■評価:★★☆☆☆2.5
「若かりし堕落した日々」

【映画】KIDS/キッズのレビュー、批評、評価
ラリー・クラーク監督の初期作。
ラリー・クラークといったら若者を題材としたハードな青春映画を描く印象が強い。
『ケン パーク』は世界中で上映禁止となった作品で、若者3人の生々しく退廃的な日常を描く。
あるいは、いじめられっ子が命を奪われた実際の事件を題材とした『BULLY ブリー』。
ラリー・クラークはもともと写真家。
当時のアメリカの闇をストレートに映し出した写真集『タルサ』は大きな反響があった。
マーティン・スコセッシ監督の『タクシードライバー』、ガス・ヴァン・サント監督の『ドラッグストア・カウボーイ』に影響を与えたと言われている。
『KIDS/キッズ』はずっと鑑賞したかったのだが、DVDが廃盤となっていて、なかなか鑑賞が難しい状況にあった。
最近になってBlu-rayとして復刻されたので、ようやく鑑賞に至った。
処女と性交することが生きがいのテリーと頭のイカれた相棒のキャスパー。テリーとの性交で処女を奪われ、HIVに感染した少女ジェニーの3人を中心に、ストリートキッズの堕落した一日をドキュメンタリー風に描く。
90年代のNYの陽キャのキッズは、持て余したヒマのつぶし方が破天荒である。
集団で酒を飲んで性交をしたり、クスリをやったり。
街に出ては些細なきっかけで、その辺の若者と喧嘩になって、集団でリンチ。
文字通り、やりたい放題である。
こんな感じで、本作はただ若者の本能のままの行動を淡々と映した内容となっている。
彼らのように学生時代に、持て余したヒマを退廃的につぶす経験を持つ人も多いのではないだろうか?
私も高校・専門学生時代はとにかく金もなく、ヒマだった。
そのため死ぬほどゲームをやりまくった。
何度もクリアしたドラクエやFFを意味もなくプレイし続けるのだ。
金がないから、バラエティ番組を録画しまくって、片っ端から見たり。
100円で買える漫画を無意味に大量に買い漁って集めたりみたり。
友達と集まってもやることがなくて、歌い飽きているにも関わらずカラオケにも通いつめた。
私の場合、KIDSの彼らと違って田舎町なので、また少しヒマつぶしの手段が変わると思う。
あと私は陰キャで女性との縁もなかったので、いつもつるむのは男ばっかり。
本当に若気の至りで無駄な時間を費やしたと悔やむばかりである。
本作を見ると小学生くらいに戻って、人生をやり直したい衝動に駆られた。
『KIDS/キッズ』の彼らは生産性のない遊びの果てに、HIVというリスクが孕むのだ。
惨い映画である。
この映画が公開された90年代はHIVが流行っていたため、警鐘の念も込めているのだろう。
日本でも当時、『神様もう少しだけ』という女子高生がHIVに感染する深田恭子主演のドラマも制作されていた。
本作は確かにテーマは深刻。
だが、この映画を観て、若者たちは改心したりはしないだろう。
問題は退廃的に過ごすこと自体が無価値に思える劇薬的なナニカが必要。
ポジティブで、生産性のある豊かな人生を送れるナニカだ。
そういったナニカに夢中になって初めて、人生が楽しくなる。
あと本作は映画としては起承転結が弱いのでそんなに楽しめない。
脚本を書いたハーモニー・コリンは当時19歳なので、脚本のロジックも何もなかったのだろう。
ただただ、日常をダラダラを描いている凡庸な映画なのでで、オススメしない。
熱い気持ちになれる青春作品はコチラ。
■小さな恋のうた
■シング・ストリート 未来へのうた
KIDS/キッズの作品情報
■監督:ラリー・クラーク
■出演者:クロエ・セヴィニー レオ・フィッツパトリック ジャスティン・ピアース ロザリオ・ドーソン ジョン・アブラハムズ
■Wikipedia:KIDS/キッズ
■映画批評サイト「rotten tomatoes」によるスコア
TOMATOMETER(批評家):46%
AUDIENCE SCORE(観客):77%
KIDS/キッズを見れる配信サイト
U-NEXT:-
Hulu:-
Amazonプライムビデオ:○(Blu-ray)
TSUTAYA TV:-
Netflix:-
※2020年9月現在