■評価:★★★★☆4
「信仰心」

【映画】沈黙-サイレンス-のレビュー、批評、評価
『タクシードライバー』
『レイジング・ブル』
『キング・オブ・コメディ』
『グッドフェローズ』
『ギャング・オブ・ニューヨーク』
『ディパーテッド』
『ウルフ・オブ・ウォールストリート』
名立たる名作を世に送り続けてきたマーティン・スコセッシ監督による、日本を舞台にした時代劇となる。
原作は遠藤周作の小説『沈黙』。
17世紀、江戸時代初期― ポルトガルで、イエズス会の宣教師であるセバスチャン・ロドリゴ神父とフランシス・ガルペ神父のもとに、日本でキリスト教の布教活動をしていたクリストヴァン・フェレイラ神父が棄教したとの噂が届いた。尊敬していた師が棄教した事実を受け止めきれず、二人は日本に向かう決意をする。2人は中国・マカオで日本人の漁師にしてキリシタンのキチジローの手引きにより、日本のトモギ村に密入国する。二人が目にしたのは、隠れキリシタンたちが奉公の弾圧に苦しみながらも、信仰を捨てずに祈り続ける姿だった。
江戸時代のキリスト教を題材とした映画なので、堅い映画かと思って長らく敬遠していた。
が、思っていた以上にエンタメ性が高くて楽しめた。
悪役の長崎奉行に扮する井上様が気持ち良いくらいに悪に振り切る。
そのため、分かりやすい勧善懲悪のストーリー。
井上様に扮するイッセー尾形の好演が、本作の面白さに多大な貢献をしている。
ただし、ハードな嗜虐描写がかなり多い。
苦手な人は敬遠するほうが無難である。
胸糞指数はかなり高い。
日本人なら誰もが何気なく学校で習う、踏み絵をはじめとするキリスト教徒弾圧の歴史。
こんなに惨たらしい実態が存在するとは思わなくて、びっくりさせられた。
特に印象的で、考えさせられた要素はテーマにもなる『信仰心』である。
つまり、信じるという気持ちについて。
井上様ご一行に見つかったキリシタンは即座に捕縛。
キリストが描かれた絵を踏めなかったら、処刑へと移る。
キリシタンたちは様々な苦痛を与えらて命を奪われていく。
明日は我が身である酷い状況を目の当たりにしながらも、残されたキリシタンは、簡単にキリストの絵を踏もうとしない。
なぜなのか?
劇中ではそこまでは描かれない。
ただ、何となくは検討がつく。
恐らくキリシタンたちは辛いとき、神の存在を信じることで何とか乗り越えた過去があったからではないだろうか。
信じる者がいるだけで救われる。
たとえ、罪を犯しても真摯に懺悔をすれば赦されるのだ。
懐の深い神やキリストという存在のおかげで、今の自分がある。
だから、簡単にキリシタンたちはキリストの絵を踏めなかった。キリストの像に唾を吐けなかった。
主人公の宣教師らを日本に導く、キチジローの存在もよかった。
窪塚が演じてるキチジローは、猿のように飄々としたキャラクター。
キリシタンだが、捕らえられても、いとも簡単に踏み絵を踏む。
もはや躊躇いがないから笑える。
キチジローは弱い人間なのだ。
簡単に裏切るのに、翌日にはすぐに主人公の元に懺悔にくるから、うんざりさせられる。
「お前、どっか行け」ってな感じで足蹴にされる始末。
だが、このキャラクターが実に良い。
弱い人間は、常に救いを求める。
常に自分を救ってくれる誰かを必要としているのだから。
私はマーティン・スコセッシの映画をいろいろ見てきたが、本作が一番好みである。
宗教を題材とした作品はコチラ。
■ホテル・ムンバイ
沈黙-サイレンス-の作品情報
■監督:マーティン・スコセッシ
■出演者:アンドリュー・ガーフィールド アダム・ドライヴァー 浅野忠信 窪塚洋介 イッセー尾形 塚本晋也
■Wikipedia:沈黙-サイレンス-
■映画批評サイト「rotten tomatoes」によるスコア
TOMATOMETER(批評家):83%
AUDIENCE SCORE(観客):69%
沈黙-サイレンス-を見れる配信サイト
U-NEXT:○(見放題)
Hulu:-
Amazonプライムビデオ:○(字幕・見放題)
TSUTAYA TV:○(有料)
Netflix:○(見放題)
※2020年7月現在