■評価:★★★☆☆3.5
「自分と向き合う」

【映画】ウォールフラワーのレビュー、批評、評価
青春時代は、意に反して残酷なまでに傷つく経験をする時期。
失恋だとか、友情の崩壊など。
親が用意したぬるま湯に浸かる子供たちは、未体験の心の痛みに崩れ落ちる。
だが、人生において絶望は必要だ。
人は絶望を経て、成長に至る。
だから決して、絶望を、悲観的に捉える必要はない。
青春映画を観ると、良くそう感じさせてくれる。
本作はスティーブン・チョボスキー著『ウォールフラワー』を原作とする青春映画。
16歳の男子高校生のチャーリーは小説家志望。内気で友達のいないチャーリーは、高校の入学初日にスクールカーストの最下層に位置付けられ、息をひそめてやり過ごす毎日を過ごしていた。ところが、周囲の学生とは関係のない特等席で輝く、陽気なチャーリーと美しく奔放なサム兄妹との出会いで、一変する。初めて知る愛や友情を経験し、無限に広がる世界を感じていた。だが、チャーリーがひた隠しにする過去の事件がきっかけで、事態は思わぬ方向へシフトする。
原作が小説ということだけあって、それぞれのキャラクターの内面が丁寧に描かれてよかった。
特に主人公のチャーリーとヒロインのサムの距離の縮まる瞬間はドキドキである。
チャーリーは非常にウブな少年。
サムの前でのもじもじする緊張感が、観客にも伝わってくる。
好きな子に近づくって怖い。
「気持ち悪いと思われるかもしれない」「嫌われるかもしれない」
様々な負の感情の奔流に屈しそうになる。
このようなチャーリーの繊細さが生々しくて良かった。
恥ずかしくて観ていられない気持ちが湧きつつ、おっさんの私からしたら、新鮮な感情体験ができた。
あと、チャーリーが抱える葛藤にはびっくりさせられた。
「また幻覚を見たのか」と、チャーリーは家族に心配されるシーンが随所に挿入される。
チャーリーは、初めて参加したパーティでクスリをやってサム兄妹と打ち解けた経緯がある。
てっきりクスリを咎められているシーンなのかと思った。
だが、そうではない。
チャーリーが奥手になったのには、とある理由が隠されているのだ。
想定外の事実が明かされてかなり驚いた。
つまり、本作はチャーリーの受容の物語となる。
チャーリーがサム兄妹との出会いを通じ、自身と立ち向かい、呑み込めるのか。
ヒロインに扮したエマ・ワトソンも良かった。
顔つきはどちらかというとキリっとして男前だし、肩幅もあって、ガーリー感が薄め。
だが、時には頼りがいのあるお姉さん(チャーリーより3歳年上)。
時には弱気な少女の顔を見せる。
さまざまな面を持つサムというキャラクターは非常に魅力的だった。
なぜ、チャーリーが惚れるのかは納得である。
難しい役をエマ・ワトソンが演じ切る。
あと、すごく地味なのだが、サムにはボーイフレンドがいるために近寄りがたい存在になっている距離感がよかった。
恋愛映画は、距離が縮まらない理由こそ、その映画の個性となる。
先生と生徒の禁断の愛を描く『センセイ君主』。
あるいは、『タイタニック』では貧乏画家と富裕層の娘という、身分の差の恋を描いていた。
本作は、サムにボーイフレンドがいるため、距離がなかなか縮まらない。
これは生々しい。
多くの人が経験しているシチュエーションだし、チャーリーの思いの行き場のなさには感情移入できた。
派手なエピソードや展開のある映画ではないが、丁寧にキャラクターの心を描いた素晴らしい青春映画だった。
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ウォールフラワーの作品情報
■監督:スティーブン・チョボスキー
■出演者:ローガン・ラーマン エマ・ワトソン エズラ・ミラー
■Wikipedia:ウォールフラワー
■映画批評サイト「rotten tomatoes」によるスコア
TOMATOMETER(批評家):86%
AUDIENCE SCORE(観客):89%
ウォールフラワーを見れる配信サイト
U-NEXT:○(見放題)
Hulu:-
Amazonプライムビデオ:○(字幕・見放題)
TSUTAYA TV:○(見放題)
Netflix:○(見放題)
※2020年8月現在