■評価:★★★★☆4
「自由・希望」

【映画】それでも夜は明けるのレビュー、批評、評価
1841年、自由黒人ソロモン・ノーサップはワシントンD.C.にて誘拐され奴隷として売られる。
解放されるまで12年間、奴隷生活を送る。
本作は、当時の生活をつづった著書『奴隷体験記(Twelve Years a Slave)』を原作とした史実の物語である。
自由黒人とは、法的に奴隷ではない黒人という地位にあった人々を指す。
多くの黒人は17世紀から、イギリスのアメリカ植民地時代から奴隷として連れてこられた。
奴隷ではなく、仕事のためアメリカに来た黒人や主人から解放されたりなど、一部は自由黒人としての地位にあった。
1841年、ニューヨーク州サラトガに住むソロモン・ノーサップは自由黒人のヴァイオリニスト。ノーサップは妻と二人を子供と共に、幸せな日々を過ごす。ある日、ノーサップは二人組の男に金儲けができる周遊公演の誘いを受け、参加する。ある晩、ノーサップは二人の男に薬漬けにされ、昏睡状態のまま奴隷商人に売られてしまう。「私は北部の自由黒人だ」と主張するが、ムシされる。材木商のウィリアム・フォードに購入され、奴隷生活を余儀なくされる。
凄い内容だった。
特記すべきは、奴隷制が存在した時代の奴隷生活を生々しく描いている点。
誘拐されたノーサップを含む奴隷たちの仕事は、綿花畑で綿を取る作業。
あんなにフワフワした軽そうな綿を1日に90キロ取るのがノルマとされている。
下回ったらムチ打ち。
昨日よりも下回ったらムチ打ち。
何だか気にくわない黒人がいたらムチ打ち。
黒人たちの背中は例外なく、ムチを打たれたおびただしい傷跡がある。
ただの地獄である。
他にも、ご主人様に夜中に急にたたき起こされて踊らされたり。
あるいは黒人少女がご主人様の慰み者として尽くしたり。
人としての尊厳を踏みにじるのが合法的に許されているのだ。
とあるキャラがぼそっと口にしていたが、まさに「今はアメリカという国が病気」である。
余談だが、もっと惨いシーンもあるので、観る際は覚悟を決めるといい。
観ていて最高に陰鬱な気持ちになったし、ただただ胸糞である。
とはいえ、リアルな奴隷の生活を知れたのは、良い鑑賞経験となった。
映画は様々な歴史を映像を通じて直感的に知れるので、素晴らしい媒体である。
辛い映画ではあるが、本作を観て映画好きで良かったと心から思った。
勧善懲悪のエンタメとして描いているのは良かった。物凄く観やすい。
ノーサップはいくつかの農場を転々とする。
まともな感性を持つ白人はいるのだが、同時に、どこの農場にも一人はクソみたいなヤツが存在する。
「正義の味方が登場して、この憎き領主らに鉄槌を下してくれ」と願いながら鑑賞していた。
このように領主は徹底的に悪に徹して描かれるのだ。
奴隷制という題材を扱っているが、難しい描写は皆無。
センシティブな内容を、誰にでも見やすく描いているのは素晴らしい。
アカデミー賞の作品賞を受賞したのも納得の出来栄え。
余談だが、以下の15の州は、南北戦争前に奴隷が合法的に認められていた奴隷州である。
デラウェア
メリーランド
バージニア
ノースカロライナ
サウスカロライナ
ジョージア
フロリダ
アラバマ
テネシー
ミシシッピ
ケンタッキー
ミズーリ
アーカンソー
ルイジアナ
テキサス
ノーサップが誘拐されたワシントンD.C.はコロンビア特別区で、どの州にも属さない連邦政府の直轄地となる。
場所は奴隷州であるメリーランド州とバージニア州に隣接する。
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■ヒトラーの忘れもの
それでも夜は明けるの作品情報
■監督:スティーヴ・マックイーン
■出演者:キウェテル・イジョフォー マイケル・ファスベンダー ルピタ・ニョンゴ
■Wikipedia:それでも夜は明ける(ネタバレあり)
■映画批評サイト「rotten tomatoes」によるスコア
TOMATOMETER(批評家):95%
AUDIENCE SCORE(観客):90%
それでも夜は明けるを見れる配信サイト
U-NEXT:○(見放題)
Hulu:○(見放題)
Amazonプライムビデオ:○(字幕・見放題)
TSUTAYA TV:○(見放題)
Netflix:○(見放題)
※2020年7月現在