■評価:★★☆☆☆2.5
「親と子はどこまで似るのか。引き継いだ罪を償えるのか」

【映画】ドクター・スリープのレビュー、批評、評価
スティーヴン・キング著『シャイニング』の続編の映像化となる。
小説家志望の元教師であるジャックと妻のウェンディ、一人息子のダニーが訪れたホテルでの悲劇を描いている。
スタンリー・キューブリック監督の映画版が非常に有名である。

キングはキューブリック版の『シャイニング』を酷く嫌っている。
キングは80年代からアルコールに加えて薬物依存に苦しんでいた。
そのため依存と戦うキャラクターが登場するキングの著作がいくつか存在する。
『シャイニング』の主人公のジャックもまさにアルコール依存を患っている。
だがキューブリックが描いたジャックはサイコな印象の強いキャラ造形。
アルコール依存や家族といったキングの思い入れのあるテーマは希薄となった。
そのためキングはキューブリック版の『シャイニング』を強く批判するに留まらず、自らTVドラマ版『シャイニング』を制作するに至る。
どれだけ拘りが強いんだって感じである。
『ドクター・スリープ』は上記のテーマを色濃く描いた作品となっている。
40年前のオーバールックホテルでの惨劇から生き延びたダニーは孤独になっていた。父親に命を奪われかけたトラウマや、終わらない悪夢。ダニーは特別な力(シャイニング)を抑えるためにアルコールを頼り、依存症に陥っていた。そんな時、ダニーの周りで児童連続失踪事件が発生する。ある日、ダニーの元に謎の少女、アブラからメッセージが送られる。アブラもまた能力を持っており、事件現場を能力で目撃していた。二人は出会い、事件の謎を追う。すると謎の集団「トゥルー・ノット」の存在を知る。
設定は無茶苦茶面白い。
能力者のダニーの近くに、更なる強力な能力を持つ少女・アブラがいる。
ダニーらに立ちはだかるのは能力者狩りをする不老不死集団「トゥルー・ノット」。
展開にはものすごくワクワクさせてくれる。
だが全然、物語に入り込めなかった。
いかんせん能力のルールが不明瞭。
ダニーやアブラは念力を使って人を攻撃できたり、あるいはテレパシーを使って遠くの能力者と会話できる。
だが、何が出来て何が出来ないのかが分からない。
そのため敵に襲われたとしても、主人公陣営はどのくらいピンチなのか、あるいはどのくらい優勢なのかがピンとこないのだ。
ルールを出来る限り明確に提示してくれるだけでフリとなり、バトルの際に、観客は状況を把握しやすい。
本作で一番残念な点がこの箇所である。
あまりに後出しじゃんけん的展開ばかりで、意識が物語から離れてしまうのだ。
能力集団の脆さもどうなんだろうか。
ちょっと銃で撃たれたくらいで消滅するのは、敵として物足りなさを感じた。
もっと強くてもいいと思う。
長生きしてるのに、人間よりも弱い印象。
時折、精神世界を行き来したりするが、何を行っているのか良く分かりづらい。
あと精神世界なのか現実なのかも分かりづらいシーンが多々あった。
そもそもスティーヴン・キングの設定だけが面白い著作が多い。
本を何冊か読んだことがあるが、展開や文体の癖が強すぎ。
読者が大して関心を持てないような題材の会話の応酬をしたり、とにかく読みづらくて仕方がない。
あまり読者の視点を意識した書き方をしていないように思える。
相当に我が強くて、絡みづらい人ではないだろうか。
本作で一番良かったのは不老不死集団が、能力者の精気を食って生き永らえる設定。
これはユニークで面白い。
ここも出来たらルールを明確にしてもらいたい。
一人分を食べたら何年寿命が延びるとか。
強い能力者は何倍も濃い精気を持ってるなどなど。
細かい作り込みが疎かなので、最後まで観るのは大変だった。
152分と上映時間もえらい長い。
起承転結の起が一時間近く続くのもかなり辛かった。
観て楽しめるのは『シャイニング』ファンくらいだろう。
大して『シャイニング』に思い入れのない私は辛い映画体験となった。
特異体質に葛藤を覚える作品はコチラ。
■“隠れビッチ”やってました。
本日に映画飯はコメダ珈琲店の『カツパン』。

ドクター・スリープの作品情報
■監督:ドクター・スリープ
■出演者:ユアン・マクレガー レベッカ・ファーガソン カイリー・カラン
■Wikipedia:ドクター・スリープ
■映画批評サイト「rotten tomatoes」によるスコア
TOMATOMETER(批評家):77%
AUDIENCE SCORE(観客):89%
ドクター・スリープを見れる配信サイト
U-NEXT:○(有料)
Hulu:-
Amazonプライムビデオ:○(吹替・有料)、○(字幕・有料)
TSUTAYA TV:○(有料)
Netflix:-
※2020年5月現在