■評価:★★★☆☆3.5
「闇に蝕まれているのは生徒なのか」

【映画】狂覗のレビュー、批評、評価
低予算のインディーズ映画には、たまに核弾頭のようなぶっ飛んだ面白さの映画が現れる。
多くの人がイメージするインディーズ映画の傑作といったら『カメラを止めるな』だろう。
私も劇場に見に行ったし、作り込まれた奇抜なシナリオには感嘆させられた。
コメディ演出も秀逸で、最高に楽しい映画だった。

他にはこのブログでも記事にした『岬の兄弟』。
自閉症の妹に兄貴がウリをやらせるという、イカれたストーリー。
閉店後の銭湯が「人の命を奪う場」として貸し出される『メランコリック』もかなり笑える映画だった。
ヒットするインディーズ映画の共通点といったら、シナリオの奇抜さだ。
メジャー映画では決して観れないぶっ飛んだ内容が多い。
中学教師が瀕死の状態で発見された。犯人は同校の生徒の可能性が高い。責任を押し付けられた科学教師の森は生徒の現状を把握するため、抜き打ちの荷物検査を実施する。だが普通の荷物検査ではない。森を含む5人の教師は、生徒の立ち合いはなしで、体育の授業を見計らって秘密裏に行った。そこで、とんでもない事実が明るみになる。さらに万田みやりという少女の存在も明らかになる。中学生を牛耳る怪物ともいえる女子生徒。容姿端麗の才女はいったい何者なのか。
ワンシチュエーションで繰り広げられるミステリースリラー。
ワンシチュエーションとは、一つの限定された舞台のみで行われる設定を指す。
老朽化したバスルームでの会話劇のみで展開される『SAW』のようなイメージである。
シナリオは面白い。
体育の授業の合間、生徒不在の中でこっそりと教師たちが手荷物検査を行う。
ある生徒は大量のSMグッズを持っていたり、ある生徒は大量のボンドを持っていたり。
生徒の不思議な所持品に、観客も教師たちも困惑させられる。
だが、物語が進むにつれて、意味不明の持ち物の意図が浮き彫りとなる。
本編に、生徒はほとんど出てこない。
現在の時制では、私の記憶が正しければ2カットのみ。
基本的に、教室の中での教師たちの会話劇でストーリーが展開される。
あるいはとある教師の回想や精神世界も描かれる。
最もキーとなるキャラクターが、「万田みやり」という女子生徒である。
容姿端麗で、成績も学年トップ。
だが、性的に活発で、ウリをしたりといった裏の顔を持つ。
他にも彼女のキャラクター性を決定づける不気味な演出がある。
中学生を牛耳る化け物のような存在だ。
だが、万田みやりがほとんど出てこないのは残念で仕方ない。
私はエキサイティングな美しい女性のキャラクターが好きなので、本当にがっかりした。
例えば『惡の華』の仲村さん、『ミスミソウ』の主人公・野咲 春花、バトル・ロワイアルの相馬光子や千草貴子など。
重要なキャラクターが出てこない演出で有名なのは『桐島、部活やめるってよ』。
『桐島、部活やめるってよ』では、超人気者で優等生の桐島が唐突にバレーボール部を辞め、行方をくらます。
崩れたスクールカーストに影響を受ける桐島以外の学生らがメインで描かれる。
ようは「桐嶋がいなくなった以降の俺たちはどうしたらいい?」って感じの物語。
だから問題がない。
だが本作は、万田みやりが常に話題の中心となる物語なので、出てこないのは物足りない。
実際に出てきて、観客に強烈な存在感を植えつけていたら、クライマックスが活きる。
故に万田編が存在しないのは歯がゆい。
「外ロケなどをするための資金が得られなかったんだろうなあ」と観客は思ってしまう。
もっと長尺で、しっかりと金を掛けて二部構成で見たかった。
一部は先生視点の持ち物検査編。
二部は万田、あるいは万田と深くかかわるキャラの視点編。
かなりモヤモヤの残る映画。
個人的に学園もののミステリースリラーというジャンルはツボなので、尚更、痒い所に手が届かない感を覚えたので勿体ない。
美しい怪物女性が出てくる映画はコチラ。
■惡の華
■ミスミソウ
■バトル・ロワイアル

狂覗の作品情報
■監督:藤井秀剛
■出演者:杉山樹志 田中大貴 宮下純 桂弘 坂井貴子
■Wikipedia:狂覗
狂覗を見れる配信サイト
U-NEXT:-
Hulu:-
Amazonプライムビデオ:○(DVD)
TSUTAYA TV:○(見放題)
Netflix:-
※2020年5月現在