映画の海

約1100本の映画を鑑賞した小説家志望の男が、ネタバレなしで映画のレビューや解説を書いてます。(直近で観たものに限る。たまにアニメ・ドラマ・小説も)面白いおすすめ映画を探している人向けのブログ。

⑨組織のなかで

映画『1987、ある闘いの真実』ネタバレなしの感想。警察が一般市民の学生の拷問死事件を隠蔽し、国民が反旗を翻す

投稿日:

■評価:★★★★☆4

「権力に立ち向かう」

【映画】1987、ある闘いの真実のレビュー、批評、評価

1987年、韓国・南西部の全州に住んでいたチャン・ジュナン監督は、高校三年生のころ「珍しいビデオの上映会があるから一緒にこない?」と友人に誘われた。
そこで目にしたのは、無防備の市民が次々と軍の銃弾に倒れる衝撃的な映像だった。
監督が住む全州市から近い街で起きた悲劇に、ひどくショックを受けた。

ソン・ガンホ主演の『タクシー運転手 約束は海を越えて』はご存じだろうか?
1979年、朴正煕(パク・チョンヒ)大統領の暗殺後、「ソウルの春」と呼ばれる民主化ムードが続いていた。
その後、全斗煥(チョン・ドゥファン)がクーデターによって軍の実権を掌握。
1980年5月、韓国政府は非常戒厳令を敷き、金大中ら野党指導者を逮捕する。

この出来事に怒り、光州市でデモを起こした学生や市民を銃撃戦で弾圧し、300人以上の死者を出したのが『タクシー運転手 約束は海を越えて』で描く光州事件だ。

その時の映像を、チャン・ジュナン監督はビデオ会で目撃したのだ。
本作は光州事件から続く、民衆蜂起を描いた6月民主抗争を題材とした映画となる。

1987年、警察に連行されたソウル大学の学生が、取り調べ中に命を落とした。政府は事実をもみ消す中、新聞社は「警察が拷問で命を奪った」とスクープした。我慢の限界に達した韓国中の国民が反旗を翻し、民主化を求める声が沸き起こる。絶対的な強権を相手に民衆は正義のために立ち上がった。

凄い映画。
社会派ではあるが、かなりエンタメとして意識して作られているので、観やすくて楽しめる。

6月民主抗争とは、大統領の直接選挙制改憲を中心とした民主化を要求する運動を指す。
1987年6月10日から民主化の宣言を指す「6・29宣言」が発表されるまでの約20日間にわたって行われた。

6月民主抗争の発生に大きな影響を与えたのが、1987年1月14日の学生運動家朴鍾哲拷問致死事件である。
映画冒頭に描かれるソウル大学の学生が警察の拷問によって命を奪われた事件を指す。

彼の死が民主化デモの象徴となる。
劇中には彼の遺影を掲げるデモ隊が何度も映される。
観ていて象徴って重要だなあと再認識した。

やはり軍の力は強大なので、デモ隊はいとも簡単に制圧される。
だが、象徴(朴鍾哲の遺影)を見れば、折れ掛けた心がすぐに修復され、政府への憎しみを再び呼び起こせるのだ。
いわゆる「初心を忘れるな」である。
象徴は多くの人を巻き込み、一致団結できる。

「6・29宣言」の直前に行われた「6・26デモ」では、全国33都市と4郡で少なく見積もっても20万名以上が参加したという。
象徴がなければ、すぐに心が折れて、軍の意のままに制圧されていたはず。

映画に話を戻す。
序盤は視点人物が多くて、ちょっと分かりづらい。
政府と反政府の国民が対立軸になるのだが、画面に映る視点人物がどっち寄りなのかが把握しづらい。
というのも、政府側の職に就く人間も実は反政府思想を持っているキャラクターもいるため。
何となくでも観進めていくと、キャラクター像を把握していけるので、ストーリーにはちゃんとついて行けた。
なので、序盤は若干観づらいかもしれないが、頑張って観続けてほしい。

良い意味で、序盤は観ていてストレスが溜まらせてくれた。
警察による隠蔽工作や、反政府思想を持つ人間に対しての傲慢さが非情に陰湿で、めっちゃ腹立つのだ。
「早くこいつらをお仕置きしてくれ!」と拳を握り締めながら観ていた。

救いようのない悪に振り切った風貌や挙動の警察ら政府陣営に、観客は一気に反政府側の人間への感情移入が加速する。
エンタメとして描いていて観やすい印象を受けたのは、勧善懲悪のシナリオ・演出が大きい。
日本人である私からすれば韓国史に疎いので、エンタメとして描いてくれるのは嬉しい。

拷問シーンはなかなかえぐかった。
終盤に差し掛かる辺りで、とあるキャラが拷問にかけられるが、かなり痛々しい。
さすがにイーライ・ロス監督の『ホステル』のようなホラー映画的なグロテスクさはないが、題材が題材なだけに妙な生々しさが漂う。
実際に、こういった被害を受けた連中がいるんだろうなと。

重たい内容だが、観終わったあとはカタルシスを得られる構造になっている。
韓国は自国の負の歴史をたくさん映画にしているので素晴らしい。
日本も見習って欲しいところ。

韓国の負の歴史を題材とした映画はコチラ。

■工作 黒金星と呼ばれた男

■タクシー運転手 約束は海を越えて

1987、ある闘いの真実の作品情報

■監督:チャン・ジュナン
■出演者:キム・ユンソク ハ・ジョンウ ユ・ヘジン キム・テリ
■Wikipedia:1987、ある闘いの真実
■映画批評サイト「rotten tomatoes」によるスコア
TOMATOMETER(批評家):80%
AUDIENCE SCORE(観客):94%

1987、ある闘いの真実を見れる配信サイト

U-NEXT:-
Hulu:○(見放題)
Amazonプライムビデオ:○(吹替・有料)○(字幕・有料)
TSUTAYA TV:○(有料)
Netflix:-
※2020年6月現在

-⑨組織のなかで

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

関連記事

名前:柴田
年齢:30代
小説家志望。
趣味は映画、読書、ゲーム(最近はスプラトゥーン2)、お笑い、筋トレなど。
長所は人を楽しませることに一生懸命、短所は顔が丸い。