トレーラー型タンクローリーを追い越す。だが、直後、今度はトレーラーがデイヴィッドの車を追いかけ回してくるようになる。幾度となく振り切ったように見せては突如、姿を現して襲ってくるトレーラーに、デイヴィッドは命の危機に晒される。
古い映画だから大して期待していなかったが、めっちゃ面白くてびっくり。
内容はトラックに追いかけれるだけ。
主人公デイヴィッドが必死の形相で、トラックから逃げ回る映像が延々と流される。
シンプルなストーリーに、大して金も掛かけられていないこの映画がこんなに面白いとは。
世の中に量産されている、大金をかけて作り込んだくせに大して面白くない映画が滑稽である。
とはいえ、計算高く作られてるのが随所で感じ取れる。
第一に、追いかけられているだけなのにカット割りが激しい。
デイヴィッドの汗だくな顔をドアップで映したり、どんどん上がるスピードメーターだったり、あるいはトラックの一人称視点だったりと目まぐるしくカットが切り替わる。
結果として、テンポが速く感じるのだ。
個人的に良かったのはトラックからデイヴィッドの車を見下ろす視点のカット。
巨人が蟻んこを追い掛け回して踏みつぶすような圧倒さが伝わってきて、実にスリリングである。
トラックの造形も最高だ。
デイヴィッドの車よりも巨体なのはもちろん、錆び付いていてやけに古臭い。
この古臭さが妙に不気味なのだ。
黄泉の国から引きずり出してきたような負のオーラを纏った禍々しさ。
抜群の存在感である。
さらにトラックの運転手の顔がずっと見えない。
死角や太陽の反射によって絶妙に隠される。
ストーキングしてくる相手の顔が分からないだけで、こんなに恐ろしいとは。
もし顔が分かってたら、怖さは半減するだろう。
この正体不明感がスリリングさを補強する。
個人的に好きだったのが幼稚園バスのシーン。
逃げている最中に、幼稚園バスのタイヤが砂に埋まって立ち往生する姿をデイヴィッドは見かけ、助ける。
デイヴィッドの車でバスを引っ張り上げようとする。
だが、なぜか園児たちはデイヴィッドをバカにするのだ。
滑稽でついつい緊張が緩むシーンだが、まさかこの後に訪れる振りになっているとは。
スピルバーグ恐るべし。
まるでセンスの塊のような映画である。
もし仮にスピルバーグがディスレクシアを罹患していなかったら、ここまで映画作りのセンスは磨かれなかったように思える。
スリラー演出が素晴らしいハラハラドキドキ作品はコチラ。
■ゲット・アウト
■バード・ボックス
■ハイドリヒを撃て! 「ナチの野獣」暗殺作戦
■ディスタービア

■監督:スティーヴン・スピルバーグ
■出演者:デニス・ウィーバー
■Wikipedia:激突!(ネタバレあり)
■映画批評サイト「rotten tomatoes」によるスコア
TOMATOMETER(批評家):88%
AUDIENCE SCORE(観客):84%
激突!を見れる配信サイト
U-NEXT:-
Hulu:-
Amazonプライムビデオ:○(字幕・有料)
TSUTAYA TV:-
Netflix:-
※2020年4月現在