映画の海

約1100本の映画を鑑賞した小説家志望の男が、ネタバレなしで映画のレビューや解説を書いてます。(直近で観たものに限る。たまにアニメ・ドラマ・小説も)面白いおすすめ映画を探している人向けのブログ。

⑥バディとの友情

映画『アジョシ』ネタバレなしの感想。孤独な男が、誘拐された近所に住む少女を助けにむかう

投稿日:6月 12, 2020 更新日:

■評価:★★★★☆4.5

「おじさんミーツガール」

【映画】アジョシのレビュー、批評、評価

私は中学の頃、好きなおじさんがいた。
とにかく勉強が嫌いだった私は、当時、ゲームばっかりしていた。
学校が終わってからはずっとFFやドラクエに熱中していた。
ゲームをしないときは漫画を読んでいた。
ちょっとでも勉強に絡むように思える物事を徹底的に弾いた。

当時、私は塾に通っていた。
なぜ通い出したかは覚えていないが、親は辞めさせてくれないので、仕方なく通っていた。
もちろん授業は退屈だったし、出された宿題をやった記憶もない。

ある日、そんな塾に新しい講師がやってきた。
顔はいつもてかり、メガネをかけ、若干臭く、腹が出た背の小さいおじさんの社会の先生だった。

「モテなさそうな変なおじさんだなあ」と、私は幼いながら心の中でバカにした。
だが、このおじさんはとんでもないおじさんだった。
私の筋金入りの勉強嫌いの感性を捻じ曲げたのだ。

おじさんは自分の容姿が滑稽であると理解していて、自らの肉体を武器として使って授業をしたのだ。
今でも覚えているのは運慶、快慶だ。
運慶、快慶は鎌倉時代の仏師。
おじさんは生徒たちに二人の名前をおぼさせるため、運慶はしゃがんで体を震わせて踏ん張り、「ウンコ」をする仕草で。
直後に立ちあがって「爽快」な表情で快慶を示した。

私はあまりの衝撃で、ちょっとしたパニックに陥った。
今まで勉強は退屈なものだと思っていた。
だが、教える人次第で、こんなにも面白くなるとは思いもしなかった。

一時的にだが、社会が好きになった。
おじさんも好きになったし、何ならこの塾の生徒みんながおじさんの虜になった。

子供からしたら大人は敵みたいな存在だ。
だが、子供のヒーローになるような魅力的な大人は一人はいたりする。
本作はそんなおじさんヒーローの物語となる。

元特殊要員のチャ・テシクは現在、質屋を経営しながら細々と過ごしていた。隣家に住む少女チョン・ソミはテシクを「アジョシ」(おじさん)と呼び、頻繁に質屋を訪ねていた。そんなソミを鬱陶しく思いながらも、テシクは少しずつ心を開いていく。ある日、ソミが万引きを働いたと警察に捕まる。親の名前を訊ねられている瞬間に、テシクは居合わせる。ソミはテシクを「あの人がパパ」と指差すが、テシクは無視して立ち去った。後日、クスリ事件に関与していたソミの母とソミの二人は拉致られてしまう。

想像を絶する素晴らしいストーリーに唖然。

ストーリーの設定や流れは、名作『レオン』を踏襲する。
レオンは『クスリ関連で家族の命を奪われた少女マチルダは、近所に住むおじさん、殺し屋のレオンの元に逃げ込む』といった内容。

レオンと違い、本作は主人公テシクの背景が実に克明に描かれる。
なぜ、テシクは鬱屈した孤独な生活を送るようになったのか。
なぜ、テシクは少女ソミを当初は冷たく突き離すのか。
終盤に差し掛かる辺りで映される、テシクの過去の回想シーンがすべてを示す。

言及せずにはいられないのが異様な迫力を放つアクションシーン。
元特殊部隊のテシクが扱うのは人の命を奪う格闘術。

あまりに速いアクションシーンは迫力が抜群。
テシクを演じたウォンビンは相当に訓練したのではないだろうか。
一度だけ見せる、肉体美も凄すぎ。
あまりのマッチョに笑えるレベルである。

少女ソミも良かった。
テシクは一度、ソミが助けを求める際にスルーをしてしまう。
テシクはそのことについて後で謝るのだが、ソミはこう返事をする。
「おじさんを嫌いになれない。もしおじさんを嫌いになったら、好きな人がいなくなっちゃうから」

相当に追いこまれていないとこんなセリフは吐けない。
どれだけソミは孤独に苦しんでいるのだろうか。
この言葉には、胸をきゅっと締め付けられた。

こんな感じでこの映画、刺さるセリフが多い。
特に心を奪われたのは、テシクが敵のアジトに侵入したとき、敵のボスに「お前は何者なんだ」と尋ねられたときの返し。
ウルっと来てしまった。
この瞬間、観客は一層にテシクを好きになるだろう。
私(男)もこんなおじさんに守られたい。

悪役が胸クソに振り切っているのも良かった。
ソミとソミの母を誘拐したのは、クスリ取引や臓器売買の元締めであるマンソク兄弟。
これがまた救いようのないクズで、金のためなら、人の尊厳を軽いノリで踏みにじる。
1秒でも早く、おじさんにこいつらを叩きのめしてほしいと願いながら、画面にのめりこんだ。

悪役が最低最悪の連中なので、ハードなシーンも多い。
グロテスクな描写が苦手な人も多いだろうが、シナリオの出来栄えは素晴らしいので、多くの人に見てもらいたい。
韓国映画、恐るべし。

余談だが、おじさんの吹き替えを担当した東地宏樹の声がめちゃ渋で良すぎ。

年の差男女コンビの傑作はコチラ。

■ブラインド

■恋は雨上がりのように

■レオン

アジョシの作品情報

■監督:イ・ジョンボム
■出演者:ウォンビン キム・セロン
■Wikipedia:アジョシ(ネタバレあり)
■映画批評サイト「rotten tomatoes」によるスコア
TOMATOMETER(批評家):100%
AUDIENCE SCORE(観客):90%

アジョシを見れる配信サイト

U-NEXT:○(見放題)
Hulu:-
Amazonプライムビデオ:○(吹替・有料)○(字幕・有料)
TSUTAYA TV:○(有料)
Netflix:-
※2020年6月現在

-⑥バディとの友情

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名前:柴田
年齢:30代
小説家志望。
趣味は映画、読書、ゲーム(最近はスプラトゥーン2)、お笑い、筋トレなど。
長所は人を楽しませることに一生懸命、短所は顔が丸い。