■評価:★★★☆☆3.5
「権力に抗う」

【映画】スキャンダルのレビュー、批評、評価
アメリカのニュース局、FOXニュース創立者で元CEOのロジャー・エイルズが、同局の元キャスターに告発された実在の事件をベースとした物語。
この事件を葬ってはならないと決意した『マネー・ショート 華麗なる大逆転』のアカデミー賞受賞脚本家がシナリオを書き、ロジャー・エイルズ死後、映画の製作が初期段階にあると発表される。
2019年公開映画を対象とする第92回アカデミー賞の作品賞等にノミネートされ、米国に帰化した元日本人のカズ・ヒロがメイクアップ賞を受賞した。
余談だが、この年の作品賞受賞は韓国映画の『パラサイト 半地下の家族』。
2016年、アメリカ・ニュース放送局で視聴率NO.1を誇る「FOXニュース」に激震が走った。クビを言い渡されたベテラン・キャスターのグレッチェン・カールソンが、TV業界の帝王として君臨するCEOのロジャー・エイルズを告発した。騒然とする局内で、看板番組を背負う売れっ子キャスターのメーガン・ケリーは自身の成功の過程を振り返り、酷く狼狽していた。一方で、メインキャスターの座を狙う若手のケイラは、ロジャーに直談判の機会を得ていた。
かなり興味深い映画だった。
エンタメではあるが、分かりやすく勧善懲悪としては描いてはいないのが印象的。
敵であるロジャー・エイルズは、劇中では偉そうに現場で命令をしたり、セクハラをしたりとやりたい放題。
腹の出た醜い体形も相まって、観客の印象としてはステレオタイプのヒールの様相を呈する。
次第に、FOXニュースにクビを宣告されたグレッチェン・カールソンがロジャーを告発し、FOX内は騒然とする。
だが、職員のみんなはロジャーを守るためのポジションを取るのだ。
そりゃそうだ。
正義感を持って盾突たら、次にクビ対象者は自分である。
それに、もしFOXをクビになったら、TV業界の帝王であるロジャーの根回しによって、ほかの局でも就職が難しくなる。
職員がロジャーに付くのは必然である。
だが、売れっ子キャスターのシャーリーズ・セロン扮する売れっ子キャスターのメーガンは迷うのだ。
局ですれ違う職員たちは現場の空気に流され、ロジャー擁護を促す。
それでも頑なに、メーガンは沈黙を守り続ける。
メーガンも10年前に、ロジャーからセクハラをされた過去を持つ。
だが、ここが面白い。
メーガンはロジャーに感謝の念も抱いているのだ。
セクハラを断りながらも自身の出世のポストを用意してくれたり、何よりFOXニュースの繁栄はロジャーの能力である。
まさかロジャーの善としての側面を描かれるとは思わなかったので、びっくりさせられた。
善悪を兼ね備えたロジャーに、果たしてメーガンはどんな決断を見せるのか。
本作の一番面白い箇所がここである。
だが、残念ながら、この最も本作で重要である「メーガンの決断」の動機がいまいち不明瞭だった。
なぜその決断に至ったのか、いまいちピンと来ない。
私がもっとも楽しみにしていた箇所なので、残念だった。
私にとっての、本作で一番のマイナス・ポイントとなった。
だが、それ以外は良かった。
最後はエンタメとして、観ていて気持ちの良い結末を迎える。
お仕事ムービー的側面もあり、意外と楽しかった。
アメリカのTV局の裏側を覗いているよう。
日本とは違い、直情的なアメリカ人らしい、ぶつかり合いが大変そう。
相当な野心を持って大胆に行動しないと、アメリカのTV業界は即、リタイアを選択するだろう。
そう思うくらい過酷な世界だった。
本作はそんなに難しい内容ではない。
だが、濃度の濃い会話が、早いスピードで展開されるので、たっぷり睡眠を取れた日に鑑賞に挑んだほうがいい。
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■フリーソロ
■泣き虫しょったんの奇跡
■レッド・スパロー
スキャンダルの作品情報
■監督:ジェイ・ローチ
■出演者:シャーリーズ・セロン ニコール・キッドマン マーゴット・ロビー
■Wikipedia:スキャンダル
■映画批評サイト「rotten tomatoes」によるスコア
TOMATOMETER(批評家):69%
AUDIENCE SCORE(観客):84%
スキャンダルを見れる配信サイト
U-NEXT:-
Hulu:-
Amazonプライムビデオ:○(吹替・有料)、○(字幕・有料)
TSUTAYA TV:○(有料)
Netflix:-
※2020年9月現在