映画の海

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⑩スーパーヒーロー

映画『カーズ』ネタバレなしの感想。ワガママで孤独な新人天才レーサーが地図から消えた田舎町に迷い込む

投稿日:6月 10, 2020 更新日:

■評価:★★★☆☆3.5

「繋がり」

【映画】カーズのレビュー、批評、評価

2012年に、山P(山下智久)がアメリカにある『ルート66』という道を車で走って一人旅をするドキュメンタリー企画が3か月に渡って放送された。
当時、私は英語を学んでいたため、非常に親近感を持ってこの番組を毎週、楽しみにしていた。

ルート66はアメリカ合衆国中東部のイリノイ州シカゴから西部のカリフォルニア州サンタモニカを結ぶ、全長3755kmの旧国道である。
州間高速道路の発達によりその役目を終え、1985年に廃線となった。

活発だった当時、大陸を横断するこの道は、アメリカ西部の発展を促進した重要な国道だった。
そのため映画や小説、音楽などに多く登場し、今なおアメリカのポップ・カルチャーの題材にされている。

2005年、カーレース「ピストン・カップ」シーズン最終レース「ダイナコ400」で、優勝を狙う新人天才レーサーのライトニング・マックィーン。マックィーンにとってのライバルは、今シーズンで引退する伝説のレーサーキングことストリップ・ウェザーズと万年2位のベテランレーサー、チック・ヒックスの2台だ。マックィーンは奮闘するが、自分を含む3台が同着となり、改めて優勝決定戦が1週間後にカリフォルニアで行われることになる。マックィーンはカリフォルニアへの道中、トラブルに巻き込まれて、ルート66沿いの“地図から消えた古い町、ラジエーター・スプリングス”に迷い込む。早くレース場に到着したいマックィーンだったが、自らが滅茶苦茶にした道路の補修を命じられ、しばらく町に留まる羽目になる。

ストーリーが想像以上に素晴らしかった。

主人公のマックィーンは人との繋がりを忌避する一匹狼だ。
レース中でも、ピットクルーの指示を無視して、自分の判断でやりたい放題。
結果的に最終レースではトラブルに見舞われ、単独での優勝を逃す。
それでもマックィーンは懲りないし、自身のスポンサーすらも陰でバカにする始末だ。

序盤の時点で、観客の多くはマックィーンを好きになれないだろう。
ピクサーのアニメ映画で、ここまで性格の悪いキャラクターが主人公であるのにビックリである。

ワガママ王子のマックィーンは再びトラブルに巻き込まれ、田舎町「ラジエーター・スプリングス」に辿りつく。
ここの町民(車)は家族のように横の繋がりを大事にしている、温かみのある連中だ。

最初こそ、町民たちはマックィーンを嫌悪する。
マックィーンが町の道路をボコボコにしちゃったから。
だが、元来穏やかな性格の町民たちは、マックィーンの良い面を掬い、見直すようになる。

ルート66沿いのこの町はかつては栄えていた。
だが、近くにできた高速道路のせいで、ルート66は廃線となり、町は寂れてしまった。
町民らは時代の移り変わりに取り残された憐れな人(車)たち。
町民らは再び、町を復興させる未来を夢見ている。
マックィーンは町民らの心境を知り、少しずつ心に変化が訪れる。

かつては、当たり前のように使っていた古いものって、妙な切なさがある。
これはトイ・ストーリー3でも描かれている。
おもちゃは持ち主が大人になったら、いつか捨てられてしまう。

現実問題、古くなったものがかつての隆盛を取り戻す可能性はほぼゼロだ。
その時は最新でも、所詮は次の新しいものへの橋渡しでしかない。
カセットプレイヤーも、MDプレイヤーも、MP3プレイヤーも、すべて廃れた。

人だってそう。
お笑い芸人やミュージシャン、俳優。
誰もが旬を迎えたら、いつか必ず人気は落ちる。

だからこそ、切ない。
どう考えても「ラジエーター・スプリングス」がかつての賑わいを取り戻すのは現実的に難しい。
町民らに同情し、思わず画面に食い入って見入ってしまった。

景色も良かった。
「ラジエーター・スプリングス」は、アメリカの広大な荒野のど真ん中に位置している。
こんな美しい荒野を車で思いっきりかっ飛ばせたらどんなに気持ち良いだろうか。
マックィーンがたびたび全速力で走るシーンは、爽快感があって良かった。
今はコロナ禍真っただ中なので、よりアメリカ旅行をしたくてたまらない気持ちが駆り立てられた。

あとこれは人によるとは思うのだが、私は人型のキャラクターのほうが感情移入しやすいと思った。

本作は命が宿った車のキャラクターたちが織りなす物語。
魅力的だと思えるキャラは多い。
特に、田舎町の住民の一人で、出っ歯で抜け感のあるメーターは印象的だった。
お笑い芸人のぐっさん(山口智充)の声もフィットしていて、結構笑える。
もちろんメーターは魅力的なのだが、愛着の持てるレベルにまで達しない。

例えば、人外キャラがメインの映画『ズートピア』がある。
動物モチーフの人外キャラだが、造形は人型に寄せている。
そのため、ズートピアは好きなキャラは多い。
主演の二人はもちろん好きだし、特にナマケモノの役所の職員には心を奪われた。

ズートピアとカーズとの大きな違いはやはり、人型かどうか、だ。
人型のキャラクターのほうが親近感が沸く。

あとカーズは、表情による感情が伝わりづらい点も挙げられる。
人って表情である程度、感情を予測する生き物。
だが、カーズのキャラは表情での感情が読み取りづらい。
特に目の動きでは、ぜんぜん感情が伝わってこなかった。

命が宿った車たちの物語、いうコンセプトは面白いけど、良くも悪くも感情移入の限界を感じた気がする。
『車という非生物が原因なのかな?』とも思ったんだが、人型のロボのキャラには親近感を覚える。
『クロノトリガー』というゲームに出てきたロボのキャラは人型だが、妙に魅力的だった。

ストーリーは非常に良く出来ているので、多くの人に薦めたい。

ハートフルな物語の傑作はコチラ。

■ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア

■バジュランギおじさんと、小さな迷子

■グリーンブック

カーズの作品情報

■監督:ジョン・ラセター ジョー・ランフト
■出演者:ライトニング・マックィーン(オーウェン・ウィルソン、土田大) メーター(ラリー・ザ・ケーブル・ガイ、山口智充) サリー(ボニー・ハント、戸田恵子)
■Wikipedia:カーズ(ネタバレあり)
■映画批評サイト「rotten tomatoes」によるスコア
TOMATOMETER(批評家):75%
AUDIENCE SCORE(観客):79%

カーズを見れる配信サイト

U-NEXT:○(有料)
Hulu:-
Amazonプライムビデオ:○(吹替・有料)○(字幕・有料)
TSUTAYA TV:○(有料)
Netflix:-
※2020年6月現在

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名前:柴田
年齢:30代
小説家志望。
趣味は映画、読書、ゲーム(最近はスプラトゥーン2)、お笑い、筋トレなど。
長所は人を楽しませることに一生懸命、短所は顔が丸い。