映画の海

約1100本の映画を鑑賞した小説家志望の男が、ネタバレなしで映画のレビューや解説を書いてます。(直近で観たものに限る。たまにアニメ・ドラマ・小説も)面白いおすすめ映画を探している人向けのブログ。

⑨組織のなかで

映画『女王陛下のお気に入り』ネタバレなしの感想。18世紀初頭の英国を舞台に、2人の女性が女王の側近の座を奪い合う

投稿日:

■評価:★★★★☆4

「権力の恐ろしさ、女性同士の争いの醜さ」

【映画】女王陛下のお気に入りのレビュー、批評、評価

18世紀初頭のイングランドを舞台にアン女王のお気に入りの座を女性2人が奪い合う宮廷ドラマ。
史実をベースにした物語で実在の人物も多く登場する。
エンターテイメント性を担保するため、多くが改変されている。

本作を手掛けるのは『籠の中の乙女』『ロブスター』『聖なる鹿殺し』の鬼才・ヨルゴス・ランティモス監督。
2012年、イギリスの大手新聞『ザ・ガーディアン』紙にて「この世代のギリシャの映画監督のなかで最も才能のある人物」と評されている。

18世紀初頭、英国はスペイン継承戦争でハプスブルク家(オーストリア)側に付き、フランス王国との戦争の渦中にあった。アン女王の健康状態は悪く、少女時代からの親友かつ側近のマールバラ公爵夫人サラを、公私にわたって頼っていた。ある日、没落貴族の娘アビゲイル・メイシャムはサラの縁故を頼って宮廷を尋ね、女中として雇ってもらう。ある夜、女王が痛風の症状に苦しみ、それを知ったアビゲイルは無断で女王の足に薬草を塗った。サラは激怒し、女中頭にアビゲイルを鞭打つように命じる。だが、女王の足の痛みが良くなり、サラはアビゲイルの処罰を撤回して、女官に格上げし、さらに個室まで与えた。その後、アビゲイルは、女王とサラの関係の秘密を知り……。

アン王女の親友かつ側近のサラと、没落貴族のアビゲイルが女王陛下を奪い合う話となる。

ホラー映画よりもよっぽど怖い。
リングの貞子なんて、本作の二人の女性に比べたらカワイイ白塗りの生き物である。

二人の女性の嫉妬や野心が恐ろしく、張り詰めた緊張感で胃が反転するかと思った。
というか、緊張感が限界突破して、ちょっと笑えてくるほど。
心から男に生まれて良かったと思わせてくれる映画体験となった。

物語序盤、アビゲイルが屋敷を訪れる。
没落貴族ってことで周りからは舐められ、仕事も下っ端として雑用に駆り出される。

序盤はアビゲイルは鳴りを潜めているのだ。
いかにも、悲壮感の漂う残念な運命の女として、淡々と与えられた目の前の仕事をこなす。
余談だが、アビゲイルの狙いはもちろん、かつての貴族のような贅沢な暮らしの獲得である。

一方で、権力を持つアン女王は非常にワガママ。
良いもんを食いすぎて体は膨れるわ、些細な理由でヒステリックになって部下に喚き散らすわで、害悪でしかない。
そんな女王は、暴飲暴食がたたって痛風を患う。
いわば、女王の弱点の1つである。

痛風に苦しむ姿を目撃したアビゲイルは、いよいよ己の野心に駆られた行動を移すのだ。
下っ端であるアビゲイルは、女王の寝室という神聖な場に忍び込み、寝ている女王に薬草を塗所り込む豪胆さを見せる。

アビゲイルは実に密やかに計画を実行するので、側近のサラも気づかない。
アビゲイルの上手いのが、抜け目なくサラの尊厳を刺激して、立てるのだ。
だから、サラも自分を上げてくれるアビゲイルを受け入れ始める。

このようにアビゲイルは時間をかけて少しずつ、権力に身を投じていく。

面白いのが、アビゲイルの狡猾っぷりが少しずつエスカレートして大胆になる流れ。
本を使ってとある暴挙に出るシーンは見所の一つ。
直接見てもらいたい。

特に素晴らしかったのは、女王とサラの関係性の秘密。
その秘密をアビゲイルは知ってしまう。
この映画で一番の見せ場かつ、重要なシーンであり、物語はここから急展開を見せる。

このシーンが素晴らしくて、個人的には一番の感心させられた。
本作の評価の高さは恐らく、このシーンの影響が大きい。

あと、一か所だけエマ・ストーンのヌードのシーンがある。
どうやら、当初は台本になく、エマ自身から監督に提案して行ったそう。
確かにシーンのヌードはかなり効果的。
ヌードがないと考えると、物語の展開が少し弱くなっただろう。

本作を観ると、権力の恐ろしさも再認識させられる。
女王のように、機嫌1つで人をコントロール出来る立場は、ろくな末路を迎えない。

本作は女王を奪い合いを描いているが、本質としては権力の奪い合いである。
女王の側近となれば、豊かな暮らしが手にはいるし、身分が上がって人をコントロールする立場を得られる。
人の尊厳を尊重する大切さも改めて実感した。

装飾品や美術も素晴らしく、世界観が素晴らしい。
メインのキャラクターは誰もが魅力的でストーリーも、シンプルで分かりやすい。
かなり満足度の高い映画。
ヨルゴス・ランティモス監督の過去作をすべて鑑賞したくなるほど。

権力を題材とした映画はコチラ。

■バイス

■日本で一番悪い奴ら

女王陛下のお気に入りの作品情報

■監督:ヨルゴス・ランティモス
■出演者:オリヴィア・コールマン エマ・ストーン レイチェル・ワイズ
■Wikipedia:女王陛下のお気に入り(ネタバレあり)
■映画批評サイト「rotten tomatoes」によるスコア
TOMATOMETER(批評家):93%
AUDIENCE SCORE(観客):69%

女王陛下のお気に入りを見れる配信サイト

U-NEXT:○(有料)
Hulu:-
Amazonプライムビデオ:○(吹替・有料)○(字幕・有料)
TSUTAYA TV:○(有料)
Netflix:-
※2020年5月現在

-⑨組織のなかで

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名前:柴田
年齢:30代
小説家志望。
趣味は映画、読書、ゲーム(最近はスプラトゥーン2)、お笑い、筋トレなど。
長所は人を楽しませることに一生懸命、短所は顔が丸い。