映画の海

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ドキュメンタリー

映画『A』ネタバレなしの感想。オウム真理教に対する社会の態度をオウム視点から映す

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■評価:★★★★☆4

「オウム真理教と社会の関わり」

【映画】Aのレビュー、批評、評価

『FAKE』『i-新聞記者ドキュメント-』の森達也監督による、オウム真理教を扱ったドキュメンタリーである。
被写体は主に、当時オウム真理教の広報副部長であった荒木浩。

森達也はTVディレクター時代に、地下鉄サリン事件を起こしたオウムを絶対的悪として描くよう強要するプロデューサーされ、衝突した。
契約解除され、以後自主製作として本作を完成させた経緯がある。

地下鉄サリン事件以降、オウム真理教に対する社会の態度をオウム視点から映し出す。オウム信者の修行や生活の様子、広報副部長である荒木にマイクやカメラを向ける報道関係者の姿や、オウム信者を強引に逮捕する警察官などが撮影されている。

オウムの視点という発想が面白い。

私自身、オウムは絶対悪のイメージが強い。
どんな悪事でも、教祖がタクトを振れば従う極悪非道の集団。

だが、この映画を観ると、オウム信者らの人間としての側面が垣間見られる。
例えば、豚の加工する仕事をしていた信者。
彼は豚の命を奪うことに抵抗を感じていた。
でも生きるためには仕方ないと仕事に準じていた。

オウムは、基本的に殺生を禁じている。
そのため、オウム信者になると肉を一切食べない特別なメニューを食べさせられる。
彼はもくもくと、そのメニューを口にするのだ。
自分が真人間になるための手段として、彼はオウムに入信した。

他にも地下鉄サリンの実行グループではない、本作の視点人物である広報の荒木。
荒木はメディアの窓口として、TVや新聞の取材を受ける。
荒木も状況を完璧に把握していないのに、ぐいぐいと執拗に取材を迫られる苦しそうな姿には感情移入してしまう。

だが本作が面白いのは、観客が感情移入しそうになると突き放すのだ。
例えば、メディアに振り回されたシーンが流れた後、荒木が真剣にオウム流のお祈りをするシーンに切り替わる。
結局は、荒木も信者なんだなと。
思わず私は冷静になり、感情移入が解かれた。

森達也監督は、あくまで中立として、オウム信者の人間としての側面とオウム信者としての側面の両面を描いている。
だが、まあ、お祈りシーンや世間からはズレた思想を熱心に口にする信者を見ると、信者ではない観客からしたら、感情移入の阻害のように見えるのだ。
森達也は本当に抜け目ないドキュメンタリー作家である。
個人的には面白くて好きだが。

あと本作で印象的だったのが上記のビーガン的な動物性の素材を排した食事シーン。
茶色い土みたいな豆ハンバーグや、謎の汁に使ったゆで卵など。
見た目がひどく、マズそうなのだ。

オウム信者では、3大欲をいつか断てる日が来ると信じて、必死に我慢している。
その領域に達して、ようやく解脱が叶うのである。

苦しみに耐えるのが修行といった感じで、真剣に取り組んでいる姿は心底、馬鹿らしく見える。
でも彼らは本気である。
いったい、信者をここまでの行動に走らせる麻原彰晃はいったい何者なのか。
興味深い人物である。

あと、オウム信者以外の、オウム信者と接する一般人らのクソさも印象的だった。
例えば、オウムの近隣に住む住人たちが荒木に責め立てる言葉。
感情をぶつけてるだけの拙い言葉が聞くに堪えられない。
偉そうな言葉を並べ立てて、本当に自分はそんなに優れた人間なのか。

警察もそう。
個人情報を引き出そうと、オウム信者を転ばす。
すると、警官自身も痛がる姿を見せ、公務執行妨害でオウム信者を連行するシーンは胸糞である。
日本の闇を見た気がする。

あと本作はちゃんと荒木の変化を描いているのも好感が持てる。
ちゃんと映画として、起承転結の構成を用いている。
ドキュメンタリーとしては着眼点も面白く、レベルの高い内容。

森監督は着眼点は面白い。
例えば、『FAKE』は佐村河内守のゴーストライター問題を扱ったドキュメンタリー。

当時は実際に曲を作った新垣隆さんがメディアに登場することが多かった。
森監督が佐村河内守に密着し、どこまで嘘をついていたのか。真実は何か。を撮影したのが『FAKE』である。
本当に興味深く、見入った映画だった。

面白いドキュメンタリー映画のおすすめはコチラ。

■ゆきゆきて、神軍

■フリーソロ

■アンヴィル

【h4】Aの作品情報

■監督:森達也
■出演者:荒木浩
■Wikipedia:A

Aを見れる配信サイト

U-NEXT:○(見放題)
Hulu:-
Amazonプライムビデオ:○(見放題)
TSUTAYA TV:-
Netflix:-
※2020年9月現在

-ドキュメンタリー

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名前:柴田
年齢:30代
小説家志望。
趣味は映画、読書、ゲーム(最近はスプラトゥーン2)、お笑い、筋トレなど。
長所は人を楽しませることに一生懸命、短所は顔が丸い。