映画の海

約1100本の映画を鑑賞した小説家志望の男が、ネタバレなしで映画のレビューや解説を書いてます。(直近で観たものに限る。たまにアニメ・ドラマ・小説も)面白いおすすめ映画を探している人向けのブログ。

⑨組織のなかで

映画『エコール』ネタバレなしの感想。外界から隔離され、男性がいない少女のみが住む全寮制の学校を描く

投稿日:

■評価:★★☆☆☆2.5

「少女と大人の関係性」

【映画】エコールのレビュー、批評、評価

このブログでも何度か記事や話題にしているギャスパー・ノエという映画監督がいる。
不快をエンターテイメントとする変態映画ばかり作る作家。
脚本だけでなく、演出面でも尖りに尖っているので、もはや笑えてくる。
例えば『アレックス』。

「時がすべてを破壊する」をテーマに、時間は取り返しのつかないメッセージを込めて作った『アレックス』は、時間軸を逆転させて描く。
つまりクライマックスのカタストロフィからカタルシスへと遡って映すのだ。
時間軸を遡るだけでも斬新なのに、なんとエンドロールを下から流すというハチャメチャなオープニングから幕開けとなる。

そんな頭のおかしいギャスパー・ノエの奥さん、ルシール・アザリロヴィック監督作品が『エコール』である。

高い塀で外界から隔離された森の中の学校、エコール。6歳から12歳の少女たちが自然の生態やダンスを学んでいた。髪には学年を区別する7色のリボンをつけ、着る制服は純白。男性のない完璧な世界にまた一人、6歳の少女、イリスがやってきた。少女たちは卒業まで一度も外と接せず、7年間を学校の中で過ごす。少女たちは次第に外の世界へ憧れを募らせていき……。

やっぱりギャスパー・ノエの奥さんだけあって、クセのある作風だった。
原題、及び原作のタイトルはInnocence(イノセンス)。
意味は無垢。

押井守監督によるアニメ映画『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』の続編のタイトルが『イノセンス』が存在するため、混同を避けるため、エコールに変えている。

本作の設定は、隔絶された孤児院といった様相を呈しており、いくつかの作品を連想した。
恐らく私以外にも多くの人が連想したのがカズオイシグロ著の『わたしを離さないで』だろう。

孤児院で産まれ育った主人公の話。
外には出られず、ヘールシャム(施設名)には何らかの秘密があると感じ取る主人公ら。

次第に判明する事実には恐れ戦くこと必至である。
ハリウッドで映画化もされており、日本でも綾瀬はるか主演でTVドラマ化されている。

もうひとつは少年ジャンプ漫画『約束のネバーランド』。
こちらも主人公らは孤児院で生まれ育つ。
優しいシスターらに囲まれ、レベルの高い教育を施される。
だが高い壁に囲まれていて、外に出られない。
こちらも壮絶な展開を迎える。
ジャンプ漫画なだけあって、テーマ性よりもエンタメ性が強いので、万人受けするのはコチラである。

『エコール』の上記二作と異なる点は、隔絶された世界に住むのはなぜか少女のみ。
年長は毎晩九時になると外出し、小さい子らは宿舎で寝なければならない。

もちろん、壁から向こう側に外界には足を踏み込めない。
出られるのは卒業する日を迎えるのみ。
果たして彼女らはなぜ幽閉されているのか。

他にも、少女らは拉致られるような形で連れて来られてくる描写がある。
多くのミステリー要素に牽引され、観客は先の展開が気になって没入が捗る。

正直、謎に関しては『わたしを離さないで』や『約束のネバーランド』のが分かりやすい衝撃がある。
『エコール』は明確に「コレ!」といった衝撃的な事実が明かされることはない。
監督の意図するもので、「観る人の解釈に任せたい」と語る。
正直、私はモヤモヤが残った。

テンポもゆったり目で、劇的な展開は皆無。
描かれるテーマもパッと見では分かりかねる。
そのため、アート色の強い雰囲気映画である。
世界観は独特で良かったので、個人的にはもう少しストーリーに起伏を加えて楽しめるように作ってほしかった。

ジャケットには少女の足がドーンと映されているが、性描写はなし。
そのあたりを期待すると肩透かしを食らう。
あくまで、少女と大人の関係性をテーマとしている。

この世界に出てくる大人は閉鎖的で妙な怖さが漂っている。
分かりやすく暴力を振るったりするわけではない。
子どもと大人との間に、明確な心の距離が存在するのだ。

大人は何でも子どもには隠す、といった印象を、私が子供の頃に抱いていた。
私はそれがとにかくイヤで、自分も早く大人になりたいって願っていた。
何でもかんでも子ども扱いされるのもイヤだった。

恐らくだが、監督も私と似た葛藤を子供の頃に抱いたのではないだろうか。
本作では、大人になるという自由への解放を描きたかったのだろう、と私は思った。

隔離された世界から、外界へ憧憬を抱く系映画はコチラ。

■僕たちは希望という名の列車に乗った

■サイダーハウス・ルール

■わたしを離さないで

■約束のネバーランド

エコールの作品情報

■監督:ルシール・アザリロヴィック
■出演者:ゾエ・オークレール ベランジェール・オーブルージュ
■Wikipedia:エコール
■映画批評サイト「rotten tomatoes」によるスコア
TOMATOMETER(批評家):71%
AUDIENCE SCORE(観客):75%

エコールを見れる配信サイト

U-NEXT:-
Hulu:-
Amazonプライムビデオ:○(DVD)
TSUTAYA TV:○(見放題)
Netflix:-
※2020年5月現在

-⑨組織のなかで

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名前:柴田
年齢:30代
小説家志望。
趣味は映画、読書、ゲーム(最近はスプラトゥーン2)、お笑い、筋トレなど。
長所は人を楽しませることに一生懸命、短所は顔が丸い。