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⑨組織のなかで

映画『籠の中の乙女』ネタバレなしの感想。子供たちに一切の外出を禁じて育てる家族を描く

投稿日:

■評価:★★☆☆☆2.5

「家父長制」

【映画】籠の中の乙女のレビュー、批評、評価

『聖なる鹿殺し』『女王陛下のお気に入り』のギリシャ人監督ヨルゴス・ランティモスの初期作。
『籠の中の乙女』は2009年に公開され、第62回カンヌ国際映画祭にて「ある視点」部門のグランプリを受賞。
アカデミー外国語映画賞にもノミネートされた。

ギリシャの田舎町。ある裕福な家族の両親は、3人の子供たちに一切の外出を禁じ、外界との接触を遮断して育てていた。子供たちには名前も付けず、「外の世界は恐ろしいものであふれている」と洗脳し、父親は家族の中で絶対的な地位に君臨していた。思春期を迎えた長男のため、父は性処理用の女性、クリスティナを雇う。クリスティナは長男のみに飽き足らず、長女にまで手を出し始める。ある日、クリスティナから受け取ったビデオがきっかけに、長女は外の世界に関心を抱くようになる。

一言で表現するなら、ヘンテコな映画だった。
設定は面白い。
異常なほどに過保護な両親は、子供たちを一歩の外に出さずに育てる。
(厳密には庭までは出られる。だが高い塀に阻まれていて、外の様子は視認不可)

子供とは言っても、彼らは二十歳は超えている年齢。
だが、彼らは何の疑いもなく、籠の中の生活を満喫している。
子供たち同士で「熱湯我慢ゲーム」とかよくわからないゲームをしたり、へんてこな踊りでキャッキャ楽しむのだ。

衝撃だったのは、性。
当然、子供は例外なく性欲が湧く。
父親は何と、会社の部下らしき女性クリスティナを金で雇って、息子の相手をさせるのだ。
むちゃくちゃである。

ここで興味がわくのが父親の動機だ。
なぜ、ここまで徹底して外の世界との断絶を図るのか。(ちなみに父は、普通に外に仕事に出ていく)
だが、理由は深堀りされない。
あくまで、本作は閉塞的な暮らしを強いられた子供の視点で描かれる。
このように設定は実に興味深い。

だが、不満点はかなり多い。
第一に、ストーリーが全く進行しない。

本題となる事件は、娼婦の役割の女性クリスティナが、長女にとあるビデオを渡す流れである。
このビデオの映像は画面には映されないが、どうやら外の世界の何かが流れている模様。
長女はビデオによって外の世界に興味を湧いてしまうのだ。
果たして、長女はどんな行動を起こすのか。

このビデオ事件は、本編が2/3を過ぎたあたりでようやく訪れる。
あまりに遅すぎる。
ビデオの展開を迎えるまでは、正直、何を描きたいのかよくわからないホームビデオのような映像が垂れ流される。
なかなか退屈な時間だった。

尖りすぎてて万人受けするような映画ではない。
まだまだ監督は発展途上の段階であるといった感じである。

で、本作を見てもっとも興味深かったのが、監督が一貫して描くテーマである。
監督の作品を、私は『聖なる鹿殺し』『女王陛下のお気に入り』の2作だけ見ている。
共通点として、権力にあらがう主人公が描かれるのだ。

『聖なる鹿殺し』では子供が大人に。
『女王陛下のお気に入り』では、没落貴族が雇用主に。
そして本作は、絶対的な権力を持つ父に対して、子供が抗いを見せる。

ヨルゴス・ランティモス監督は両親に虐待とまではいかないにしても、抑圧された暮らしを強いられたのではないだろうか。
もしかしたらインタビュー等で語られているのかもしれないので、暇なときにチェックしたい。

ヨルゴス・ランティモスは回を重ねるごとに作品のクオリティが増している。
今後の作品が楽しみな監督の一人である。

権力に逆らう主人公を描く作品はコチラ。

■聖なる鹿殺し

■女王陛下のお気に入り

籠の中の乙女の作品情報

■監督:ヨルゴス・ランティモス
■出演者:クリストス・ステルギオグル ミシェル・ヴァレイ アンゲリキ・パプーリァ マリー・ツォニ クリストス・パサリス アナ・カレジドゥ
■Wikipedia:籠の中の乙女(ネタバレあり)
■映画批評サイト「rotten tomatoes」によるスコア
TOMATOMETER(批評家):93%
AUDIENCE SCORE(観客):76%

籠の中の乙女を見れる配信サイト

U-NEXT:○(見放題)
Hulu:-
Amazonプライムビデオ:○(字幕・見放題)
TSUTAYA TV:○(有料)
Netflix:-
※2020年7月現在

-⑨組織のなかで

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名前:柴田
年齢:30代
小説家志望。
趣味は映画、読書、ゲーム(最近はスプラトゥーン2)、お笑い、筋トレなど。
長所は人を楽しませることに一生懸命、短所は顔が丸い。