映画の海

約1100本の映画を鑑賞した小説家志望の男が、ネタバレなしで映画のレビューや解説を書いてます。(直近で観たものに限る。たまにアニメ・ドラマ・小説も)面白いおすすめ映画を探している人向けのブログ。

⑦なぜやったのか?

映画『聖なる鹿殺し』ネタバレなしの感想。主人公が一人の少年を家に招き入れると、子供たちに異変が起きる

投稿日:7月 22, 2020 更新日:

■評価:★★★★☆4

「追い詰められた人間は道を踏み外す」

【映画】聖なる鹿殺しのレビュー、批評、評価

本作は、2018年に公開された映画を対象とした第91回アカデミー賞で、作品賞を含む9部門にノミネートされた『女王陛下のお気に入り』の監督ヨルゴス・ランティモスの作品となる。

ベルギー出身のヨルゴス・ランティモスは2012年、イギリスの大手一般新聞『ザ・ガーディアン』紙にて「この世代のギリシャの映画監督のなかで最も才能のある人物」と評される、将来、有望な監督である。

『女王陛下のお気に入り』は私も鑑賞済みでこのブログでも記事にしているが、随分とイカれたストーリーで驚かされた。
史実に基づく話だが、生々しい人間模様を描いていて、私は非常に好みの映画だった。
本作も期待して鑑賞したが、期待を上回る見事な怪作だった。
ミステリー要素が強いので、ネタバレに気をつけて、感想を書いていきたい。

心臓外科医のスティーブンは、美しい妻と二人の子供と、郊外の豪邸で暮らしていた。スティーブンには、もうひとり頻繁に会っている少年マーティンがいた。スティーブンはマーティンに腕時計をプレゼントしたりと、何かと気にかけていた。ある日、マーティンを家に招き、家族に紹介する。だがその日から奇妙な現象に襲われる。子供たちが突然、歩けなくなったのだ。家族にいったい何が起こったのか。

映画好きが好む映画といった印象。
これは凄い。
見終わったあとは興奮して、人の感想などをネットで漁ってしまった。

冒頭から不穏な香りが漂う。
独特な会話の間。
極限まで削ぎ落とした簡素なセリフを、登場人物たちはゆったりと交わす。

主人公スティーブンは外科医で、二人の子を持つ父。
娘には優しいが、なぜか末っ子の息子には厳しい。
長い髪を切らそうとしたり、庭の水はお前がやれと命令したり。

謎の少年マーティンも気になる。
なぜかスティーブンと仲良さげな青年。
いったい誰なんだ。
何のためにスティーブンはマーティンに献身的とも取れる接し方で尽くすのか。

上空から見下ろすカメラアングルも不気味な音楽も含め、あらゆる角度から香る不穏不穏不穏。
すべてが違和感。
いったい何が行われているのか。
先の展開が気になりすぎて画面に釘付けである。

中盤に差し掛かる辺りで謎は解かれるので、ぜひとも直接見て確認してもらいたい。
謎が解けてからが本番である。
スティーブン一家はいったいどんな末路を迎えるのか。
クライマックスの見せ方も狂っていて最高である。

ヨルゴス・ランティモス監督の感性は、明らかに他の普通の映画監督と一線を画す。
頭一つ飛び抜けた能力を持つというか、感性が普通と異なるといった表現が的確。

ぜひとも、この監督のすべての作品を鑑賞したいと思った。
そのくらい作家性が際立っているし、映画業界において、非常に存在価値の高い監督の一人である。

普通のエンタメ映画を求める人には向いていないかもしれない。
結末もトリッキーなので、人を選ぶ。
ただ、普通じゃない映画を好む人はハマる。

もっとストーリーについて語りたいんだが、ネタバレが怖いので、キャラクターに触れたい。

少年マーティンが、すごく良い。
マーティンは一切笑わない。
笑わないってすごくいい。
感情が見えないから。

だから観客は想像する。
マーティンは何者だ。何を考えている。何が狙いだ。
観客が巡らす思考の奔流が、マーティンの表情に色をつけて補完するのだ。

マーティンはやけに汚いパスタの食い方をするんだが、白いTにソースを飛び散らせるのが良い。
マーティンのキャラクターを上手く表現している。

あとスティーブンの妻に扮するニコール・キッドマンもいい。
ニコール・キッドマン自身、『ドッグヴィル』というカルト映画にも出ているが、本作も普通じゃない役である。
車の中で行うとあるシーンが特に印象的。
キレイな人だが、若干、クセのあるルックスを持つ女優なので、ネジ一本外れた役のがしっくり来る。

とにかく、関心が湧いたら早く鑑賞することをおすすめする。
語りたくなる類なので、誰かと一緒に観ても良い。

何となく、韓国のとある有名映画にも似ている構造。
明かすとネタバレになるので控えるが、鑑賞したらすぐにわかると思う。

不穏に満たされた映画はコチラ。

■複製された男

聖なる鹿殺しの作品情報

■監督:ヨルゴス・ランティモス
■出演者:コリン・ファレル ニコール・キッドマン バリー・コーガン
■Wikipedia:聖なる鹿殺し
■映画批評サイト「rotten tomatoes」によるスコア
TOMATOMETER(批評家):80%
AUDIENCE SCORE(観客):63%

聖なる鹿殺しを見れる配信サイト

U-NEXT:○(見放題)
Hulu:○(見放題)
Amazonプライムビデオ:○(吹替・有料)○(字幕・見放題)
TSUTAYA TV:○(有料)
Netflix:-
※2020年7月現在

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名前:柴田
年齢:30代
小説家志望。
趣味は映画、読書、ゲーム(最近はスプラトゥーン2)、お笑い、筋トレなど。
長所は人を楽しませることに一生懸命、短所は顔が丸い。