映画の海

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⑤人生の節目

映画『マーサ、あるいはマーシー・メイ』ネタバレなしの感想。カルト宗教から抜け出した女性の苦悩を描く

投稿日:

■評価:★★★☆☆3.5

「剥奪された日常・倫理観は取り戻せるのか」

【映画】マーサ、あるいはマーシー・メイのレビュー、批評、評価

カルト宗教を題材とした映画はたまに見かける。
その多くは、主要キャラクターがカルト宗教に入ってからをメインに描くストーリーラインである。

カルト宗教ではないが、例えば監督映画の『シークレット・サンシャイン』。
息子が命を奪われて、精神崩壊した女性が、キリスト教に入信し、人間性を取り戻すストーリー。
上記のあらすじに留まらない、とんでもない展開を見せるのが印象的。
私はものすごく好きな映画。

あるいは園子温の『愛のむきだし』。
謎の新興宗教団体に翻弄される少年少女を描く。
この映画も上記のストーリーラインをなぞる。

本作『マーサ、あるいはマーシー・メイ』は、カルト宗教から抜け出するところから始まる一風変わった物語となる。

山奥のカルト教団から逃げ出したマーサは、普通の生活を取り戻すため、長い間連絡を取っていなかった姉ルーシーの元を訪ねる。精神状態が不安定だったマーサは、ルーシーと彼女の夫の助力によって、少しずつ平穏な生活を取り戻す。だが、教祖に与えられた“マーシー・メイ”の名で過ごしていた当時のフラッシュバックが度々発生し、奇怪な行動を取るようになる。

興味深い映画だった。
余韻の残るタイプの映画で、色々と考えながらの観賞を楽しんだ。

物語は、マーサが姉ルーシーの元へ逃げ込んだ直後から始まる。
マーサは日常生活に戻ろうと奮闘する。
だが、ふとしたきっかけで過去の集団生活がフラッシュバックが発生して苦しむ。
現在と過去を交互に描く形で物語は進む。

フラッシュバック以外にも問題がある。
マーサは教祖や信者によって、当たり前の倫理観が剥奪されている。
よって、日常生活においてマーサとルーシーらとの間に感性の齟齬が発生する。

特に印象的だったのは、ルーシーと彼女の夫の性交している最中に、マーサが何食わぬ顔で寝室に入り、ベッドにもぐり込むシーン。
マーサは集団の際、みんなで性交するのが当たり前のなかで生活していたためである。

このシーンを目の当りにして、「洗脳」に強い関心を持ってしまった。
入信前のマーサは父に捨てられ、行く宛もなかった。
カルト宗教がマーサの心にぽっかりと空いた穴を埋めて洗脳する。
当たり前の感性を奪い、新しい感性を植え付ける。

いったい人はどこまで洗脳してコントロールできるのか?
といったある種の心理実験を観ているような感覚になった。
マーサが逃げ出した理由こそが、洗脳の限界を描いているようにも思えるが。

一つ気になったのは、ルーシー夫婦のマーサとの接し方。
マーサは奇行を繰り返し、ルーシーらに迷惑をかける。
次第に夫が耐えられなくなって、マーサを病院に送ろうとする。

ここで疑問なのが、「なぜ、姉らはマーサに何があったのかを聞かないのか」である。
マーサは携帯を捨てて二年間、音信不通となっていた。
よっぽどの大きな決断によって行方不明になっていた意味を示す。

だとしたら普通、二年間に何をしていたのかを尋ねるのが普通である。
マーサが精神的に不安定なら、落ち着いた頃を見計らって少しずつ、マーサの内面を引き出したらいい。
だが、一切しない。
かなり疑問に感じる行動だった。

違和感を覚えたので調べてみたら、AMAZONレビューにびっくりした解釈があった。
ネタバレになるので触れないが、もしあのレビューの通りであればこの映画、かなり大がかりな仕掛けが施されている。
ルーシー夫妻がマーサの内面に深入りしなかった理由にもつながる。
観終わったら是非とも調べて貰いたい。

印象としては、『ルーム』を思い出した。
何者か誘拐された母と子の物語なんだが、メインとして描くのは逃げ出したあとの生活である。

逃げ出すのも大事だが、逃げ出してからはもっと大変。
人生はなかなか思い通りにはいかないものである。

カルト宗教を題材とした作品はコチラ。

■ミッドサマー

マーサ、あるいはマーシー・メイの作品情報

■監督:ショーン・ダーキン
■出演者:エリザベス・オルセン ジョン・ホークス サラ・ポールソン ヒュー・ダンシー
■Wikipedia:マーサ、あるいはマーシー・メイ
■映画批評サイト「rotten tomatoes」によるスコア
TOMATOMETER(批評家):89%
AUDIENCE SCORE(観客):71%

マーサ、あるいはマーシー・メイを見れる配信サイト

U-NEXT:○(見放題)
Hulu:-
Amazonプライムビデオ:○(字幕・有料)
TSUTAYA TV:○(有料)
Netflix:-
※2020年4月現在

-⑤人生の節目

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名前:柴田
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