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映画『判決、ふたつの希望』ネタバレなしの感想。レバノン国内のパレスチナ難民問題を描く

投稿日:

■評価:★★★☆☆3.5

「民族問題」

【映画】判決、ふたつの希望のレビュー、批評、評価

本作は、第90回アカデミー賞外国語映画賞にレバノン代表作として出品されている。
2017年公開の映画を対象にしていて、
『ナチュラルウーマン』(チリ)
『判決、ふたつの希望』(レバノン)
『ラブレス』(ロシア)
『心と体と』(ハンガリー)
『ザ・スクエア 思いやりの聖域』(スウェーデン)

の5作が同年の外国語映画賞にノミネートされ、『ナチュラルウーマン』が受賞を果たしている。

レバノンに住む、自動車修理工場を経営するトニー・ハンナはクリスチャン。国内のパレスチナ難民排除を訴えるキリスト教系の政党の献身的なメンバー。違法建築の修繕を請け負う業者として働くヤーセル・サラーメは、トニーの家のベランダから突き出る排水管を見つける。排水を公道に垂れ流す排水管が違法であると伝えるが、トニーは聞く耳を持たない。そのため、勝手に修繕をするが、見つけたトニーは、ハンマーで直された排水管を破壊する。ついヤーセルは「クソ野郎」と罵しると、トニーはその話し方でヤーセルがパレスチナ難民だと知る。トニーはヤーセルの雇用主に「クソ野郎」発言に対する謝罪を要求する。後日、雇用主はヤーセルをトニーの自動車修理工場に連れて行き、直接謝罪させようとするが、場がこじれてヤーセルはトニーを殴ってしまう。トニーは、ヤーセルに対して訴訟を起こすことに。

予想の斜め上を行く展開に唖然とさせられる。
当初は排水管から流れてきた水がかかったとか、その程度の些細な出来事。

次第に互いの政治思想がぶつかり合い、気づくと二人だけの問題には収まり切れない、スケールのでかい争いへと発展する。
本作は政治思想がメインテーマなので、題材としてはお堅い。
だが、スケールが大きくなっていく様はエンタメ的なワクワク感を煽られるので、かなり楽しめる内容だった。

実際に、ジアド・ドゥエイリ監督が首都ベイルートでべランダで水やりをしていた際に、配管工に水がかかって口論になったという。ベイルートでは、こういった些細な問題がヒートアップしてメディアに報じられ、国中が大騒ぎになる事件がよくあり、本作の着想元となっている。

本作のメインキャラクターのトニーとヤーセルの両者とも、それぞれの思想を持つに至る理由がある。
裁判を通じて、観客が思いもしない両者の裏の顔が明かされ、思わぬ方向に展開していく。
最も心を揺さぶられる箇所である。

本作を観ていて、弁護士はサイコパスでしか務まらない仕事であると認識した。
ひたすら、トニーの弁護士は被告であるヤーセルを糾弾する。
仕事ではあるのだが、違和感でしかない。

パレスチナ難民であるヤーセルだって言い分や事情があるからだ。
ヤーセルの辛い部分も、本編では分かりやすく描かれている。
観客はヤーセルの事情を知った状態で、トニーの弁護士はヤーセルの事情を汲もうとせず、雇い主であるトニーを優位に立たせるために、糾弾を徹底する。

裁判だと普通なのかもしれない。
裁判は、どっちかが優位に立つための諍いの場だ。
だが、あまりに非人道的に見えて、見ていて辛くなった。

確かにトニーの弁護士は本作において、ヒール的立ち位置だ。
トニーと同じく、弁護士もパレスチナ難民排除の思想を持つ。
つまり、二人の裁判は代理戦争である。

本来、理想とするコミュニケーションの形の真逆な行為を見せられた気分で、何だかやるせない気持ちになった。
ただただ、自分の思想を押し付け、一人の人生を崩壊へと導く。
観ていて滑稽だし、「早く裁判が終結してほしい」と願いながら鑑賞していた。

話は逸れるが、私が仮に弁護士になれる頭を持っていたとしても、弁護士という仕事はやり通せないと実感した。
正義と悪を振り分ける作業は責任が重すぎる。
故にサイコパスが適任という意味だ。

何より、赦すという行為は難しい。
最近、キリスト教徒弾圧をテーマとした「沈黙」を鑑賞したが、やはり、ここでも赦す行為への葛藤が描かれる。
ついつい自分の立場になって考えながら鑑賞した。
あなたは自身の尊厳を踏みにじる相手を赦せるだろうか?

私はアラブ情勢に詳しくないため、ついていけない箇所もあった。
Wikipediaに最後まであらすじが書かれているので、鑑賞後に確認することをお勧めする。

レバノンが舞台の映画はコチラ。

■存在のない子供たち

判決、ふたつの希望の作品情報

■監督:ジアド・ドゥエイリ
■出演者:アデル・カラム カメル・エル・バシャ リタ・ハイエク
■Wikipedia:判決、ふたつの希望(ネタバレあり)
■映画批評サイト「rotten tomatoes」によるスコア
TOMATOMETER(批評家):87%
AUDIENCE SCORE(観客):89%

判決、ふたつの希望を見れる配信サイト

U-NEXT:○(見放題)
Hulu:-
Amazonプライムビデオ:○(字幕・見放題)
TSUTAYA TV:○(有料)
Netflix:-
※2020年7月現在

-②金の羊毛

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名前:柴田
年齢:30代
小説家志望。
趣味は映画、読書、ゲーム(最近はスプラトゥーン2)、お笑い、筋トレなど。
長所は人を楽しませることに一生懸命、短所は顔が丸い。