映画の海

約1100本の映画を鑑賞した小説家志望の男が、ネタバレなしで映画のレビューや解説を書いてます。(直近で観たものに限る。たまにアニメ・ドラマ・小説も)面白いおすすめ映画を探している人向けのブログ。

⑩スーパーヒーロー

映画『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』ネタバレなしの感想。石油に取り憑かれた男を描く

投稿日:4月 23, 2020 更新日:

■評価:★★★☆☆3.5

「欲」

【映画】ゼア・ウィル・ビー・ブラッドのレビュー、批評、評価

アカデミー賞と言えば、言わずと知れた世界で一番有名な映画賞である。
アメリカの映画賞だが、日本での影響も大きい。
2020年公開の『パラサイト 半地下の家族』はアカデミー賞作品賞の受賞が発表されてからは一気に集客が加速し、現時点で興行収入45億円を突破している。
マーベル映画の『アベンジャーズ/エンドゲーム』が50億円を突破しているので、比較するとアカデミー賞の影響力の高さを実感する。

そんな権威あるアカデミー賞の主演男優賞を3度受賞した唯一の男がいる。
ダニエル・デイ=ルイスというイギリス人俳優で、彼の徹底した役作りは常軌を逸する。

『ラスト・オブ・モヒカン』ではモヒカン族の役を演じるため、半年間にわたって野営や釣り、獣の皮の剥がし方を習得し、最後は自分でカヌーまで作れるようになった。
『ボクサー』ではプロボクサーとの週3のスパーリングを3年間行った。

恐ろしいのが、必要だと思えば、年単位で役作りを徹底する。
素晴らしい俳優だが、2017年に『ファントム・スレッド』に出演後、引退している。
ダニエル・デイ=ルイスが二度目のアカデミー賞主演男優賞を獲得したのが本作『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』である。

20世紀初頭のアメリカ西部。山師のダニエル・プレインヴューは幼い息子のH・Wを連れて、油田を探してた。ある日、ダニエルはサンデー牧場に石油が出る兆候があると、サンデー家の青年ポールから聞かされる。サンデー牧場を訪れたダニエルは、ポールの父・エイベルと、ポールの双子の兄・イーランと交渉し、採掘権を買い取る。仲間を呼び寄せたダニエルは早速、試掘に取り掛かる。数日後、油脈を見事に掘り当てられた。だが爆発炎上事故が発生。採掘を見学していたH.Wは吹き飛ばされて聴力を失ってしまう。

ストーリーはもちろん良かったんだが、印象的だったのは音楽だ。
アメリカの雄大な大地を舞台に、オーケストラのような重厚感溢れる音楽が流れる。
舞台と音楽の組み合わせがかなり素晴らしかった。
インタビューでもポール・トーマス・アンダーソン監督は、ポイントを絞って大音量で音楽を流すように意識していたとのこと。

広大な舞台を引きで見せる映像も多く、石油掘削のための巨大な装置と相俟って、アメリカのダイナミックさが伝わってくる。
日本では絶対に作られないゴージャスな映画である。

主人公ダニエルは石油に魅了された男だ。
石油をロマンを求め、人を欺いてでも石油で巨万の富を築こうとする強欲な男。

ダニエルが行う、石油の掘削するシーンも興味深く観れた。
我々も日常から石油製品を使っているが、実際に原油を採るシーンなんて観たことがない。

地面を掘り、ヒットすれば湧水のように石油がじわじわと滲み出る。
油脈を見つけた瞬間は、さぞかし宝を掘り当てたような高揚感が沸くのだろう。

だが、試掘には金がかかる。
あてが外れ、油脈が無ければ大損だ。
言ってしまえば石油ガチャである。
だからこそロマンがあり、ダニエルが石油に取りつかれるのも納得である。

併せて多くの事故も発生していて、危険な仕事である現実も伝わる。
時にはダイナマイトで、火災を止めたりするのにも驚き。

他に印象的だったのは、ダニエルがキリスト教の洗礼受けるシーン。
欲にまみれたダニエルは、事故で聴力を失った息子に対して、とある酷い仕打ちを与える。
だが、仕事を進める上で、その愚かな行為を悔い改める必要に迫られる。

私は宗教には無関心だが、神の前で自らの罪を告白し、過ちを認めるのはありだと思えた。
ダニエルは大勢の信者の前で罪を認める。
つまり、自分の恥ずかしさを周知を晒す行為を意味する。

これを出来ないと人の成長は早いうちに限界を迎える。
ダメな自分のまま、成長しようなんて、世の中はそんなに甘くない。
逆にダニエルのように自分の愚かさ、弱さを自覚し、受け止められる人間は成長する。
成長のために必要な要素を余すことなく取り込めるからだ。

大事なのはキレイな手段ではない。
泥水すすってでも、結果を得た者が勝者である。

ダニエルが歯を食いしばって、洗礼を受けるシーンは素晴らしかった。
本作において、私が最も好きな心を揺さぶられる名シーンだ。
だが、この映画が恐ろしいのは、ダニエルの変化は止まらないということ。

最後はぶっ飛んだ展開を見せてくれる。
直接確かめてもらいたい。

あまり評価を高くしていないのは、とにかく渋い内容。
出てくるのは加齢臭ムンムンの汗臭い男ばかり。
テレビが少し曇った。
笑い要素もゼロなので、観る人を選ぶ。

家族をも翻弄する、狂ったパパの作品はコチラ。

■パッドマン 5億人の女性を救った男

■運び屋

ゼア・ウィル・ビー・ブラッドの作品情報

■監督:ポール・トーマス・アンダーソン
■出演者:ダニエル・デイ=ルイス ポール・ダノ ケヴィン・J・オコナー
■Wikipedia:ゼア・ウィル・ビー・ブラッド(ネタバレあり)
■映画批評サイト「rotten tomatoes」によるスコア
TOMATOMETER(批評家):91%
AUDIENCE SCORE(観客):86%

ゼア・ウィル・ビー・ブラッドを見れる配信サイト

U-NEXT:○(見放題)
Hulu:-
Amazonプライムビデオ:○(字幕・有料)
TSUTAYA TV:○(有料)
Netflix:-
※2020年4月現在

-⑩スーパーヒーロー

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

関連記事

名前:柴田
年齢:30代
小説家志望。
趣味は映画、読書、ゲーム(最近はスプラトゥーン2)、お笑い、筋トレなど。
長所は人を楽しませることに一生懸命、短所は顔が丸い。