■評価:★★★☆☆3.5
「政権闘争」

【映画】帝一の國のレビュー、批評、評価
本作は『ライチ☆光クラブ』の古屋兎丸による原作漫画の映画化となる。
私は古屋兎丸著作を一作も読んでいないが、ぶっ飛んだ作品が多いといった印象がある。
少年たちが秘密基地『光クラブ』を築いて、ある目的のために機械を作るが、徐々に少年たちの絆が崩壊する『ライチ☆光クラブ』。
容姿端麗・成績優秀な男の破天荒な生き様を描いた太宰治の原作を現代風にリメイクした『人間失格』。
万人受けとはちょっとズレたダークな世界観が多い中、本作は一際、爽やかな作風となっている。
昭和時代。赤場帝一は「総理大臣になり自分の国を作る」という野望のため、全国屈指の頭脳を持つ800人のエリート学生たちが通う、日本一の超名門海帝高校に入学する。この学校でトップ=生徒会長を務めた者には、将来、内閣入りが確約されている。赤場帝一は2年後の生徒会長の座を狙い、早くも動き始める。
世界観が突き抜けていて最高。
漫画原作なだけあって、キャラクターの誰もがぶっ飛んだ個性が光っていて良い。
帝一は頭が良くてピアノの腕もピカイチ。
勝つためならどんな手段でも択ばないため、なりふり構わない滑稽な挙動が逐一、見られる。
帝一は謎の野心で海帝高校の生徒会長を狙う。
海帝高校で生徒会長になると、総理大臣への道に近づくのだが、なぜ、総理大臣になりたいのかは後に明かされる。
大鷹 弾も素晴らしい。
帝一の同級生で、雑草魂キャラ。
エリートが集まる中で、こいつは外部入学試験で入ってきた努力家。
病気の母を抱え、さまざまなバイトを掛け持ちして生活費や学費を稼ぎながら、弟たちを食わせる。
分かりやすい玄人ヒーローで、周りの学生とは異彩を放つ。
ある意味、一番、主人公的な清廉なキャラクター。
弾の一線を画す信念が、逐一、盤面を狂わすのが実に面白い。
終始、観客は弾の言動に目が行くことになる。
私が一番好きだったのはこのキャラ。
ちょっと残念だったのは、帝一の右腕兼、親友の榊原 光明。
金髪のおかっぱ。
同性愛者の匂いがあり、帝一の願いは何でも叶える。
帝一と付き合っているヒロイン・白鳥 美美子にも嫉妬するほどに、帝一にメロメロ。
このキャラには、登場時から不穏な匂いを感じていた。
というのも、なぜ帝一にべたぼれするのか理由が一切描かれないからだ。
「こいつ、離反でもするんじゃないか」って思いながら鑑賞していたが、最後まで一貫して、普通の良いキャラだった。
ちょっと肩透かしだが、私の深読みでもあるので、特に大きな問題ではない。
ストーリーにも言及したい。
生徒会長になるには、現在の生徒会長に生徒会長候補として指名してもらう必要がある。
現在、3年生で生徒会長を務めているのが堂山 圭吾。
堂山 圭吾が生徒会長候補として選出した2年生は、氷室ローランド、森園億人、本田章太の3人。
帝一は生徒会長となる可能性のある人物を3人の中から見い出し、プライドを捨てて“忠犬”となって近づこうと試みる。
この映画のメインストーリーは、上記3人による、2年生の生徒会選となる。
帝一の生徒会選じゃないのは意外だったが、結構楽しめた。
票集めの方法は下らなくて、ストーリー自体は正直、凡庸である。
詳細は伏せるが、氷室ローランドの作戦はあまりに想像の範疇だし、森園億人のグランドで行うとある作戦は意味不明の極みである。
だが、本作はキャラクターがとにかく個性的で魅力的。
各々異なる思惑を抱える彼らが、ただぶつかって心理戦を繰り広げているだけで楽しい。
後半に明かされる帝一が総理大臣になりたい理由もかなり滑稽。
それでも、帝一自身が魅力的なので、ついつい応援して見入ってしまった。
完全なキャラクター映画。
『翔んで埼玉』や『かぐや様は告らせたい』『シティーハンター THE MOVIE 史上最香のミッション』が好きな人向き。
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帝一の國の作品情報
■監督:永井聡
■出演者:菅田将暉 志尊淳 竹内涼真 千葉雄大 間宮祥太朗 永野芽郁
■Wikipedia:帝一の國(ネタバレあり)
帝一の國を見れる配信サイト
U-NEXT:○(見放題)
Hulu:-
Amazonプライムビデオ:○(見放題)、原作
TSUTAYA TV:-
Netflix:○(見放題)
※2020年6月現在