■評価:★★★☆☆3.5
「イデオロギー」

【映画】スウィング・キッズのレビュー、批評、評価
映画、漫画、小説問わず、物語好きなら、誰もが「あのキャラクターにまた会いたい」と思って、繰り返し観る作品を持つ。
私もキャラクターの魅力にやられて、思わずBlu-rayを買ってしまった『サニー 永遠の仲間たち』という作品がある。
幸せな家庭を築く女性が、母のお見舞い病院に向かうとたまたま昔の仲間と再会する。
高校時代の仲良しグループ「サニー」を回想で描く青春映画。
内容は実にシンプルだが、あまりにキャラクターが立っていて、彼女らが愛しくてたまらないのである。
かつての同じ時間を仲間と共に過ごした儚さ。
『サニー 永遠の仲間たち』のカン・ヒョンチョル監督の最新作である『スウィング・キッズ』にも、サニーに通ずる儚さがあった。
1951年、朝鮮戦争下。韓国最大規模の捕虜収容所・巨済捕虜収容所に新しく赴任した所長は、収容所の対外的なイメージアップのため、戦争捕虜たちによるダンスチーム結成プロジェクトを計画する。北朝鮮兵士(アカ)のロ・ギスは収容所で一番のトラブルメイカー。だが、かつてブロードウェイのタップダンサーだった米軍下士官のジャクソンのタップダンスに魅了され、参加を決意する。4か国語が話せる無認可の通訳士ヤン・パンネ、生き別れた妻を捜すカン・ビョンサム、ダンスの才能を持ちながら1分以上踊れない栄養失調の中国人兵士シャオパンも加わる。年齢・国籍・イデオロギー・ダンスの能力までバラバラなタップダンスチーム「スウィング・キッズ」が誕生し、デビュー公演が目前に迫る。
何とも言えない鑑賞後感。
観終わった後は、尾を引いてしばらく何もしたくなかった。
主人公のロ・ギスが非常に魅力的。
純粋だが、どこか危なっかしい猪突猛進さが顔からにじみ出ている。
坊主なのにイケメンだし、威風堂々とした態度から繰り出されるダンスも素晴らしい。
THE 主人公っていう風でかなり魅力的なキャラクター。
本作は、主人公選びの時点で勝利している。
ロ・ギスに扮するDIOを良く見つけてきたものである。
ヒロイン役の女の子も良かった。
恋愛映画ではないので二人の仲は深くは描かれないが、印象に残るキャラクター。
小柄だけど、メンタルがず太く、逞しい。
チームがバラバラになりそうなときは、誰よりも率先して線を繋ぐ役割を果たす。
とびぬける美人ではないが、安心感を与えてくれる。
影でみんなを支える裏リーダーといった雰囲気に、母性を感じる。
本作は朝鮮戦争での捕虜を描く。
朝鮮戦争といえば、冷戦下における代理戦争である。
アメリカ率いる資本主義VSソ連率いる社会主義の対立構造。
巨済捕虜収容所は実に複雑。
韓国にある島の巨済捕虜収容所に、敵である共産党の中国・北朝鮮連中が捉えられており、管理をしているのは連合軍のアメリカ。
いろんな人種・イデオロギーが混じりあっており、ダンスチームも中国人、韓国人、北朝鮮人、アメリカ黒人で結成されている。
タップはあまり興味がなかったが、多国籍チームというスパイスが効いているので、見事なチームワークを見せてくると感動を覚える。
最後のデビュー公演は迫力抜群で、最高のステージを披露してくれた。
音楽を題材としているだけあって、非常に素晴らしい。
でもやっぱり戦争映画。
多くの人種やイデオロギーが混じる収容所はトラブルが尽きない。
韓国側(資本主義側)に寝返る者もいれば、アカ(共産主義)として徹底的に対抗意識を持つ者らもいる。
覚悟して観るといい。
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■芳華-Youth-
スウィング・キッズの作品情報
■監督: カン・ヒョンチョル
■出演者:D.O.(EXO) ジャレッド・グライムス パク・ヘス オ・ジョンセ キム・ミノ
■Wikipedia:スウィング・キッズ
■映画批評サイト「rotten tomatoes」によるスコア
TOMATOMETER(批評家):63%
AUDIENCE SCORE(観客):97%
スウィング・キッズを見れる配信サイト
U-NEXT:○(有料)
Hulu:-
Amazonプライムビデオ:○(字幕・有料)
TSUTAYA TV:○(有料)
Netflix:-
※2020年8月現在